知らなかった。自分がこんなに他の人に想われていた事・・・・・・。






Focus


Act4.仲間




〜青学元レギュラーらの場合〜

 はあ・・・・・・。
 放課後の青学テニスコートに手塚のため息が広がった―――いや、本人の耳にすら届くことなく消え去った。
 すぐ隣にいたせいで、というより同じタイミングでため息をついたせいだろう、それに気がついた大石が苦笑した。
 「グラウンドでも走らせるつもりかい?」
 「恐らくそうしたところで無駄だろう」
 「だろうね・・・・・・」
 周りに押し寄せる記者・野次馬・そして生徒。それらが醸し出す雰囲気のおかげで部員たちは全く集中できていなかった。ギャラリーが多いこと自体は慣れている。だが普段は応援などされているのに対し、今回は露骨にひそひそと耳打ちしたり、何とかインタビューしようとマイクを構えてコートから出てくるのを待っていたりとかなり険悪な様子だ。
 テニス部員たちは不二とリョーマの付き合いに関しては既に知っていた。英二の口によってはっきり語られたし、その後何度も部を訪れる不二のそれこそ露骨過ぎる態度から気がつくと当たり前のこととして受け止めていた。が、今回は逆にそれが仇となった。朝礼でわざわざ校長直々に言われるまでもなく、朝連で手塚を中心とした元レギュラーらに口止めされていた。だが残念ながら部員全員が不二や英二などのような自分の考えを決して人に悟らせない、曰く『曲者』ではない。秘密を持つもの特有のあからさまに怪しい態度に、テニス部員は全員が完全マークされるようになってしまった。
 妙なところからの情報の流出は避けたい―――その意味も含め、騒ぎが起こってからは元レギュラーらはできる限り部活に参加するようにしていた。現にこの場にも英二を除いて全員がそろっている。
 その中で―――
 「―――相変わらず不二には不利な展開だね。珍しく」
 「ああ・・・・・・」
 横からかかった乾の言葉に手塚含め全員が頷く。
 「本当に珍しいですよね・・・・・・」
 さらに裕太が相槌を打った。彼は青学のテニス部員ではないため完全に部外者なのだが、元レギュラーらとも仲が良く、また不二に関係する事ということで中に入れてもらっていたりする―――外にいるとそれこそマスコミらの餌食になりかねないという理由も大きかったが。
 「姉貴も言ってたんですけど・・・今回はいつもと違うな・・・って」
 「確かにね。不二なら普通ここまで騒ぎを大きくはしない。特に今回のことは時間が経てば経つほど憶測が一人歩きする分不利になる。それがわからないわけはないだろう。不二はこの手のスキャンダルは慣れているはずだ。その割に今回は対応の仕方が普段と明らかに違う」
 実のところ不二の熱愛報道はこれが初めてではなかった。だが今までは特に何もせず、訊かれれば即座に笑って否定するのがパターンだった。そのあまりの普通さに報道はあっさり消滅していたのだが、今回はそれをしない。しかも大会前だというのに騒ぎが始まったとたん雲隠れをする。これでは肯定したも同じだ―――と騒ぎは大きくなる一方なのだが・・・。
 (いつもとは違う・・・・・・今回は『真実[ホントウ]』だからか・・・?)
 暗くなり一同の中で、手塚は顎に手を当て下を向いた。確かにそういう意味では今回はいつもとは違う。だが・・・
 (だが・・・・・・ならばなぜ隠れる?)
 不二は見た目からは想像しがたいが、かなり狡猾だ。その性格からするとむしろこれを利用し、喜んで公表するだろう。少なくともこの騒ぎを予想していなかったわけではあるまい。
 (まさか・・・・・・・・・)
 浮かんできた嫌な予感。自分の今までの付き合いを元に、不二について確実に言える事が1つある。即ち―――不二は先導者[アジデーター]である、という事を。
 (あいつは決して人には踊らされない。ならばこれは―――)
 その考えを、まだ推測に過ぎないがそれでも確定に近いことを言うべきか否か、それを手塚が悩んでいたところで・・・。
 「―――ありゃ? どったの? 今って部活中じゃにゃいの?」
 フェンスの外からお気楽な声が聞こえてくる。
 「英二・・・・・・」
 大石が思わず呻いた。声にしろ調子にしろこんな奴は彼1人しかいない。が、
 「最悪のタイミングで来たね、菊丸も」
 胃を押さえて項垂れる大石を見やり、乾が珍しく苦笑した。これだけ報道陣やら野次馬やらが多い中で渦中の人物の親友登場。正に格好のエモノ、というわけだ。
 そんな乾の―――というか全員の予想通り、あっさり捕まる英二。
 「菊丸英二さんですよね、不二選手の親友の!」
 「すみません! 一言!」
 「不二選手に今回の事は聞いていましたか!?」
 等々続く質問に、しかしながら英二は全く慌てるそぶりを見せる事無く顎に指を当てう〜んと上に視線を送った。元々お祭り人間でこのように注目される事に慣れているとはいえ、恐るべき度胸のよさに思わず部員及び元レギュラーらは感嘆の声を上げていた。
 更に激しくなる質問の中で・・・・・・
 「彼は中学の頃からこのような付き合いを!?」
 その1言に、今まで聞いているのか無視しているのかよくわからなかった英二が顔を下におろしてきた。
 「中学の頃から・・・って、それ以前に不二今回が初恋っしょ? 比べ様がないじゃん」
 『はい・・・・・・?』
 衝撃の事実に静まり返る一同。今なんと言った? 初恋? 現在
19歳の不二が? 容姿端麗・頭脳明晰・スポーツ万能(かどうかはわからないがとりあえずテニスならば世界トップレベルなわけだし)・人当たり極めて良しなど神がお創りになられた人類の理想像のような彼が。その見た目麗しい姿を見るだけで頬を赤らめ、その耳に心地良く響く声を聞いただけで歓びに打ち震え、そしてその華麗な活躍を見ただけであまりの感激ぶりに卒倒する者が後を絶えないあの不二が!
