プチ小説9 山吹編2



 最初にあっさり死んだ亜久津。そして地味
'sと新渡米・喜多も目立たぬところでひっそりと消えていき、山吹陣は早くも残り3人となっていた。
 「―――そろそろ全滅っスかね?」
 絶望的なことを顔色一つ変えずに言う1人目、室町十次。
 「そんな! 室町先輩! 縁起でもない事言わないでくださいです!!」
 その発言に威勢良く食って掛かりながらもどこか不安げな2人目、壇太一。
 「そーだよ室町くん。この俺がいるんだからなんとかなるってv」
 そしてそんな雰囲気などどこ吹く風と爽やかに親指を立て根拠のないことをホザく3人目、千石清純。いや彼が言うと本気でそうなりそうな気もするが、それでは話が成り立たないため前2人の意見を推奨させてもらうとして・・・。
 ポチ。
 『あ・・・・・・』
 最早何度目になるかわからない喉の奥だけ響く声と共に、室町と太一、2人のいた場所が抜けた。
 「室町くん! 壇くん!」
 2人より数歩分前にいた千石が慌てて戻ってくる。
 「待っててくれ! 今俺が助けるからね!!」
 そう叫んで2人に両腕を伸ばした手が、間一髪、落ちかけていた2人の手首を掴んだ! が・・・
 「ぐ・・・!!」
 「無茶っスよ、千石さん!!」
 「そうですよ! このままじゃ千石先輩まで落ちちゃいますよ!!」
 まだ発達途中の中学生だからというのもあるが、千石はお世辞にもスポーツに向いた体格をしている訳ではない。いくら小柄ではあっても室町と太一の2人を支え、あまつさえ引っ張り上げるのは無謀である。
 全身から汗を噴出し、両腕が痙攣しているにも関わらず、千石は2人の警告を無視してにっこりと笑った、
 「大丈夫だって、言っただろ? 『なんとかなる』ってv」
 「千石さん・・・」
 「千石先輩・・・・・・」
 力強いとはいえないが、こんな状況ですら浮かべられたいつも通りの笑みに、2人は胸打たれたかのように千石をじっと見つめ、そして―――





 がっし





 「―――そうっスね。じゃあなんとかして下さい」
 「へ?」
 「助かりましたです。では千石先輩も頑張ってくださいです!」
 「え?」
 一言ずつはなむけの言葉を送ると、2人は掴んだ千石の手首を同時に引っ張った。
 たまらず体勢を崩す千石。反動で上に戻る室町と太一。
 ようやく千石が言葉の意味を理解した頃、彼の体は既に奈落の底に引き込まれようとしていた、
 「そんああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
 暗闇に溶け込んでいく千石の、最後に発したその声が余韻を残しつつも完全に消えた後、室町は立ち上がって服についた埃をパンパンと払った。
 「まあ千石さんの事だから本気で何とでもするだろうし」
 「そうですね! じゃあ僕たちも頑張って進みましょう!!」
 快活に薄情な(ある意味信頼の)台詞を残し、太一もまた室町の後に続いていった、
 2人が振り返ることすらしなかった穴は、再び生贄を求めてゆっくりと閉まっていった。


Survivor―――室町・太一?






 ―――さ〜てあっさり死んだぞ何人か(笑)。一瞬でも感動的シーンを期待された方すんまそん。所詮私の中で彼らの友情などこんなものです。そういや太一がナチュラルに黒いぞ。けどやはり私の中では以下略。むしろ今回爽やかな千石さんのほうが異質なような・・・・・・。そうそう、室町さんは木更津さんと同様感情なく他人を切り捨てていきます。その点ではむしろ一番黒いのはこの2人のような・・・・・・。逆に白い人は少ないなあ。しかも3ターン目で間違いなくほぼ全滅するだろうし・・・・・・。

2002.11.3〔『文化の日』にコレかよ・・・〕write2002.10.21