周助・・・俺の事、まだ好きでいてくれるの・・・・・・?






Focus


Act5.解決




 「不二の居場所がわかったぞ!!!」
 騒動開始から1週間。いきなり挨拶もなしに部屋に飛び込んできた英二の第一声に、リョーマと桃が同時にそちらを振り向いた。
 「―――!」
 「ほんとっスか!?」
 「ホントホント! 正確には居場所ってゆーよりこれから来る場所なんだけど!」
 と、ここまでまくし立ててからとりあえず息を落ち着けるべく一呼吸置く英二。それすらも待ちきれず、今まで何を言おうと反応すらしなかったリョーマが詰め寄った。
 「ほんと? ほんとに周助に会えるの? ねえ、英二先輩!!」
 英二の胸元を掴んで、食事もとらず限界の体力とは思えない力の入れようで揺さぶる。
 「ぐ・・・・・・」
 「ねえ!! 答えてよ!! 英二先輩!!」
 「お、おい越前! さすがに英二先輩死ぬ・・・・・・!!」
 泣きそうな勢いで叫び―――そして三途の川へ旅立とうとしている英二をさらに強く激しく揺さぶり続けるリョーマをなんとか後ろから桃が拘束した。
 「ごほ・・・・・・。ま・・・マジで死ぬかと思った・・・・・・。こないだ乾汁飲んで以来の臨死体験だった・・・・・・」
 ようやく解放され、額の汗をぬぐって今度こそ息を落ち着ける英二に、それって2週間前の事なんじゃ・・・と突っ込むのは止めて、桃が先を促す。
 「で、英二先輩・・・・・・」
 神妙な桃の声に、英二もフザけた様子から一転、真面目な顔でリョーマと桃を順に見やった。
 「俺の姉ちゃんがモデルもやってんのは知ってんでしょ?」
 「ああ、美咲さんですよね、確か。洋服のデザイナーやってるっていう」
 「そうそう。んで、その姉ちゃんが契約してる雑誌が、今回の騒動で特集組むことにしたんだって。で、来週からあいつ大会っしょ? その関係者とかもその前に問題解決したいみたいで、緊急で記者会見開くらしい。
  ―――で、ここからが重要だけど、不二が直接話すっぽい」
 「・・・・・・・・・・・・」
 桃が思わず黙り込んで、抱えたままのリョーマを見下ろした。またマスコミ絡み。リョーマからしてみればもううんざりだろう。だが他に手がかりは一切ない。
 そして桃に見下ろされたリョーマは、
 「場所、わかってるんスか・・・・・・?」
 情報ならずっと求めていた。それが手に入ったのだ。マスコミ絡みだろうがなんだろうが関係ない。
 ぽつりと、だが力強く呟くリョーマに、英二と桃、2人の顔が呆気に取られたものから徐々に笑みへと変わっていった。
 「ばっちし
OKだいじょーぶい! 場所も時間もかんっぺき!」
 「じゃあそれに先回りして先輩と越前を―――!」
 会わせれば―――そう言いかけた桃、さらに口にはしないが同じことを思ったリョーマ。
 2人のそんな思惑は・・・・・・次の英二の一言であっさり打ち破られた。
 「んじゃさっそく行くぞ!!」
  「「はあ!?」」
 「記者会見、今からだから! あ! 場所はこっから車で行けるけど、姉ちゃん忙しくて頼めなかったから代わりに不二のお姉さんが送ってくれるって。
  ―――てなわけで由美子さんもー外で待ってるし」
 「そ、それってつまり・・・・・・」
 「まさか・・・・・・」
 心底嫌な予感に背中を冷たい汗が伝う。否定してほしくてたまらないそれを―――
 英二はあっさり肯定した。
 握り拳を振り上げ、高らかに宣言する。
 「記者会見乗り込むぞ! おー!!」
  「「えええええええええ!!!?」」







ζ     ζ     ζ     ζ     ζ








 記者会見会場。
 大勢の記者の質問―――という名の詰問と、目のくらむカメラのフラッシュを浴びて、大会関係者や不二の専属コーチなどが必死に言い訳じみた否定を続ける中、
 「・・・・・・・・・・・・」
 不二は何も発言せずにただ俯いているだけだった。いつもどおりの薄い笑みを浮かべる彼からは―――
 何も感じ取ることはできなかった。