 『初恋ぃ!!!?
 『それも男相手ぇ!!?
 『いやあああああ!!!!!
 ―――凄まじく失礼な発言だが、特に英二は気にする事無く続けた。
 「っていうかあの恋愛オンチの不二だぜ? まともな恋愛し出したってそっちの方が驚きでしょ。
  ―――ねえ裕太!」
 「俺っスか!?」
 いきなり話題を振られ、フェンスの内側で裕太が慌てふためき―――ふと『それ』に気付いた。
 (菊丸さん・・・・・・?)
 一見ふざけた様子ながら英二の目は真剣そのものだった。今の彼の言動1つ1つがどれだけ不二に影響を与えるか、それがわからないわけでもないだろう。彼のことはよく知っている。ただ単に面白おかしく盛り上げるのが目的ではない筈だ。
 ならば彼は一体何をしたがっている?
 「―――!!」
 悟る。これだけの報道陣が集まれば、この出来事は全国、いや、世界に流れる。聞くのは誰だ? 兄貴か? それとも―――
 裕太は長くため息を吐き、そして報道陣たちを眺め、その向こうで今も悩み、苦しんでいるであろう少年へ語った。
 「そうですね。兄貴が笑顔で花飛ばしながら『僕恋人出来ちゃったvv』なんて言って来た時は、病院連れて行こうかどうか姉貴と本気で悩みました」
 「そーそー。俺も『はあ!?』とか聞き返しちゃったよ。いっや〜なんてーか、不二付き合える奴がこの世界にいたってのも驚きだし。その上もう1年以上続いてるっしょ? は〜不二も大人になったね〜」
 ―――更に輪をかけて失礼極まりない発言の数々にさすがに引くギャラリーら。その中で、
 (なるほど・・・・・・)
 元レギュラー達も徐々に『それ』に気付き始めた。今リョーマに直接の声は届かない。悲しいながらも唯一届くのは彼を苦しめるマスメディアの情報だ。だからこそ―――それを利用してエールを送る。不二は本気で好きなのだと。そして自分達はみんな応援しているのだと。
 「あ、あの・・・本当、ですか・・・? 今の話・・・・・・」
 「不二選手なら、幼い頃から人気があったように思われますが・・・・・・」
 ようやく立ち直ったらしい(それでもいまいちショックが抜けきれてないような気もしたが・・・)報道者が質問をして来る。
 それにあっさり頷く英二。
 「まああんなだし、不二の奴中学から―――ってかもっと前からかにゃ? 俺中学からしか知んないんだけど、とりあえずめちゃめちゃにモテてたよ。げた箱にラブレター、暇なら呼び出し、お弁当持参でアタックなんて毎日だったし」
 「それだったらもっとガキの頃から変わってませんよ。バレンタインなんてチョコ持ち帰るのに姉貴に車で迎えに来てもらってましたし」
 「うっあ〜。さっすが不二」
 妙なところで納得する英二に、当然の質問がかかった。
 「それならば、尚更付き合いなんてとっくにしていた事では・・・?」
 「『付き合い』はしてた。『恋愛』はしてないだけで」
 「つまり?」
 「不二ああ見えてすっげータチ悪いぜ? あいつにとって『付き合い』はただのカモフラージュ
 にやりと笑って。
 「小さい頃はともかく中学に入ってから―――だと思うけど、あいつの話からすると―――不二テニス一筋でさ。それに関しちゃ『テニス馬鹿』とか言われてる手塚とかひたすら練習してた海堂や乾より凄い・・・とは言わないけどもしかしたらそれ以上だったかもしんない。『天才』とか言われてるけど俺から見たらそれからは一番遠いと思うよ。執念剥き出しにして周りが止めなきゃぶっ倒れるまで練習続ける。努力―――っていうよりむしろノイローゼに近かったんじゃないかな?
