テニプリパロディ略してパロプリ劇場
―――スリップスリップ千石次第!―――
第7回―――4
「はーっはっはっは!! 我らを見るなりひれ伏しおって!!」
「どうだ見たか曲者ども!!」
「信長様にお仕えする我が秀吉軍!! そんじょそこらの者には負けん武者揃いじゃ!!」
誰の功績でだか無傷で圧勝し喜ぶ秀吉軍。その向こうでは―――
「大丈夫か、不二・跡部」
「手塚!!」
「手塚じゃねえか。どうしたよお前?」
「どうしたも何も。
川原沿いで騒ぎが起こっているという話を聞いてな。確認に行こうと思ったら妙な煙が上がって、それで他の者を引き連れてきたんだ」
「・・・おめでとな佐伯。本当に、何もかもてめぇの功績だ」
「何か言ったか?」
「ありがとよ手塚」
「いや大分短くなったようだが・・・。
それはともかく、お前たちは一体何をやっている?」
問われ、
「そうだ手塚!! 秀吉様いるか!? 羽柴秀吉様!!」
「・・・いらっしゃるに決まっているだろう? 戦に大将がいなくてどうする?」
「いややっぱそこは影武者とか使うモンじゃねえのか?」
「それは負けそうな場合だ。今勝っている・・・!」
「そーかそーかそりゃめでてえな。
んで、その秀吉様に会いてえんだがよ。大至急だ。めちゃくちゃ大至急。いっそ会わなくていい位大至急だ」
「・・・・・・。
跡部、久方ぶりに会ったと思えば壊れたか?」
「違げえ!! だからさっさと通しやがれっつってんだよ!!」
「それならそう先に言わんか・・・。
―――済まない! 誰かこの者を秀吉様の元へお連れしてくれないか? 光秀様からの使いだ!!」
「光秀様の? そうかわざわざ遠いところからご苦労だな。ではこちらへ」
「ああ。悪りい」
「いやいや」
兵の1人に連れて行かれ城へ向かう跡部。その後ろでは、こんな騒ぎが起こっていた。
・ ・ ・ ・ ・
「ああ!? そちらの方は良妻・千代殿では!?」
「あ、は、はい・・・・・・」
「何!? 千代様!?」
「見てえ見てえ!!」
「どれだ!? あああの女子[おなご]か!!
さすが心美しき千代様!! お姿も麗しゅう・・・・・・」
「千代様、こんな私めですがぜひ何卒―――」
「何を自己推薦している!? これは俺の妻だ!!」
「いーじゃねーか夫婦ならいつも一緒なんだろ!? 今ここで位は他のヤツに譲ってもよお!!」
「良いワケがなかろう!?」
「つーかわざわざ旦那見に近江からここまでだと!? あーもー見せ付けんじゃねーよ万歳千代様!!」
「え・・・、えっと・・・・・・。
ありがとうございます・・・・・・//」
『か〜わ〜い〜い〜〜〜〜〜〜vvvvvvvvvvv』
「散れ貴様ら!! 城周り10周!!」
400年前からお得意だったらしい言葉で、手塚がしっしと追い払う。
照れ笑いを浮かべる不二の前に回り、少しだけ腰を落とした。
「それで? 不二。
お前は何をしに来た?」
「あ、あのね・・・。跡部が何かいろいろ大変そうだから、少しでも手伝えないかなって」
謀反の阻止を『何かいろいろ大変そう』の一言で片付ける不二。もちろん、おかげでそれがどれだけ重要な事なのか、手塚には全く伝わらなかった。
眉間の皺を寄せ、
「だが、そのせいでこんな所まで。しかも追われていたではないか。
全く。不二はか弱い女性なのだぞ? それを連れ回すなど、跡部のヤツは一体何を考えている・・・」
「あ、で、でも・・・」
「お前もだ不二。今回はどうやら何事もなかったようだが、次はどうなるかわからんのだぞ?」
「・・・・・・・・・・・・。ごめんなさい」
怒る瞳の奥にある安堵感。本当に心配しているからこその怒りに、不二は反論せずに謝った。深く頭を下げる。
「む・・・・・・。
・・・・・・まあ今回はいい。次回からは気をつけろ、不二」
「はい・・・・・・」
さすがに言い過ぎたと思ったか手塚が気まずげに締めくくる。あるいは、周りの男たちから向けられる強烈な殺気のせいかもしれない。
不二が乗ってきた馬を連れ背を向ける手塚に、
不二はぽすりと抱きついた。
「不二・・・・・・」
「ごめんなさい。
でもね手塚。僕、今日ここまで来たのは、絶対意味がない事じゃなかったんだ。
跡部と一緒にいろんなところを回ってきた。そこで、いっぱい嫌な事があった。友達だから絶対裏切らないって言ってた人が裏切っちゃったり、自分は他の人たちの事も考えなきゃいけないからって友達捨てちゃったり。
見てて凄く悲しかった。何より悲しそうなのは跡部だった。友達なのに、友達だから。助けるために敵対しなきゃいけないんだ。それが本当に正しいのか、ずっと悩んでた。
それで、僕も考えたんだ。もし僕達だったらどうだろうって。手塚がもし何かやったら、僕は見捨てるのかな? 止めようとするのかな? それとも、ついていくのかな?」
「それ・・・で?」
抱き締めた背中が小さく揺れている。
みんな怖いんだ。独りきりになるのが。
だからみんな欲しいんだ。決してこの手を放さないでいてくれる存在が。ずっと、そばにいてくれる仲間が。
不二は微笑み、力を抜いた。手塚の向きを変える。
正面に向き直り、
改めて抱き締めた。
「僕は、ずっと君についていくよ。だって君の妻だもん」
「不二・・・・・・」
「それに、今のでわかったんだ。
もしそのせいで僕が危なくなっちゃったりしても、
―――ちゃんと助けてくれるんだろう? ねえ手塚」
「・・・・・・・・・・・・」
手塚がため息をついた。
くしゃくしゃと不二の頭を撫で、
「どうやら・・・、少し会わない内に随分強くなったようだな、不二」
「もちろん。
だって、最高の夫には最高の妻じゃないと相応しくないもんね?
もうただ君の帰り待ってるだけの女じゃないよ? 君だって頑張ってるんだ。僕だって一緒に戦うよ。
それで一緒に、一国一城の主になろうね?
――――――大好きだよ、手塚」
「ああ、俺もだ不二。俺の、唯一最高の妻。
共に戦おう」
「うん!」
・ ・ ・ ・ ・
そして、ついに秀吉の元までやってきた。
下げていた頭を上げ―――
「てめぇ――――――!!」
―――跡部は、出てきた『秀吉様』を前に驚きの声を上げた。
―――第7回 5
2006.1.20