ζ     ζ     ζ     ζ     ζ








 「間に合った!?」
 「多分ね。まだあの子は何も言ってないわ。
  ―――周りは必死で否定しようとしてるけど」
 会場のあるビルに着くなり急いで車を降りようとする英二に、由美子がカーナビをテレビ画面に切り替えて答えた。生放送で流れる画面に写る不二の姿に、リョーマが小さく息を呑んだ。
 食い入るように画面を見るリョーマ。その腕が勢いよく引かれた。
 「おチビ! んなもん見てるヒマないぞ!!」
 「だ・・・って・・・・・・」
 車の外に引きずり出されてもなおも画面を見ようと藻掻く。が、今度は逆に英二に胸元を掴まれ、怒鳴りつけられた。
 「本物の不二に会いに行くんだろ!?」
 「―――!!」
 その言葉に、
 ためらった後、リョーマはゆっくりと頷いた。
 「じゃあ私はここで待ってるから」
 ハンドルをこつこつ叩いてそう言う由美子。彼女に目配せした英二が小さく首を縦に振る。
 「おっし! んじゃ行くぞ!」
 「マジで行くんスか!!?」
 「あったりまえだっての! ホラ! 桃も行く!」
 「俺も!?」
 「ちゃんとおチビが逃げないようにしっかり捕まえとかなきゃいけないだろ!?
  ほらほら! 時間ないんだから黙って俺についてこい!」
 「それはプロポーズの台詞・・・・・・」
 「しかもこれじゃ二股だし・・・・・・」
 現実逃避を起こしてむしろ冷静に突っ込みを入れる桃とリョーマ。『ついてこい』どころか2人を引きずって、ビルに踏み込む英二。
 ラストバトル。果たして軍配は誰の手に渡るのか・・・・・・。







ζ     ζ     ζ     ζ     ζ








 「これじゃ話になりません!!」
 「本人の話を聞かせてください!!」
 「不二選手!! 今回の騒動、事実なんですか!? それともデマなんですか!?」
 「不二選手!!」
 会見が始まってどれ位経った頃か、のらりくらりと言い逃ればかりして決して核心に触れようとしない周りに、ついにマスコミ側が騒ぎ始めた。
 『み、皆さん落ち着いてください!!』
 なんとかなだめようとする司会役の男性。だが騒ぎはますます激しくなるだけだった。
 「いい加減にしてください!!」
 「何のための記者会見なんですか!?」
 「俺たちは不二選手の口から聞けるって言うから集まったんですよ!?」
 『そ、それはその―――』
 たじろぐ司会。そこに―――
 「すみません。マイクを貸していただけませんか?」
 今まで黙っていた不二が、初めて口を開いた。マイクも使わず、隣にいたコーチに話し掛けただけなのだが、静かに響くその声に、騒ぎが一気に静まり返った。この場にて、場違いな事にマスコミ関係者や今生放送でテレビを見ている者達は唐突に理解することとなった。不二を神聖視する少女らの言葉の理由を。
 <その見た目麗しい姿を見るだけで頬を赤らめ、その耳に心地良く響く声を聞いただけで歓びに打ち震え、そしてその華麗な活躍を見ただけであまりの感激ぶりに卒倒する者が後を絶えない>
 色眼鏡でもましてや妄想でもなかった。もしも特定の声に魔力が篭っているとしたら、間違いなく彼の声はその1つだろう。少なくともそれを聞いた者にそう錯覚させるほどの『何か』があった。
 「あ、ああ・・・・・・」
 沈黙に包まれる中、コーチが持っていたマイクを渡した。急遽開かれたこの会見。設備もロクに用意できなかったため―――そして何より、不二当人がなぜか『立ってやりたい』と言い出したため、話す側は全員立ちっぱなしだったのだが・・・・・・。
 一歩、前に出てゆっくりとお辞儀をする不二。
 『皆さん、この度は突然の会見にお集まりいただきありがとうございます。それと、今回のことに関し、僕のせいでこれだけ大きな騒ぎを起こさせてしまった事、本当に申し訳なく思っています』
 よどみなく流す不二の言葉に、シャッターを押すことすら忘れて聞き入る一同。
 『さて、今回の騒動、その発端となった僕と彼、越前リョーマ君との関係についてですが―――』
 いよいよ待ちに待った瞬間の到来に、全員の緊張がピークに達する。
 が―――
 不二がそこで言葉を切った。いや。それだけではない。
 そこで、何かに呼びかけられたかのようにふと顔を上げ―――いきなりすべてを無視するかのように横、会場入り口を見つめた。
 『・・・・・・・・・・・・?』
 不審な行為に、再びざわめき出す報道陣やら何やら。
 『あの―――』
 司会者がおずおずと尋ねようとする。だが、その言葉が終わる前に答えはあっさり判明した。
 『だから不二に会いたいんだろ!!? あいつ中にいるんだから駄々こねてね―でさっさと入れ!!!』
 廊下から響き渡る騒音。誰かの怒鳴り声とともに、ガタガタと、まるで誰かが固く閉ざした上でそれを無理矢理こじ開けようとしているかのように―――事実その通りなのだろうが―――扉が激しく揺れる。
 わけのわからない事態に騒然とする一同の中で、
 横を向いたままの不二ただ一人が、瞳を僅かに開いて『笑って』いた。