  ・・・まあそんなの人に見せる奴じゃないから知ってるのはホント少ないけどね。『練習』付き合ってた俺か裕太か、あと不二の家族か、そのくらいじゃない?」
 英二の言葉は的確に事実をついていた。あの不二が、部活中、いや試合中ですら飄々として熱意のかけらも見せなかったあの不二が猛特訓していた? それもノイローゼと思えるほどに?
 不二のイメージからは想像しがたいそれに、さすがに驚きを顔に表す元レギュラーら。その中で唯一手塚だけが一切驚きを見せなかった。初めて知ったが―――予想はしていた。不二の実力から考えるとむしろ当然だろう。いくら『天才』といえどあの部活のふざけぶりであそこまで上達するわけがない。
 それに―――執念に関しては直接向けられていた自分が一番よくわかっている。感情の1つを飛び越え、最早『不二』を形作る根幹の1つといえるそれに関しては。
 「んで、そんな訳だから不二にとっちゃ他の事なんてどーでもいい、っていうかむしろウザイって感じで。けど直接は言えないっしょ? あいつ外面作りすぎだから。
  だから『カモフラージュ』。『恋人』がいるって事で周りに牽制したわけ。『好きです』って告られて、丁度誰もいないなら即
OK。だけどまあしょせん囮だし、テニスの方がずっと大事だからまともな付き合いなんて絶対無理。デートなんて夢のまた夢。朝も放課後も部活あるから一緒に登下校ってのもなかったし、せいぜいお昼時々一緒に食べる位? それも終わったらすぐ練習してたし。冗談抜きで『恋人』より俺や裕太の方が一緒にいる時間長かったよ」
 「そ、それいいんですか・・・!!?」
 人間付き合いとしてあからさまに問題のある行動に、動揺が走る。
 「いいか悪いか、って聞かれると―――まあよくはないっしょ。実際そんなこんなで不二の『付き合い』って長くて2・3ヶ月で終わってたし」
 「正確には最長2ヶ月と
17日だ。平均は1ヶ月23日。いずれの場合も不二が振られて終わっているな。ちなみに最短では4日だ」
 「さすが乾。そんな所までデータに入っているのか・・・・・・」
 大石が頭を抱えて呟いた。
 「不二のかなり矛盾した恋愛歴には興味があったからね。しかしなるほど。カモフラージュか。上手いな、不二」
 「・・・ちなみにどの辺りが・・・?」
 「自分をよくわかっている。その方法だと決して不二自身が振る事はない。このため不二の評判に傷がつく事はない。たとえ相手がそれで泣こうが喚こうが周りは忍耐力のないそいつのせいにするだろう。なにせ付き合おうと言い出したのは相手の方なのだから。勝手に告白して勝手に振った奴の事を良く思う者などそうそういまい。その上あの不二を相手にそれ以上の信用を勝ち取るのは至難の業だ。特にライバルらは嘲うだけだろう。
 そしてそのような方法を取ったところで後釜はいくらでもいる」
 「そこまで考えて付き合うかな・・・・・・?」
 「
100%間違いなく」
 気持ち良く断定してくる乾。訊きながら大石も多分そうだろうと予想はしていた。が、せめて少しくらいは否定して欲しかった・・・・・・。
 「では中学時代は一切恋愛はなかった、と」
 「うん」
 「ですがもしかしたら人に隠れてこっそり、という場合もあるのでは? 今回のように」
 「今回・・・って、俺たち不二とおチビが付き合い初めてすぐおチビ紹介されたよ? 俺なんて真夜中電話で叩き起こされて延々5時間あいつのノロケに付き合わされたし。
  ていうか不二隠す気0だし。めちゃくちゃ見せびらかしてたし」
 「と言う事は既に知ってたんですか!?」
 「知ってたよ。俺たち全員」
 「では反対とかは? 何もしなかったのですか!?」
 「別に何も・・・・・・。とりあえず珍しいことが起こったにゃ〜ってその位」
 「な・・・何故ですか・・・!?」
 「何でって・・・・・・なんで?」
 それこそ『なんでか』答える側の英二も首を傾げる。そういえば2人の付き合いはやけにあっさりと受け入れられたような・・・。別に同性愛やら年齢差やらを批判する気はないが、気が付けば全員容認していた。
 「何でって・・・」
 「言われましても・・・・・・」
 一方話を振られた側は曖昧な笑みを浮かべた。なんでか―――理由の大部分はそう可愛く尋ねる彼自身にあったりする。年齢に関しては中学卒業後も彼らを教えている元レギュラーらにとっては
10代前半程度をあまり年が離れていると意識した事がないせいであり、そして性別に関しては・・・・・・
 立派な前例があるからだ。
 英二と大石の付き合い(こちらはまともな恋人として)は中学の頃から続いている。そのあたり構わずのアツアツぶりは第3者からはさすがパートナーと見られ、実状を知る者達は―――完全に免疫が出来、今ではごく自然な事として認識されている。どころか性別とかそんなものよりもラブラブバカップル振りのほうが遥かに凄まじい脅威として周りに恐れられていたりする。
