周助の・・・・・・バカーーーーーー!!!!!






Focus


Actその後




 その日、不二(とリョーマ)の起こした騒動はあっという間に各メディアを通して世間に伝わっていった。
 <プロテニスプレイヤー不二選手の熱愛宣言!!>
 <不二選手、少年との付き合いを堂々告白!!>
 <2人の付き合いは両家公認!?>
 <回りもはばからぬイチャイチャ振りに報道陣も唖然!!>
 さて・・・・・・







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 次の日、まあ当然の如く昨日は不二の家に泊まり、いろいろあったのだがそれはいいとして。
 今日は休日。だが部活はあるため、寝ぼけ眼を擦ってリョーマは1週間ぶりに学校へと行くことになった。不二も今日は青学へ行くため一緒に行こうと言い出した。が、昨日の騒ぎは生放送から次の日のニュース・新聞、その他の芸能
&スポーツ面を独占する結果となり(スポーツ面はともかくなんでテニスプレイヤーの不二が芸能面まで独占するのか・・・・・・不二の人気とその意味を考えれば当然だろう)、朝から周りはひらすらに騒がしかった。そんな中で不二と登校などすれば待ち構えている部員やら記者やらが絶対押し寄せる。だからこそ断ったのだが・・・・・・。
 さて・・・・・・







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 (ウザ・・・・・・)
 しっかりと手遅れだった。
 「越前君、こっち向いてください!!」
 「不二選手との始まりをぜひ!!」
 「君にとって不二選手はどんななんだい!?」
 学校にて、1年なので準備をしようとカゴいっぱいのテニスボールを運んでいたところであっさりと捕まった。不二は一体いつ来てどうやって突破したのか、恨めしげにリョ−マが見やるその先、フェンスの中で楽しげに元レギュラーらと会話していた。記者たちもさすがにあの中に踏み込む勇気はないらしい。踏み込めば問答無用で手塚に追い出される以上無理もない。
 そんなわけで、不二に取材し損ねた分も一気にこちらに回ってきていた。
 こうなったらむしろ一緒に行かなかったことが悔しい。一緒ならば不二もまたこの面倒くささを味わう羽目になっていたというのに・・・・・・!!
 などと苛つくリョ−マに気付いているのか否か、なおも無神経な質問が続いた。
 「越前君! 今回の騒動についてどう思いますか!?」
 「この1週間、何を考えていましたか!?」
 その中で―――
 「あの写真を見て、あなたはどう思われましたか!?」
 (―――!!)
 その質問に、無視を決め込んでコートへ歩き続けていたリョーマの足が止まった。
 (写真・・・・・・)
 ふと思う。あの写真。何かおかしくなかったか?
 「越前君!!」
 「越前君!!」
 止まったのをいい事に集中砲火で浴びせられる質問と注目。それは頭から追い出し、考えに集中するリョーマ。
 (待てよ・・・。おかしいって言うならあれは―――)
 徐々に、疑惑が頭の中で1つにまとまる。
 (そういう、コト、ね・・・・・・)
 カゴを握る手に力が篭る。ギシリ、と歪み、悲鳴を上げるカゴを―――
 思い切りリョーマは地面に叩き付けた。
 響き渡る音と、周りにいたマスコミたちのざわめきに、全員の視線がリョーマに集中する。もちろん、コートにいた彼の視線も。
 「しゅーすけv」
 恋人直伝の素敵な笑顔で微笑む。かつてない事態に動揺を露にする部員と竜崎顧問ら。
 「お、お、お、おチビいいいいい!!!??」
 「越前が壊れた・・・・・・!?」
 「あのクソガキの息子にしちゃリョーマはよくできてると思ってたが・・・・・・こっちがおったか・・・・・・!!」
 「大変だ!! 救急車!! いや、むしろ精神科医を早く!!」
