プチ小説19 六角編2



 さて、さらに数日が経ち。
 今度『人間』に遭遇したのは樹・首藤・天根・葵の4人だった。
 「人間、なのね?」
 「ウソだろ・・・・・・?」
 「しかも何か僕たちって、敵意向けられてる?」
 「敵意一滴適した撤退」
 『逃げろ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!』
 天根のわかりにくいギャグに乗せられるまま、
 4人は今まで来た道を全力で逆走した。





 「―――ん?」
 「バネ、どうした?」
 こちらは黒羽・亮、そして佐伯組。今日はこの2組に分かれ食糧調達をしていたのだが、
 「あ、もしかしてそろそろダビデに突っ込み入れたくなったとか?」
 「はは。禁断症状かよ」
 からかう2人に暫し俯き、
 「・・・・・・実は本気でやりたくなった」
 「マジ・・・・・・?」
 「ああ」
 「やばいってバネさん。それ重症だから」
 「んじゃそろそろ合流するか。したら思いっきり空中コンボでも決めて来いよ」
 「そうだな」
 というわけで、3人もまた今来た道を引き返していった。





 逃げている間、いささか冷静さを失っていたらしい。もしかしたら誘導されたのかもしれないが。
 気付けば、4人は崖へと追いつめられていた。
 「困ったのね・・・」
 「子待って困った」
 「どうする?」
 「反撃するっきゃないでしょ」
 と、他の選択肢0の状態で冷静さを取り戻したらしく、4人は追って来た人間たちと向かい合った。





 「お、いたいた」
 「お〜いみん―――!!」
 「待て!!」
 呼びかけようとした佐伯を遮り、黒羽が2人を引き寄せた。崖の影に隠れ、様子を窺う。
 この島の半分は崖により海と区切られているが、単純に崖といっても1枚で垂直に、というつくりではない。海に面した崖は2重になっており、途中の別れ道で上か下か選べるようになっている。4人は崖側に生息している魚や貝(余談だがかなりおいしい)を採ってくる―――筈だったのだが。
 「あいつらだけじゃねえな。何だ? あれ」
 中途半端に開けた場所―――イメージとしてはお屋敷の2階テラスか―――には4人の他に、葉っぱやなんかで体を包んだ獣が・・・・・・
 (二足歩行の獣? 猿か? それともまさか・・・人間か?)
 いる筈はない。この島は『無人島』の筈だ。もちろん実際の無人島ではなくそうプログラムされた架空の世界だが、だからこそ『実は違った』などという事は起こりえない。
 ―――暴走する、前なら。
 「設定が、変わったのか・・・?」
 同じ結論に辿り着いたらしい亮が、『予期せぬ事態』に上がりかけていた心拍数を押さえつつ呟いた。ここでパニックになってはいけない。そう告げるのは本能というより単純に見た事態を頭の中で整理したためだろう。どう見ても平穏な様子ではない。どちらかというとというよりそんな選択肢なしに言えるが、間違いなく争っている。
 「って落ち着いてる場合じゃねえだろ!?」
 仲間のピンチに逆に慌てる黒羽。それを押しとどめたのは―――先ほどから黙り込んでいた佐伯だった。
 「サエ!?」
 「待てってバネさん。向こうの人数が多い。しかも武器まであったら、俺達がただ加勢したところで全滅するかもしれない」
 「だったら見捨てろとか言うのかよ!」
 まるで切り捨てるかのような佐伯の発言に、かろうじて落ち着きを保っていた亮も口を挟む。が、
 2人の怒気を受け、それでも佐伯はにやりと笑うだけだった。
 「じゃないから。さすがに。
  ―――俺にいい案がある」



 そんな佐伯の『提案』で崖の上側へと移動する。
 「で? お前の言う『案』って?」
 問う2人に、佐伯が崖の端に腹ばいになってみせる。いつの間にか手には拳大の石を持ち、
 「狙撃」



 佐伯の案は実にいいものだった。こちらから相手は見やすくしかも攻撃しやすいが向こうからは見えにくくしかも攻撃しにくい。きっちり狙いを定める必要はない。『ヘタな鉄砲数撃ちゃ当たる』とはよく言ったものだ。適当にばら撒けばたとえ当たらずとも威嚇にはなる。
 が、問題点が2つ。1つ。崖の上とはいえそうそう草原に都合よく石は落ちていない。そして2つ―――
 手ごろな石がなくなったのでもう少し大きな石を落とし、それもなくなってきたので近くに生えている木から枝を切りそれも落とし、終いに木そのものを切り倒し落とした時点で気が付いた。
 「そういやこの攻撃って・・・・・・」
 「敵味方関係なく当たんねーか・・・・・・?」
 うわ〜〜〜〜!! という聞き覚えのある声での悲鳴、そしてざぶんざぶんと様々なものが海へと落ちていく音を聞き、ようやく我に返った黒羽と亮が恐る恐る下を見た。最初はちょっとこちら側にも飛んできた攻撃。今やすっかりなくなっていた。どころか下での争いそのものも。
 下を見る。そこには―――
 ―――海しかなかった。
 「あれ・・・? 崖、は・・・・・・?」
 「もしかして・・・・・・壊しちまった・・・・・・?」
 ならばその『崖』にいたみんなはどうなったんだろう・・・・・・?
 恐る恐る、ギギギギ・・・と音を立てつつ2人が横を見やる。2人に挟まれ、同じように下を見ていた計画立案者もまた顔を下から上げ、
 「てへv 失敗v」
 『馬鹿野郎〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!』
 この瞬間響いた声は、今日1日の中で最も悲壮感に満ちていたという。


Survivor――黒羽・佐伯・亮






 ―――ギャグ人間になってますサエ! こんな彼もいいなとかちょっぴり思ってしまったり! どうでもいいですが呼び方
&しゃべり方。バネ&亮は割と雑というかフランクに呼び捨て。サエはもうちょっとマシな感じでバネには『さん』付けてたり。結果として・・・・・・バネと亮の口調の違いがわからない・・・・・・。
 さ〜って1・2でサエがなんだ無理矢理漂白したような白さというか他の色全部落とした白さを発揮したところでいよいよ次は六角
Only編ラスト。このまま黒い上にタチの悪い白さで乗り越えるのかそれとも・・・・・・

2004.4.4