 その上相手はあの不二。意見などしようものなら命の保証はされない。というかあの不二の、そしてあのリョーマのラブラブ振りに最早脳は完全に現実逃避を起こしている。
 ―――つまるところ、この状況でむしろ不二とリョーマの付き合いを反対しろという方に無理があるのだ。
 が、それを知らないらしい脅威の片割れは、あっさりと回答を諦め次に進んでいた。
 「それに俺に隠してなんて付き合ったりしないよ。不二は」
 「それはやはり親友だから、ですか?」
 「親友・・・っていうか、そーいう関係だから。俺達は」
 軽く肩を竦める英二。おどけて誤魔化す彼に、更に質問が放たれる。
 「ですがもし不二選手がその頃から男と付き合う性癖を持っていたとしたら? だったら隠すかもしれませんよ?」
 「それとももしかして以前はあなたが不二選手の『恋人』だったとか? そういう噂もありますが」
 と―――
 今までふざけていた(少なくとも見た目は)英二の様子が変わった。
 「んなことある訳ないだろ!!」
 いきなり激昂し、怒鳴り散らす。その変貌振りに静まり返る中、英二の怒りはまだまだ続いた。
 「誰だよんな噂流してる奴! すっげー迷惑!! 止めろよな勝手に変な話広げるの!!」
 目を吊り上げ、眉間に皺を寄せるその様は、本気で彼が怒っているのだと周りの者全員に認識させた。普段感情に任せて行動しているようで決して本気で怒ったりはしない彼の怒りに、誰もかける言葉を思いつけない。
 が、ずっと飄々としていた英二が感情を剥き出しにしてまで不二との付き合いを否定してきた。上手くいけばこのまま面白いことが聞けるかもしれない―――
 そう思って記者たちの質問はより激しい、そして露骨なものとなっていった。
 「そう言いますがあなたが不二選手に抱きつくのは珍しいことではないでしょう?」
 「なぜそこまで否定するんですか?」
 「やはり同性愛は受け入れたくないんですか?」
 普通はそう思うだろう―――だが、
 英二の思考回路は『普通』ではなかった。
 「不二と二股かけてるなんて勘違いされたらどうするんだよ! それでケンカとかになったら大問題じゃん!!」
 『はい・・・・・・?』
 「そんで無実の罪とかで振られたりしたら・・・・・・あ〜俺の人生もう終わりっぽいし!!!」
 『・・・・・・・・・・・・』
 頭を抱えてそんな『終末論』に1人盛り上がる英二にどう対応したらいいのかわからず戸惑う一同の中で、最初に我に返った大石が近寄り肩を叩いた.
 「英二・・・自分が何言ってるかわかってるかい・・・・・・?」
 「大石ぃ〜・・・・・・」
 泣き顔で英二が見上げて来る。『俺不二となんて付き合ってないからね!!!』と雄弁に語っているその濡れた大きな瞳をしっかり見つめ、大石は笑顔でポンポンと頭を叩いた。
 「英二のことはよくわかってるから。浮気なんてしないよな」
 「うん!!」
 ―――こんな感じでバカップルは盛り上がる。
 さてそれはおいておくとして。
 「菊丸の場合勘違い以前にそもそも誤解のし様がないだろう」
 フェンスの中でそう断言する乾に、元レギュラーら―――どころか部員合わせて全員が大きく頷いた。誰にでも親しいようで実は英二は自分の中でのランク付けが激しい。そしてそのランクによって接し方はまるで違う。ぱっと見ではわかりにくいかもしれないが、よくよく見れば大石と不二に対する接し方は、恋人と友人、とはっきり分かれている。ただし英二の場合、友人以上はみんな抱きつきの対象とされるためこのような『誤解』が生まれるのだが・・・・・・。
 「―――ああ、けど最近じゃ越前に比較的よく抱きついているようだね」
 手元のノートを見て、乾はふと思ったことを尋ねてみた。リョーマの入部とともに個人に対する英二の抱きつき率はかなり下がった。そしてその代わりといわんばかりにリョーマへのそれはかなり高い。『おチビちゃ〜んv』と抱きついては不二の怒りを煽ることは最早恒例行事となっている。
 その言葉に、どこかへ旅立っていた英二が帰ってきた。嬉しそうに笑って、
 「にゃ〜vv だっておチビちゃんって抱き心地いいんだもんvv 身長といい体格といいぴったりサイズvvv」
 「あ、それ言えますよね。なんていうかジャストフィット! しかも成長期前のあの子ども特有のやわらかさとしっとり感がまたよくて」
 「そ〜そ〜vv 一回抱いたらあれは忘れられない―――って・・・・・・」
 なぜか妙な方向(別名オタク話)に盛り上がりかけていた英二が笑顔のまま硬直した。同じく会話に参加していた桃もぴたりと止まる。
 誰もが何もできない中、ただ時と、そして乾の持つシャーペンだけが淡々と動きつづける。