ζ     ζ     ζ     ζ     ζ








 「だから不二に会いたいんだろ!!? あいつ中にいるんだから駄々こねてねーでさっさと入れ!!!」
 会場のすぐ外、というか扉の前にて、扉のバーにしがみついて中に入ろうとしないリョーマに英二が思い切り怒鳴った。ここまでは桃と2人掛りで引きずればなんとか歩いてはくれたが、いざ会場を目の前にして(文字通り)リョーマが完全にごね出した。
 「やだ! 絶対やだ!!」
 「ざけんな! 誰がここまで連れて来てやったと思ってんだ!!」
 「アンタが勝手にさらってきたんだろ!?」
 「さらう!? 人聞き悪いこと言うんじゃねえ!! 俺はおチビと不二のためを思って―――!!!」
 「だったら俺よりむしろ周助つれてくりゃいいじゃん!!」
 開けさせまいと扉にしがみつくリョーマ。それを無理やり引き剥がそうとする英二。最早ただのガキのケンカと化したそれに、2人から少し―――精神的にはとっても―――離れた位置から、桃がそっと手を上げ静かに提案した。
 「あの〜、英二先輩・・・」
 「ああ!? 何だよ! てめぇまで文句あんのか!?」
 怒りのあまり人格が一部破綻した―――つまるところ『ブチ切れた』英二がすっばらしくガラの悪い様子で振り向く。何だか逆らうと本気で殺されそうな気迫を見せる英二に、たじろぎつつも一応提案を口にした。
 「やっぱ、ムチャあるんじゃないっスか・・・? この計画・・・・・・」
 「や〜っぱお前までケチつける気じゃねーか!! 覚悟出来てんだろーな!?」
 「うわー!! っていうか先輩支離滅裂っスよ!! 落ち着いてください!!」
 怒りの矛先が
360度向いた英二から逃げるように両手を上げて後ろに下がり、しかしながら桃はリョーマをかばうべく健気に発言を続けた。
 「と、とりあえずここはいったん諦めて、でもって記者会見終わったあと改めて行く、とかそんな手を考えてみたりもするんスけど・・・・・・」
 「それじゃおせーだろーが!! もー不二なんか言ってんぞ!!」
 「ええ!? って英二先輩これだけ騒いでてよく聞き取れましたね・・・・・・」
 「目も耳もいいからねんv
  ―――ってそういう問題じゃねえ!! 出直したら手遅れだろーが!! 不二何言うかわかんねーぞ!?」
 「とか言いつつしっかりノるんスね・・・・・・」
 「こーなったら最終手段!! 桃!!」
 「は! はい!?」
 「行くぞ!!」
 「ええ!!? まさかそれって・・・!!?」
 こちらからは押して開ける両開きの扉。その両側の取っ手に掴まるリョーマの後ろに回って足を上げる英二に、何をやりたいのか理解して桃が真っ青になった。強制的にリョーマごと扉を蹴り開けるつもりか。だがそれを実行すれば―――扉を開けなければリョーマは顔面から激突。開けても前に吹っ飛ばされる。どちらにしろ大怪我確実のその暴挙を慌てて止めようとする。が、
 「も〜もv」
 桃を見つめる英二が―――にまっと笑った。
 「『先・輩・命・令』v」
 「―――!!!」
 命令―――即ち、逆らえば死、あるのみ。
 びくうっ! と硬直し、
 桃もまた、リョーマの後ろに立って足を上げた。
 「せーのっ!」
 「悪りい越前!!」
 「裏切り者ぉ!!」
 どばん!!
 
