プチ小説8 ルドルフ編2



 さてこちらルドルフ陣営では、またも危機迫る状況が彼らを襲っていた。
 ヒュンヒュン―――!!
 カン!!
 ドスッ!
 「どーすんだよこの状況・・・」
 なんとか見つけた石垣に身を隠し赤澤が呟いた。全員隠れるには狭いが、だからと言ってそれに文句をつけて出て行くわけにも行かない。
 ―――なにせ外からボーガンの一斉攻撃を受けているのだから。
 「どうにもならないでしょ」
 「淳〜。もう少し希望的な事言って欲しいだーね・・・・・・」
 「そうですよ木更津さん。みんなで考えれば何かいい案が出てくるかもしれないじゃないですか」
 しれっと絶望的なことを言う木更津に柳沢と金田が縋りつく。
 「考えれば、ねえ・・・・・・。
  ―――ところでそういう事が一番得意そうな人がいないようだけど?」
 『え・・・・・・?』
 その不穏な台詞に、そしてそれが誰を意味しているのかわかり易過ぎる言葉に全員が眉を寄せ―――。
 「観月さん!!」
 唯一会話に参加していなかった裕太の叫び声が響く。石垣の影から外を見ていた彼に合わせ全員が外を見た。
 向こうから走りこんでくる観月。だがここは遮蔽物のない広場。この石垣までの約
50mの間、走る観月は格好の獲物となる。
 誰もがそう思った通りにボーガンの勢いはますます増し、
 そして―――
 「ぐ・・・・・!」
 くぐもった悲鳴とともに倒れる観月。走った勢いが殺せず前へ滑り―――動かなくなる。
 「観月!!」
 倒れたまま動かない観月に、危険も省みず石垣から赤澤が飛び出した!
 「赤澤部長!!」
  「「「金田(さん)!!!」」」
 さらに1歩遅れて石垣を飛び出す金田。その無謀な行為に柳沢・木更津・裕太も石垣から顔を出しかけ―――
 「うわっ!!」
 「―――っ」
 「危ないだーね!」
 ボーガンが顔を掠め、慌てて引っ込める。もう広場へ出てしまった2人を止める術はない。
 シュッ―――!!
 どすどすどす!!!
 『―――!!』
 何もできずに見守る3人の目の前で起こった惨事。新たに現れた標的に向け一斉に放たれたボーガンは、狙いを外す事無く2人の全身を貫いた。
 ドンドンドン!!
 同時に腹に響き渡る炸裂音。
 「え・・・?」
 四方八方から発せられたそれに、辺りを見回す裕太。その先では、2人を狙ってだろう、ボーガンを構えて至近距離まで近付いてきていた男達がいっせいに吹き飛ばされていた。
 「地雷・・・?」
 「なるほど、ね・・・・・・」
 「どういう事だーね、淳?」
 「見てればわかるよ。どうりで観月が遅れて来たわけだ」
 そう言い放ち、先程までの焦りはどこへやら、能面のようないつもの表情で通りを指差す木更津。その先では・・・・・・。
 「観、月・・・・・・」
 「―――ご苦労様です。赤澤・金田」
 『な・・・・・・!?』
 ボーガンに全身を射貫かれ、それでも近寄ろうとした2人の前で―――観月が何事もなかったかのように起き上がった。
 「観月! お前気を失ってたんじゃ・・・!」
 「ああ、そう思われていたんですか? 別に僕はなんともありませんが?」
 「観月さん!! それじゃあ―――!!」
 全身の痛みにか、それとも信じられない出来事にか目を見開く金田。
 そんな2人に観月はいつもの笑みを送った。
 「んふっ。ようやく気付いたようですね。よく見ていればわかったでしょうに。
  しかし―――いやあ、見事な囮っぷりでした。おかげで敵をひきつけられましたよ。
  ―――よかったでしょう? 貴方達のおかげで僕達は助かったんですから」
 「観月・・・・・・!!」
 「観月さん・・・・・・!!!」
 絶望の眼差しを最期に、2人は光となって消えていった・・・・・・、
 「赤澤さん!! 金田さん!!」
 「観月! お前騙しただーねか!?」
 仲間の死にただ叫ぶしかない裕太。観月の卑劣な罠に怒りを抑えきれない柳沢。そして・・・・・・
 「バカとハサミは使いよう。貴方がそう仰ったんじゃないですか、赤澤」
 「くすくす。やっぱりバカ澤だね。付き合わされる金田も可哀想に」
 2人の死に顔色1つ変える事無く―――どころか笑みすら浮かべて言う観月と木更津。
  「「・・・・・・・・・・・・」」
 そのあまりの開き直りっぷり―――というか地の凄さに何も言う言葉が見当たらなくなる。
 (柳沢さん・・・。俺もう付いていく自信ないんですけど、この人たちに・・・・・・)
 (いや裕太も充分いけるだーね・・・・・・)
 俯いて小声で呟く裕太の肩を叩き、柳沢は極めて適切な返事をしたのだった・・・・・・。


Survivor―――観月・柳沢・木更津・裕太






 ―――なにが怖いって、それを見て観月には何も言わない木更津でしょう。いつから私の中で彼こんなんになったのかしら・・・・・・。
 しかしこの話、後ろ[ラスト]から逆走する形で書いていったためかなりおかしなところが多々あるかと思われます。すみません・・・・・・。

2003.1.45