 「に゚ゃ〜〜〜!!! 今の取り消し取り消し!!!」
 「ていうか何メモってるんですか乾先輩!!!」
 「今のなかなかに興味深い発言はぜひデータとして残しておくべきだろう。それを聞いて不二がどのような反応を示すか、実に楽しみだ」
 「俺たちかませ犬にする気か!!?」
 「かませ犬などとんでもない。データ取得のための尊い犠牲となってもらうだけだ」
 「同じじゃないっスか!!!」
 「それに今更取り消しは無理だろう。見渡したところテレビ局も何局か来ている。情報は先に流したもの勝ちだ。ならば生放送していたところで何の不思議もない」
 「不〜二〜に〜こ〜ろ〜さ〜れ〜る〜〜〜!!!!!!」
 「いや、それはないだろう。
  ―――死んだほうがマシなほどの『何か』をされるだけで」
 「なんなんスかその『何か』って!!!」
 「俺にわかるわけがないだろう。不二の行動パターンは解明のしようがない」
 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙〜〜〜!!! 遺書とか用意した方がよさそう!!!?」
 「乾! 不安を煽り立てるようなことを言うな!」
 これでもう何度目になるのか脱線しまくる話を、ため息をついた手塚が一言で戻した。
 「―――菊丸。まだ話は終わってないのだろう? なら脱線せずに続けろ」
 「ゔ〜・・・」
 不満げではあるが、さすがに手塚に逆らうだけの度胸はない。英二は長々と息を吐き話を元に戻―――そうとした。
 「で、どこまでいってたっけ?」
 「不二は菊丸に隠れて誰かと付き合っていたりしたんじゃないか、という事についてだよ」
 「ああ」
 ―――微妙に話題がずれているような気もしたが、淡々と答える乾にあっさり納得して、話を続けた。
 「絶対無いっしょ。意味がないし」
 「で、ですが人には言い辛い場合は!? 親友とはいえ『そういうこと』はいいにくいでしょう!?」
 「そういうことって―――男同士って事だよね?」
 「え、ええ・・・・・・」
 首を傾げ、わざわざ言い辛いからこそぼかした事をはっきりと言ってくる英二に質問した記者は曖昧に答えた。
 「それならむしろ逆。不二は俺に必ず言うよ。その上で俺を利用する
 「え・・・・・・・・・・・・?」
 利用。友人同士ではあまり使われないであろう言葉を当たり前のように言ってきた彼は、ぽりぽりと頬を掻きながらやはりなんでもない事のように続けた。
 「これは俺たち―――っていうか不二のことを知らない奴は理解し[わかり]にくいだろうし、別にわかってほしいとか、ましてや賛成してほしいなんて思わない。
  あいつと俺は『親友』とかそんな綺麗な関係じゃないよ。どっちかというと悪友。取引相手って感じ」
 特にこれをいうことに感慨は覚えない。不二という人間に対する付き合い方としてはごく自然な事に過ぎないのだから。
 「何かあればお互いに利用する。自分に都合のいいように駒として使う。けど絶対にそれで相手に不利益は与えない。与えるようなら『見返り』を出す。それが俺と不二の付き合い方。
  隠し事何もしてないってわけじゃない。俺は・・・まあ話のネタとかに結構いろいろしゃべってるけど、俺があいつについて知らないことなんていっぱいあると思う。―――まあそれがわかるならそもそも『知らない』んじゃないって言えるけどね。
  けどこれははっきり言える。あいつがもし本当に男と付き合ってたとしたら、俺に言って、それで今度は俺をカモフラージュに使う。俺なら不二と一緒にいても別に誰も変には思わないし、それに俺とあいつが付き合うことはないってのはあいつが一番よくわかってる」
 「そ・・・そんな付き合いでいいんですか・・・?」
 「だから言ったっしょ? わかってほしいわけじゃないって。
  あいつは―――不二は周りの奴には誤解されがちだけど、実は人付き合いめちゃめちゃヘタだよ」
 「え・・・・・・・・・・・・?」
 不二の人付き合いの良さは誰もが知っていることだ。それが彼が人気である理由のひとつなのだから。
 「ヘタ・・・っていうとまずいかな? うまいとかヘタとかそーいうレベルじゃないから。
  あいつ人間関係全然興味ないから。とりあえず外面よくして隠してるけどね。そのほうが便利だから。笑顔で内面全部隠して表面的な関係しか持たない―――それが不二の一般的な『人付き合い』。
  けど俺はそういうの嫌だったから。『親友』とかいって上辺だけの関係築いていったって意味ないでしょ? だから俺は『悪友』になった。お互い腹の底探り合って、そんで都合よく利用し[つかっ]って。―――んで、演技じゃなくて本当の自分さらけ出して。
  俺も不二も合ってたっぽいよ。そーいうの。だからこんだけ関係続いてるわけだし。こーいうのもいいんじゃん?