 「不二に毒されたか。となるとこれは『不二感染症』―――むしろ中毒症か。ふふふ・・・。いいデータが取れそうだ・・・・・・」
 「やはり原因は不二と共にいてのストレスか・・・・・・!!」
 「あああ〜!!! 越前〜〜〜〜〜!!!! 戻って来〜〜〜〜〜〜い!!!」
 「みんな!! 自分の言ってることわかってるか!?」
 完全にパニックを起こす一同をよそに、先ほど中身をぶちまけたカゴを持ち不二に近づくリョーマ。
 「何かな? 越前君」
 「何かは・・・・・・言わなくてもわかるでしょ?」
 そんな中全く驚かずに聞き返す不二に、妖艶な笑みを浮かべてリョーマが囁く。まるで愛の睦言のようなそれに、顔を赤くしたり青くしたりして全員が注目する中―――
 がん!!!
 リョーマが持っていたカゴで思い切り不二の頭をぶん殴った。
 世にも冷めた眼差しで座り込んだ不二を見下ろし、一言。
 「最っ低」
 「―――何が?」
 角で殴っただけあってさすがに効いたらしい。頭を押さえながらもしかしながら不二は平然と訊いてきた。
 「とぼけるつもり?」
 「お、おい・・・! 越前・・・!!」
 怪しい雲行きを感じて何人かが止めに入ろうとするが、全く事情がわからない。ためらう間にも、2人の話は続いた。
 「よくよく考えたらさ、最初っからおかしかったよね。この騒ぎ」
 「最初? どの辺りが?」
 「ウチ、アンタはよく知ってると思うけど目の前空き地なんだよね。あの写真、撮ろうと思ったら隣の通りからしか撮れない」
 「ああ、なるほど」
 「けどそれっておかしくない? つまりあの写真を送った『匿名希望の誰か』ってのは俺の家知ってることになんじゃん。知らなきゃ隣の通りになんて行こうと思わないでしょ? 単純に俺たちの―――ていうか周助の後つけてんだったらどこの家に行くかわかんない以上同じ通りに行くだろうし、俺と周助があそこにいたのは1・2分。その間に隣の通りまで回ることなんてまず無理」
 「うん。理屈として成立してるね」
 「俺が誰だかわかってなおかつ家の場所まで知ってんだったら俺と周助の事なんてとっくに知ってるって考えられんじゃん。つまり容疑者は俺たちの知り合いの誰か。青学部員か、アンタたちの同期の人。あるいは―――アンタたち元レギュラー。
  けど、そん中でつい最近俺たちの事を知った人は多分0。前々からみんな知ってたでしょ? アンタが言いふらしたんだからねえ。
  なのになんで今まで何もしてこなかったワケ? 逆に言えば、なんで今更そんなことするわけ?」
 「その言い振りだと、つまりその『犯人』はだって言いたいのかな?」
 でなければ殴ってなどいないだろうに。
 「『言いたい』んじゃなくて『言って』んの。今回の騒ぎ、一番得したのアンタだよね? 周助」
 ハッキリそう言い切るリョーマに、元レギュラーらがはっと気付く。確かに。これで不二は人前でも遠慮なくリョーマに構う理由を得た。この騒動、終わってみれば唯一得をしたのは不二本人ではないか。
 「う〜ん。確かに動機は十分だね。けど方法は? あの写真、まさか僕が撮った、なんていうわけはないからねえ。さすがに」
 「言い逃れするつもり?」
 「まさか。素朴な疑問だよ。
  ―――まあ、そっちに関してももうわかってるみたいだけどね」
 くすりと笑い、立ち上がる不二。リョーマはそれを目を細めて見上げ―――そしてその視線を移動させた。
 「英二先輩」
 「んにゃ? 俺?」
 「殴っていいっスか?」
 「うええ!!?」
 カゴを再び持ち上げ静かに宣言するリョーマに、目を見開いて英二が自分を指差した。
 「にゃ、にゃんでいきなり俺!? 不二怒ってたんじゃにゃいの!?」
 「最初の日、俺はたまたま桃先輩の家にいたから騒ぎに巻き込まれずに済みましたけど・・・・・・よくよく考えたらあれのきっかけって英二先輩でしたよねえ?」