3者3様の声とともに、硬く閉ざされていた扉が開かれた。
 2人に蹴られる寸前、冗談抜きで生命の危機を感じ慌てて開けた扉から、リョーマは勢いよく中へ放り飛ばされる。床に手をつけ、何とか受身を取って転がり、1回転した後立ち上がり後ろを振り向いた。
 「何するんスか!!」
 「にゃ〜はっはっは!! おっチビ〜v 残念無念また来週〜♪」
 「越前悪りい! 俺だって命は惜しいんだ!!
  てなワケで、不二先輩、越前お届けにあがりました!」
 「―――ああ、ありがとう」
 後ろから聞こえる心地よい声に、リョーマの怒りがピタリと収まった。
 恐る恐る、振り向く。
 「しゅー・・・すけ・・・・・・?」
 「久しぶりだね、リョーマ君」
 誰よりも見たかった笑顔が、誰よりも聞きたかった優しい声が、今、目の前にある。
 1歩前に出ていたためちょうどリョーマが転がってきたそのすぐそばにいた不二が、目を見開いて驚くリョーマに微笑みかけた。それは、マスコミやテレビの視聴者などが始めて見る、リョーマのためだけの微笑み。
 それを見て―――リョーマの顔が驚きから困惑、不安、そして絶望へと変わっていった。それに従い、不二の顔を見ていられなくなって徐々に俯いていく。
 ―――『「嫌い」って言っていいから、もう終わりにしていいから・・・それでも逢いたいよ、周助・・・・・・』
 そうは思っていても、いざ実際に会えば怖くてたまらない。こんなに騒ぎになったのだ。不二はもう自分を好きでいてくれはしないだろう。この笑みを向けられるのも、きっとこれで終わりなんだろう・・・・・・。
 俯くリョーマの頬に、冷たい手が当てられる。体温の低い、不二の手が。
 ゆっくりと、本当にゆっくりと顔を上げるリョーマ。感触を懐かしむように頬をすべった手が顎に当てられ―――
 上を向けられる。そして同時に不二の顔が下がってくる。
 何をされるのか予想して―――いつもなら来るべき事に備え、リョーマが近付く不二の顔に合わせて目を閉じていった。
 と、
 そんなリョーマの額に、もう一方の手が当てられた。さっき転がったおかげで帽子は取れている。額にかかった髪を掻き上げ、不二は現れた小さな額に触れるだけのキスをした。
 「・・・・・・?」
 いつもとは違うその動作に、閉じていた目を薄く開き見上げるリョーマ。その顔に、不二は先ほどリョーマらが騒いでいる間に拾い上げておいた帽子を深くかぶせた。
 「わ・・・!」
 突然視界を塞がれてリョーマが声を出す。慌てる彼にくすりと笑って、軽く屈み込んだ耳元にささやきかける。
 「君のかわいい姿をこれ以上人前にさらすのは嫌だからね」
 「〜〜////!!」
 帽子をかぶせたのは正解だったらしい。帽子から飛び出す耳が真っ赤になっている。
 さらに屈み、リョーマの腰に手を回す。
 「な・・・!?」
 「よっ・・・と」
 驚くリョーマは無視して、不二は軽い掛け声と共にそれこそ軽々とリョーマを肩に担ぎ上げた。
 呆然とする記者らに向かって、にっこりと笑いかける。
 「というわけで、僕達付き合ってますv」
 どこにでもありそうな年賀状のごとく簡潔かつバカップル的な報告をし、リョーマを(後ろ向きながら)しっかりと抱き締め嬉しそうに微笑む不二。その肩の上でじたばたとリョーマが暴れだした。
 「何やってんだよ周助!!」
 「え? せっかくの熱愛宣言じゃないvv ちゃんと目立つようにやらなきゃvvv」
 「どこが熱愛だ!! 俺は全っ然賛成してない!!」
 「やだなあvv あんなことやこんなことまでした仲なのにvvv」
 「何だよその『あんなことやこんなこと』って////!!!」
 「え・・・。それはとても僕の口からは・・・・・・」
 「わざとらしく恥ずかしがるな!!!」
 「何? 言ってほしいの? こんな大衆の前で?
  も〜リョーマ君ってば大胆なんだからvvv」
 「ンなこと一言も言ってないだろ!!!!!」
 「またまた照れちゃってvv 可愛いなあ、ふふvv」
 「ちゃんと会話をしろ〜〜〜〜〜〜!!!」
 会話の間にもしっかり暴れているリョーマ。だがさすが回数をこなしただけあって、やたらと手馴れた様子の不二からはとても逃れられそうになかった。
 「それに! もう十分目立ってんだからさっさと下ろせよ!!」
 「だめだよ。そんな事したらリョーマ君がまた逃げちゃうじゃないか」
 「こんな事毎回されてれば逃げて当たり前だろ!!!?」
 「だからその予防策にちゃんと捕まえておくんじゃないかvvv」
 「話を繋げろ話を!!! それが嫌だって言ってんだろ!!?」
 「それにどうせ行き先は一緒なんだからv だったら一緒に行って当然じゃないvv」
 「それだったら普通に歩けばいいだろ!!? なんでいちいち抱え上げんだよ!!!」
 「もちろんv 気分を盛り上げるためのサービスvv」
 「ンなサービスいるかぁぁぁぁぁ!!!!!」
 そして話しながらも移動していた不二。リョーマが放り込まれた扉の前に立ち、今だ呆然とする一同に向かって軽く頭を下げた。
 「では記者会見を終わりにさせていただきます。皆様、本日はありがとうございました」
 言葉自体は最初とそう変わらず。だが今度はあからさまな棒読みのそれに、聞き惚れる者はいなかった。
 「放せーーー!!! 下ろせーーー!!!」
 むしろばたばた暴れるリョーマに全員の注目が集まる中、2人を送り出した扉はばたり、と薄情なほどにあっさり閉まった。







