『嫌い』って言っていいから。もう終わりにしていいから・・・それでも逢いたいよ、周助・・・・・・。
Focus
Act3.限界
(周助・・・・・・)
騒ぎになってから数日。今日もまたリョーマは虚ろな目でテレビを見ながらこの名前を呼んでいた。不二の居場所がわからない。
(どこいるんだよ、周助・・・・・・)
持ちっぱなしだった携帯に目をやる。毎朝6時20分にかかって来るモーニングコールは騒ぎが起こった日を境に来なくなった。世界のどこにいても毎日メールが送れるようにと去年の誕生日に贈られたノート型パソコンにもまた。
こんな事は今までなかった。不二は呼べば絶対応えてくれた。いて欲しいと思う時、絶対『そば』にいてくれた。実際に隣にいてくれたこともあるし、離れてても声で、文章で、いつもいつでも・・・・・・。
≪現在依然として不二選手も越前リョーマ君もその居所が掴めません! おかげで2人の関係については真偽が判明せず、暴動は日に日に悪化する一方です!!≫
それを煽っているクセになんて身勝手な台詞だと怒ることもなく、ただ何も感じないまま画面を見続ける。自分達がどんなに叩かれても構わない。それでも―――もしかしたら不二を見つけてくれるかもしれない、乾いた心にそんな祈りだけを込めて・・・・・・。
「周助ぇ・・・・・・」
ζ ζ ζ ζ ζ
「―――って越前!」
話を終え結局有益な情報が得られないまま皆を帰した桃は、部屋に入るなり目の前の光景に思いっきり叫んでいた。
ずがずがとテレビとリョーマの間に割って入り、テレビ画面を切る。
「お前なあ! あれほどもうテレビは見るなって言っただろうが!! ちゃんと大人しく言うことを聞け!!」
小さく縮こまって毛布を頭から被り、体を掻き抱いて震えているのにそれでもテレビを切らない。自分で自分を傷付けるそんな矛盾した行為。だが何度注意してもそれを止めようとしないリョーマにため息をつく。と・・・・・・
見上げるリョーマの顔が歪んだ。
(え・・・・・・?)
膝をついて半端に座っていた桃から隠すように下を向き、歯をくいしばる。
「え、越前・・・・・・?」
それでも堪えきれないか、ついに両手で何度も顔を拭い始めた。
「周・・・助ぇ・・・・・・」
ひく、えぐとしゃっくりの合間に洩らす舌足らずの声。ぼろぼろと流される大粒の涙。
「周助ぇ・・・どこ、いんだよぉ・・・・・・・・・」
本当は今までずっと我慢していたのだろう。真っ赤に腫れた目をぎゅっと閉じて、嗚咽を洩らし続ける。
「越前!」
そんなリョーマを見ていられなくて、桃は自分の胸にリョーマを抱き込んだ。
「大丈夫だから! 絶対不二先輩は見つかるから! な?」
上手い言葉が何も見つからず、ただ少しでも安心させようと何度も何度も背中をさする。きっと不二ならそうしていたであろうと思い。
それに安心したか、リョーマのしゃっくりが徐々に収まっていき―――
「逢いたいよぉ・・・周助ぇ・・・・・・」
そんな言葉を残して眠りにつくリョーマに、とりあえず一息ついた。ここ数日のリョーマの衰弱振りは目に言えて明らかだった。睡眠も食事もロクに取らない苦しい状態でずっと戦い続けていたのだ。彼の小さな体にはどれだけのプレッシャーがのしかかっていた事か。
今だけでいいから休んでほしい。たとえ外でどんなに攻撃されとうと『ここ』はリョーマにとって居心地のいい場所であってほしい。
絶対に離すまいと、力の抜けたリョーマの体を抱き寄せる腕に力を込め、桃は周りに聞こえるほどの音を立て歯軋りした。
(何やってるんですか不二先輩・・・! 越前泣いてるんスよ・・・!?)
ζ ζ ζ ζ ζ ζ ζ ζ ζ ζ
うわ〜2に比べて短いなあ。そして4はまた長くなりそうだ。
さて完全に消息を絶った不二にもう限界のリョーマ。2人がまた逢える日は来るのか(当り前)!?
4からはいよいよ挽回編。確かにこれは2人の問題だけど、それでもみんな応援してるんだよ―――そんな話になる・・・・・・と、いいなあ・・・・・・(かなり弱気)。
2003.1.12