 ―――『ねーねー聞いて! 俺や〜っとあの新作ゲーム買っちゃったよ!!』
    『でさ、明日部活ないっしょ? おチビも混ぜてこれからやんにゃい?』


 英二のあの発言がなければ間違いなく騒動当日リョーマは自分の家にいた。
 「そ、それはただの偶然で・・・・・・!!」
 「偶然。ふ〜ん。いいっスよ。先輩がそういうんなら『偶然』で片付けても。
  で、周助の居場所がわかった、って最初に言ったのも、先輩でしたよねえ・・・?」
 「ゔ・・・! ほ、ホラ! あれはちゃんと説明したとおり姉ちゃんが―――!!」
 「その割にはやたらと急でしたよねえ・・・」
 「だ、だってホントに急に決まったんだし・・・・・・!!」
 「で、そんなに急に決まったってのに雑誌と契約してるだけの先輩のお姉さんが知ってたんスか」
 「ぐ・・・!! ま、まあそれはたまたま雑誌会社に知り合いがいたって事で・・・・・・」
 「そういう言い訳ならもっといいものがありますよ。『周助にあらかじめ聞いて知ってた上で、俺が逃げられないようギリギリまで黙ってた』。
  ―――ついでに周助のお姉さんも知ってたんじゃない? じゃなかったらあんな都合よくヒマがあるわけないでしょ? いつも仕事とかデートとかで忙しそうなんだから」
 ズバズバと言われる事に、英二の目も首もどこかを頼りなく泳いでいた。
 数秒し、ぽんと手を叩く。
 「あ、けどよくよく考えてみたら不二はともかく俺はメリットないじゃん」
 「メリット、ね・・・」
 にっこり笑って言う英二に、数回頷くとリョーマもにっこりと笑ってみせた。
 その笑顔に、凍りつく英二の前で、
 いきなり標的を変えたリョーマが、横を向き、さほど遠くにいるわけでもないに向かって口に片手を当てて叫んだ。
 「大石せんぱ〜い!」
 「え!? 俺!?」
 「せんぱ〜い! 最近英二先輩から何かもらいませんでした〜?」
 「え・・・えっと・・・・・・」
 「に゙ゃ・・・!!」
 「例えば・・・・・・今度の周助の試合のチケット、とか。『苦労して何とか手に入ったから一緒にデートしよv』とか言われてもらいませんでしたあ?」
 「え・・・、そ、それは・・・・・・」
 その場を見たかのような、一言一句間違っていない完璧な説明に大石の目もまた泳ぐ。大体のからくりは読めた。だがここで同意すれば恋人を売るようなものでもある(全面的に英二が悪いような気もするが)。
 悩む大石に詰め寄り、涙目で訴える英二。
 「もらってないよな!? もらってないよな!? 大石!!」
 そのあからさま過ぎる態度に、俯いたリョーマが地の底から響くような声で頷いた。
 「・・・・・・・・・ふううううううん」
 「はっ!!!」
 「やっぱあげたんだ・・・・・・」
 「な! な〜にいい言ってんんだよおチビいいい。俺がそ〜んな如何にも買収っぽい手でかわいい後輩売るワケないじゃん。あっはっはっはっは」
 冷や汗をダラダラ流して否定する英二を完全に冷め切った目で見やり―――
 リョーマは視線を元の人に戻していった。
 「買収しやすい友達がいてよかったね、周助」
 「あはは。そうだねえ」
 『・・・・・・・・・・・・・・・』
 静かな空間に、英二と不二、首謀者2人の笑い声だけが響く。
 「ど、どういう事だ? 越前・・・・・・」
 まだわかっていないのか―――だがそれでも予想はついてきたか、どもりながら桃がリョーマに尋ねた。確かに英二と始終行動していた桃はむしろわかりにくいだろう。最も近くでリョーマを心配していた(ように見えた)英二が実は問題を引き起こしている側だったなどとは。
 どうやら回りも似たようなものらしい。記者やらヤジウマやらもお互い顔を見合わせ首を傾げている。こちらはこちらで蚊帳の外にいたのだから仕方がない。
 「だから!! 今回の騒動はぜんっぶそこで笑ってる2人が仕組んだってコト!! 俺たちは全員あの2人の用意した舞台で面白おかしく踊ってただけ!!!
  いきなりデートの約束してわざとキスして! それを隠れてた英二先輩に写真撮らせて!! その写真匿名希望でばら撒いて騒ぎ起きたら盛り上げるために雲隠れして! でもって俺のこと上手く誘導して記者に捕まらないようにして!! クライマックスで一番盛り上がるようにあの会場連れて行ったの!!」
 『えええええええええ!!!!?』
 「け、けどまたなんで・・・・・・」
 「ンなの俺が知るわけないでしょ!? どうせ『熱愛宣言』の舞台準備だとか言うつもりなんじゃないの!!?
  ―――だから逃げんなあああああ!!!!!」
 説明の合間にこそこそと逃げようとしていた英二に、左手でカゴを持ち上げぶん投げるリョーマ。完璧なコントロールで放たれたそれが頭を激突し、英二が膝からくず折れた。
 くは〜、くは〜っと荒い息でそれを見やるリョーマの肩にぽんと手が置かれる。
 「まあまあリョーマ君落ち着いてv」
 「興奮させてんのはアンタだ!!!!!」
 どごすっ!!

 さらに持っていたテニスラケットのグリップ部分で容赦なく殴り倒す。
 今度こそ完全に沈黙した不二を見下ろし、怒りをすべてぶつけるべくリョーマは思い切り叫んだ。
 「周助なんて大っ嫌いだ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」



End



















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 ようやく終わりましたこの話。皆様長々とご苦労様でした。さて・・・・・・
 前回『起承転結。ラストはオチだ!!』と言いましたが(正確には『書きましたが』)、オチのあとには得てしてオマケがつくものです。
 というわけで!
 実はまだこれ終わってません。あと1話続きます。フォローしてないあの部分やらその部分やらについてですね。では、長々ついでにもしよろしければあと1話お付き合いください。
 ―――ちなみに、越前宅の立地条件はウソ八百です。アニメ基準とはいえさすがにそこまで判明した回はないような・・・・・・もしあったらすみません。

2003.4.14