  ああ、それにおかげで俺らレギュラーとかは結構あいつともめちゃくちゃな付き合い出来てるしv」
 な? と笑って訊いてくる英二に元レギュラーらは苦笑した。不二の自分たちへの接し方は、英二曰くの『一般的人付き合い』に当てはまるかと問われれば答えは
Noだ。それをやっているならば不二の『被害者』になどなるわけはない。が、哀しいかそれとも嬉しいか、不二と接する自分たちをそう思ったことは数え切れないほどだ。
 「不二が正真正銘何の打算も駆け引きもメリットもなしに純粋に接してるのなんて、おチビか裕太か、それかタカさんか位じゃにゃい?」
 端的にこき下ろす英二に、なぜか突然自分の名前が上がった河村が疑問符を浮かべた。リョーマと裕太はわかる。だからこそ初めてできた『恋人』なのだし、不二の弟溺愛ぶりは中学の頃から相当に激しかった―――ただしあくまでそれらの接し方は不二の思考パターンが基準なため、される側が嬉しく思うかは別となるが。
 「え? 俺?」
 「不二言ってたよ。タカさんいい人過ぎて何もやりようがないってね」
 「は・・・はは・・・・・・」
 誉められているのか否か、乾いた笑いをうかべる河村にその他レギュラーらのじとっとした陰鬱な目が突き刺さる。
 またも妙な方向へ会話が進むかと思われたが、今度は英二自身が締めくくった。
 軽く肩を竦め、
 「まあそんな感じ。で、そんな俺らから言わせてもらうなら、不二は本気だよ。生まれて初めて、ね。
  ―――とは言っても俺らアイツがアメリカ留学してからおチビと付き合うようになるまであんま連絡とか取れてなかったからその間の事はよくわかんないんだけどね」
 そういう英二の目が手塚のほうを向いた。不二が自分達と離れてからも、唯一接していた人物。
 自然と集まる全員の眼差し。それらを受け止めるように手塚は目を閉じた。思い出すのは運命のあの日。
 「アメリカに行って暫くして、不二は変わった。―――いや、元に戻った、と言った方がいいのかもしれない」
 「どゆ事?」
 「これは俺の考えだが、恐らく中学に上がる前、即ちテニスを始める前の不二は今ここにいる者の知るあいつとは違っていたのではないだろうか。
  以前、不二が留学後初めて青学を訪れた時の事、あの時あいつの話を聞いた者なら解るだろうが・・・・・・あいつは強く、そして同時に弱い人間だ。自分の立つ場所[フィールド]に誰かがいるのならばそこに向かって全力以上で走ることが出来る。だが逆に誰もいないのならば自分の立っているその場所すらあやふやにする。1人きりでは存在する事すら出来ない、そんな弱い人間だ」
 ため息を軽くつき、左腕を擦る。自分を、不二を変えた全ての原因。もしもこの腕が今でも何ともなかったとしたら、自分は、そして彼はどのような人生を送っていたのだろう。
 「あいつがプロデビューを決意したのは俺が引退を決意した時だ。自分がもし世界のトップに立てたとしたらその時同時に俺に勝ったといえるのだろうか―――そんな言葉を言い訳にはしていたが、つまりは俺の替わりに自分と同じ『場所』に立ってくれる人物を探していたのだろう。同じ場所に立ち、自分の存在理由となってくれる者を。
  だが残念ながらその存在はいなかった。そこで不二は自分が存在するために別の手を選んだ。―――『恋人探し』だ」
 『え・・・・・・?』
 放たれた言葉に、『不二』をよく知る者達が驚きを露にした。不二は今まで決して恋人を作らなかった。リョーマが始めての相手だ。『不二』を知っているからこそ盲目的に信じていたその事実が―――
 覆される。
 「やっていること事態は中学の頃と同じだ。手当たり次第に付き合った。ただし自ら能動的に動いて」
 「じゃあ・・・・・・おチビも?」
 「越前も・・・・・・その中の1人に過ぎない、って事ですか・・・・・・?」
 震える声で尋ねる英二と裕太。不二に対して特に思い入れが強い2人。だからこそ今リョーマといて幸せそうな彼の手助けをしたいと全力を注いでいるというのに・・・・・・。
 言葉にこそしないものの思う事は全員同じだった。信じられないような眼差しで見つめる先で―――
 手塚はゆっくりと首を振った。
 「いや、違う。不二が今越前に対し求めているものは越前の存在そのものだ」
 「へ・・・・・・?」
