2.取ったら殺すよ? 英二
「お〜し取った〜〜〜!!!」
「くっそ〜・・・・・・!!!」
笑顔で手をぶんぶこ振る英二と、その足に踏まれ歯軋りするリョーマ。
喜びのまま、英二が手にしたボールに目をやり―――
「に゙ゃ・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!」
<取ったら殺すよ? 英二>
書かれたメッセージに、思い切り硬直した。
「・・・へ〜え。良かったっスね、英二先輩。丁度いい誕生日イベントじゃないっスか」
「え、いやあのこれは―――!!」
「じゃ、さっさと行って来てくださいね」
ドン―――!!
「にゃああああああ!!!!!!」
言葉とともに、客席から突き落とされた。
かろうじて着地寸前で体勢を立て直し、頭からの激突だけは避ける。前に転がり勢いを流し、ついでに起き上がりざま客席を指差した。自分を見下ろすリョーマを。
「何すんだよおチビ!!」
「なんだ。生きてんじゃん」
「・・・・・・精神的かつ肉体的に殺し決定? 俺って」
「「もちろん」」
ハモる、2人の声。
ぎぎぎぎぎぃ・・・と振り向く英二。その後ろでは、もちろん笑顔の不二が・・・・・・。
「じゃあ英二、しあい、しようか・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ヒュ――――――・・・・・・・・・・・・
このシーズン、相応しいのかいまいち不明な冷たい風が流れていく。
その音すらうるさく感じる、無音の世界で。
―――ぽん、と英二が手を叩いた。
「そういえば今日お前誕生日じゃんv」
「あからさまに思い出さないといけないものだっけ?」
「というわけで俺からのプレゼントなんだけど」
「随分と唐突だね」
「俺はおチビをあげようと思う」
「はあ!?」
「へえ。それはいいね」
ワケのわからない理屈に驚くリョーマと喜ぶ不二。とりあえず不二の機嫌を『直した』事に安心し、英二は再び上へと向き直った。
上を向き―――
「ああ!? 俺が言う事に従えねえってのか!? いい度胸じゃねーか!! おら!! 下りて来いてめえ!!」
「・・・・・・英二先輩、めちゃくちゃヤンキー入ってます」
「だから止めようって言ったのに・・・・・・」
その後十数分にわたる協議? の末。
よくよく考えずとも誰の意見も対立していなかった彼らは、一応それでもリョーマが折れるという形を取って和解した。
―――vsリョーマ戦