ζ     ζ     ζ     ζ     ζ








 一方由美子の待機していた車に戻った2人。やはりカーナビを利用して今の会見を見て、
 「あ〜っはっはっはっはっは!!!!! 不二サイコ〜〜〜〜〜!!! ウケる〜〜〜〜〜〜!!! 腹いた〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 「あの子もまためちゃくちゃな事を・・・・・・」
 「気の毒にな、越前・・・・・・」
 腹を抱えて笑い転げる英二。言葉とは裏腹におかしそうに笑う由美子。そして―――目を逸らして頬に一筋の汗をかきつつ呟く桃。こうなると予想もついていたにも関わらず見捨てた立場としては胸が痛いものがある。
 「けど、とりあえずこれで一件落着、ってね♪」
 「そーっスね」
 「騒がしい1週間だったわね」
 中心人物が抜けてもなお暴動の起こる会場からは画面を切り替え、3人は今こちらへやってこようとしている2人を迎え入れようと車の外を見やった。







ζ     ζ     ζ     ζ     ζ








 「信っじらんない!!」
 「まあそう言わないでv」
 ビルの中を疾走しながら、なおも文句を垂れるリョーマに不二が苦笑した。ちなみにもちろん会場を出てすぐリョーマは下ろした。出来ればもうちょっと抱いていたかったが、残念ながら逃げることを優先したためやむなく下ろすことにした。
 「ってゆうか大体周助どこいたわけ? 全然連絡くれなかったじゃん。みんな知らないっぽかったし」
 「ああ、丁度大会までヒマがあったから、久しぶりに父さんに会いにアメリカに行ってたんだよ」
 「何それ!? じゃあなんでみんな知らなかったのさ!!」
 「そういえば誰にも言ってなかったっけ。いきなり思いついたことだったからなあ」
 「なら連絡くれなかったのは・・・!?」
 「ごめんね。使ってるパソコン壊しちゃったもんで。電話もあったんだけど、ホテルに部屋取ってくれてたの父さんで、そこで毎日国際電話かけるのもどうかな、って思って」
 「はあ!? じゃあ今回のって・・・・・・」
 「向こうで新聞見て驚いたよ。それで慌てて帰ってきたんだけどね」
 「も〜サイアクーーー!!!」
 この男はヘンなところで運を―――というかトラブルをよく引き寄せるらしい。わかっていなかったわけではないが、むやみやたらに重なる『偶然』に、リョーマが逃げていることも忘れ魂からの悲鳴を上げた。
 「―――ああ、それでね、リョーマ君」
 すっかり意気消沈したリョーマの腕を不二が軽く掴んで引き寄せた。もうどうでもいい気分で逆らわずにバランスを崩す。
 ため息を吐く口に、一瞬だけ触れる不二の唇。
 「?」
 今度は目を閉じる間もなく行われた行為。きょとんとするリョーマに、不二が微笑みかけた。
 「さっき言いそびれちゃったからね。ただいま」
 2度と向けられることはないと覚悟していたその微笑み。
 向けられ、リョーマもまた笑い返した。こちらもいつもの笑みで、口の端を吊り上げ、
 「言うの遅すぎ」







To be continued・・・


















ζ     ζ     ζ     ζ     ζ     ζ     ζ     ζ     ζ     ζ

 よ〜っしバカップルで終わったぞ〜! 第一目標達成だ!! ・・・・・・ってそれが第一目標ですか・・・・・・。
 そんなわけで
Act.5。ようやくリョーマも不二と会うことに成功しました。おめでたう! リョーマ!!
 ―――と、普通ならここで
HAPPY ENDでしょうが―――なぜか続きます。起承転結。ラストはオチだ!!
 ・・・・・・学校で人が多くなった中慌てて書いているため文章がワケわかんないことになってます。さあ! 次を上げられるのはいつでしょう!?

2003.4.14