 「越前に出会う前、あいつが付き合う『恋人』に求めていたのは『恋人に求められる自分自身』―――平たく言うところの『自分の理想像』だ。あいつは彼女らに求められる事でそれを自分の存在理由とした。だからこそその『理想像』どおりの自分を演じる。そこには『愛情』など存在しない。
  ―――結局のところやはり中学の頃と同じだな。あいつにとって『恋人』とは利用する存在でしかなかった」
 「どういう、事っスか?」
 「自分で居場所が作れないのなら他人に作ってもらうしかないだろう。『不二周助という男はこういう人間だ』。造られたそれに自らを当てはめ、それをあいつは自分の居場所とした。
  だが残念ながら不二は空想の産物ではない。そしてこれはあいつに限った事ではないが、外からの認識がそのまま本人の人物像に当てはまる訳がない。特に先ほど菊丸の指摘にあったように、笑顔で内面全てを隠し表面的な関係しか持たない、それが不二の一般的な『人付き合い』だ。この状況で一般的な他人が不二に持つ理想像―――と言うと少々問題があるためイメージと言い換えるが、それが指し示すものは不二の造り出したものに過ぎない」
 「え? え? それって?」
 ややこしくなっていく内容に、値を上げ始めるものがあちこちで出だす。
 「つまるところ誰しもが求める『不二』というのは不二自身が造り出したものだ。そしてあいつ自身はそれを元にし、自分を造り上げてきた。
  誰もが―――不二本人すら含め、誰もが『不二周助』という幻想に踊らされていたに過ぎない。
  誰もが知る『不二周助』という人間は実際には存在しない。実際にいるのはそれを演じている1人の男だ。
  ・・・・・・最も―――ここまではっきり言うのは逆の意味での偏見だが。確実に存在しないとは言わない。ただそれだけが全てではない、という事だ」
 では『不二周助』とは一体どんな人物なのか。何を指して『不二周助』と呼べばいいのか。答えは多分全てだろう。一般的なイメージも、友人らが持つイメージも。
 ―――そして『彼』の持つイメージもまた。
 「だが所詮は演技だ。どこかで無理が生じ、破綻する。たとえあの不二であろうと、だ。だからこそ不二は短期間で『恋人』と別れる。それも自らの手で終わりにする。
  それの繰り返しが3年間続いた。―――1年前、越前と出会うまで」
 あのときの事は今でも鮮明に覚えている。不二が明らかに変わったあの時。彼はついに見つけたのだ。『運命の相手』を。
 「越前の存在は正に不二の捜し求めていたものだった。不二にとって越前は自分と同じ場所に立っている人間だった。この瞬間不二は自分の明確な存在理由を手に入れた」
 「おんなじ場所?」
 「つまりテニスプレイヤーとしてって事かい?」
 「いや違う。確かにテニスに関係はしているが、単純にテニスプレイヤーである事、または実力が互角である事だけならば世界に進出すればいくらでもいただろう。
  ―――自分が全力を持って追い求めるに値する人間、という意味で、だ。まあこの場合は『逃げ続ける』と言い換えた方がいいのだろうが」
 「にゃにそれ? どーいう事?」
 「『天才の憂鬱』とでも言おうか。恐らく不二は小さい頃から人と争った事がない」
 指摘され、裕太はふと幼い頃を思い出した。小さい頃から何でも出来た兄。努力せずとも1番になれ、それが当り前なんだと誰もが思っていた。立ち向かう事など、誰も考えていなかった。
 ―――自分を除いては。
 「不二に対し牙を剥き、さらに叩きのめされた後もなお歯向かい続ける人間はただ2人。裕太と―――そして越前。不二にとってはたとえ実力が同じであろうが最初から負けを認め、正面から立ち向かおうとしない人間よりも遥かに面白い存在だ。追われる緊迫感[スリル]。あいつにとってはこの上ない快感だ。
  ―――ここまでくれば解るだろう? 追い追われ出来るのは同じ立場にいるからだ。違う立場[ばしょ]ではそもそもこのようなことは成立しない。以前越前が不二に負けた後『勝って同じ場所に立ちたかった』と言っていたが・・・・・・越前は同じ場所に立つ条件を『実力』としたようだが、不二から見てみれば越前は既に同じ場所に立っている。初めて会った―――初めて試合をした、その時から既に」
 ここまで話し、手塚は息継ぎを装いため息を吐いた。自分で説明しておいてなんだが、よくよく考えたらこの関係は自分と不二に対しても当てはまる事だった。ただし立場は逆転して不二が追う側になるが。
 追われる事。不二にとっては快感。自分にとっては恐怖。ならば・・・追う事は不二にとっては何だったのだろうか?
 決して明かされない、いや、明かして欲しくはない疑問は捨て、吸い込んだ息で言葉を次へと続けた。
 「つまり今の不二は越前から『逃げ続ける』限り自分の居場所を見失う事はない。だからこそ今不二は越前の前では『不二周助』を演じてはいない。そのような事をせずとも居場所ならば越前そのものが教えてくれるのだから。
  ―――越前と不二の付き合いが長く続いている理由はここにもある。在りのままを出すからこそ、破綻する事はない」
 周りが引くバカップル振りだけではない。不二がリョーマに、リョーマが不二にさらけ出しているのは。
 愛情・尊敬・畏怖・信頼・庇護・依存・反発・執着・・・・・・・・・・・・そして、嫉妬に、憎悪。
 人が相手にもつ感情、善悪問わずそのほぼ全てをお互いに持ち、それが拮抗した状態であるといえる。テニスを介した立場だけではなく、気持ちの上でもリョーマと不二は同じ場所に立っている。だからこそ本物の『恋人』となれたのだろう。同じ場所に立つ事は出来なかった、自分とは違って。
 「なるほどね・・・」
 手塚の説明に、乾が頷いた。愛用のノートを広げ、
 「前から疑問だったんだ。何故越前の持つ不二のイメージ―――手塚は『理想像』って言ったっけ―――それが世間一般のものと大きく異なるのか。単純に『恋人同士』であり続けるのなら同じにした方が都合がいいだろうに。正しく不二のイメージは人間として『理想』そのものなのだから」
 「理想・・・って、完璧パーペキパーフェクト! って感じの事だよね? 不二だったら見た目も頭もよくってスポーツ出来て何やっても天才で人当たりもよくって優しくって・・・・・・とかそんにゃ感じの?」
 乾の言葉にう〜んと唸る英二。(たとえ実際がどうであろうと)『不二』で『理想』とくればこんな事をずらずらと考えるだろうに。周りも、自分達も―――そしてリョーマも。ならなんで乾はリョーマのそれが違うと言うのか?
 「いや。『理想』というとややこしいから手塚も言い直したんだろうけどね。要はその人に対するイメージ。誰々『らしさ』って言葉をよく言うだろ? 例えば菊丸、お前なら『明るい・アクロバティック・お調子者・活発』などだ。お前のこんなところを見てお前『らしい』と誰もが思い、その一方で暗かったり消極的だったりするとお前『らしくない』と思う。つまりは今挙げた特徴が菊丸の理想像[イメージ]だ。別にいい事ばかりではない」
 「ってゆうかどっちかってーと結構悪い感じに言わにゃかった? 今」
 「気のせいだ。そして不二に関しては―――」
 「さらっと流すなよ・・・」
 「―――不二に関して、周りが持つイメージは今菊丸が挙げたとおりだ。
  さて、越前の場合」
 と、何故かここで一瞬言葉を切る。眼鏡を軽く上げ、
 「最初に念を押しておくがこれはあくまで越前自身の言った事だ。俺はそれをまとめたに過ぎない」
 「・・・・・・なぜそこまで力説する?」
 何となく2人の会話を聞いていた手塚がピクリと眉を上げ、疑わしげに訊いて来た。
 「それも気にしないでくれ。ただ俺も命はまだ惜しいからね。
  さて越前のもつ不二のイメージだが・・・・・・1.何を考えているのかワケがわからない。2.笑顔が怪しい。3.絶対変な術使ってる。4.楽勝で犯罪行為やりそう。しかもどうやってんのか警察には捕まらない感じ。5.―――」
 「ちょ、ちょっとちょっとちょっとちょっと!!!」
 「い、乾! それはいくらなんでも―――!!!」
 青褪めた顔で慌てて止めに入る一同。確かに全部合ってると思う。というか自分達もそう思う! だがそれを口になど出そうものなら即座に不二に抹消されること間違い無し!!
 「だから念を押しただろう? これはあくまで越前自身の言った事だ。俺はそれをまとめたに過ぎない、と。
  ちなみにこのような項目があと
32続く」
 「ンなに続くんスか!?」
 「ってか越前マジでそれ言ったのか!?」
 「不二にバレたらヤバイっしょ!!?」
 口々に言うが―――それに対する乾の答えは更に恐ろしいものだった。
 「いや。この調査は不二立ち会いの元行った。そしてこのような事を言う越前に対し、不二はただ笑うだけだった。それも実に楽しそうに。だから不思議でたまらなかったんだが」
 『ええええええええええええええ!!!!!?







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 テレビから突き刺さる声に耳を塞ぎながら、リョーマは僅かながら笑みを浮かべていた。先ほどからの騒動は全て生放送で流れていた。それだけではない。朝には菜々子の、それに南次郎の事もテレビではやっていた。
 そこに込められたみんなの気持ち。不二と自分との付き合いを今まで周りに反対されたりした事は一切なかったが、自分達がどんな風に思われていたのか、実際に聞くのはこれが初めてだった。
 「―――まだまだだね、俺も」
 自分が笑っていた事に気付いて・・・・・・慌てて笑みを消し、いつものように呟くリョーマ。誰かが見ていたわけでもないが、その頬は微かに赤く染まっていた。



To be continued・・・
















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 よ〜っしやっと4が終わった! 長々かかりました。その中でいろいろ入れましたが、まあつまるところみんな応援してるんだな〜っと(短ッ!)。
 では次は5。いよいよ2人の再会です!

2003.1.133.4