Who are Star ? Our Star ?
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〜キャスト発表 毒を喰らうのは誰?〜
前回のことでわかるように、青学テニス部員(主にレギュラーら)もこの映画に出る。しかも役者ら差し置いて最高準レギュラー(いやドラマではないのでこの言い方は不適当であろうがつまるところ準主役級)の扱い。
―――つまり、この映画にはそれだけ予算がなかった・・・・・・のではもちろんなく、見た目ばっちりテニスも上手いレギュラーらを活用しない手は無い! と考えたスタッフらの当然の判断である。
そして、準レギュラー扱いを受けたのはこの2人。男子テニス部どころか学園のマスコットにして逆らいたくないヤツNo.1&2の腹黒36コンビ。
その上このテの話にありがちなように、その役柄は―――ヒーローのライバルにしてヒロインに迫るレギュラー2名!
・・・・・・・・・・・・血の雨どころか血の嵐が吹き荒れる事必至なキャストであるが、もちろんそんな事は知らないスタッフらによって既に決定事項と化していた。
さて、
・ ・ ・ ・ ・
役柄も発表されずに配られた台本。練習風景だけを撮るなら青学部員らになどまとめて1冊渡せばいいのになぜかレギュラー陣には直接手渡された。
『?』
お互い目配せをして開く。不二の脇からさらに今回『ただの部員その1』扱いでもちろん台本などもらえなかったリョーマが覗き込み―――
『は・・・・・・・・・・・・?』
初っ端1ページ目に書かれていたキャストに、全員が目を点にした。
「なんで、わざわざ僕たちの名前が・・・・・・?」
「てゆーかこの順番って・・・・・・もしかして俺と不二ってめちゃめちゃ重要どころの役じゃん?」
書かれたキャストは上から順に、主役の明石信也と舞、そしてなぜかその次に英二と不二。スクリーン上では場合によっては重要な人がラストに書かれたりもするのだろうが、台本で同じ事をしているとも考えにくい。というかこの台本で一番最後に書かれているのは<エキストラ=青春学園中等部テニス部>だ。
「何の役なワケ?」
心底嫌そうな声で呟き、リョーマが勝手にぱらぱらめくっていく。なおそこから少し離れたところでは同じ予感にかられた大石がこちらもぱらぱらめくっていった。
2人の役名があり―――その下に恐らく素人(当り前)の彼らのためだろう。わざわざちょっとした説明が書いてあり・・・・・・
『<ヒロインに惚れる>ぅ!!??』
そこで見つけた1センテンスに、4人の声がぴたりとハモる。
「ざけんな! やってられっか!!」
「ああ全くだね!! 僕らの人権侵害だ!!」
台本を地面に叩きつけ喚く英二。不二も彼にしては珍しく開眼で怒っていた。その迫力たるや後に全員が口を揃えて言う。―――あれは観月戦以上だった、と。
その恐ろしい剣幕に説明し様としたスタッフも逃げ出し、
逃げた先では『ふざけるな』と怒られ挙句に『人権侵害だ』とまで言われた<ヒロイン>舞が一人涙していた。
2人が激怒するのも―――部員らにとっては当り前だった。不二はリョーマと、英二は大石と現在付き合っている。それなのに見も知らなければ(いやテレビで見た事位はあるが)興味もない女相手に『君が好きなんだ』などと歯の浮く寝言をホザかされ、しかもテニス部を舞台にする以上その様をお互いの恋人に見られる。
これでは両者公認で行なわれる浮気ではないか!! ―――秘密ならいいってわけじゃないけど!!
暴動確実100%間違い無しの最悪ミスキャストに大石だけでなく誰もが胃を抱えて屈みこんだ。
―――のだが、
「ふ〜ん。<ヒロインに惚れる>ねえ・・・。
いいんじゃないっスか? 一応『カワイイ』らしい子に『君が好きだ』なんてボケかませて」
薄く笑ってリョーマが言った。もちろんその台詞を大爆発寸前の状態でかろうじて吐き出しているのは、トゲしかない言葉にヒクつく頬、むやみに荒い息と髪がべったり張り付く汗、そして割と分厚い台本をぐしゃぐしゃに握り込んでいるその姿から容易に想像が付く。
もちろんリョーマが嫌味を言うのはヤキモチを妬いているとバレたくないから。そんな頑張る姿は誰の目にも可愛らしく、もちろんこの人不二にとっては『も〜v 越前君ってば〜vvv』と今すぐ抱き締め顔中にキスして押し倒したい位の可愛さなのだが・・・・・・・・・・・・
「ああ、そう?
―――まああの程度の子相手じゃ『君が好きだ』なんて台詞ギャグにもならなさそうだけど。
じゃあそれで頑張ろうかな」
直接反対してくれなかったリョーマへのささやかな仕返しとして、ころりと180度意見を変更する。
ビシビシビシィ―――!!!!!!
リョーマの周りで発生した何か。半径2m以内にいた者を無差別にぶち倒すそれを気にせず、不二がにっこりと笑った。
「それでいいよね? 英二」
「てめえひとりでやれ」
即答。これに関してはもちろん英二も譲れない。
が、英二は英二でさらに別の障害を抱えていた。正確には英二の恋人であり、同時に副部長としての役職を預かる大石は。
「英二、確かにお前には辛いかもしらないが頼む! やってくれ・・・!!」
―――でないと撮影が、そして部活が進まない。
もちろんここは口に出さないが、英二の肩を掴んで真剣に言う大石に、
「大石・・・・・・!?
だって俺、大石がいるからやりたくないって言ってんだよ・・・!?
なのに大石は平気なの・・・・・・?
大石は、俺があんなとれえガキに『君が好きだ』なんて何血迷ったんだかワケがわかんねえ台詞言ってて平気なの・・・・・・?」
うるうると大きな瞳に涙を溢れさせ、それでも毒舌絶好調で英二が返す。同じ事を言ってるのになぜか繰り返される毎にどんどん悪質化する言葉の暴力に舞が大泣きをするが、それは完全に無視され―――
「英二、大丈夫だ。俺は信じてる。
お前がたとえ『君が好きだ』なんて言おうとああきっとこの暑さで錯乱してるんだな、って思うから。
だから大丈夫だ。思い切って行って来い! 俺はいつもみたいにずっと見守ってるから! それが俺達だろう!?」
「大石・・・・・・!!」
「・・・・・・さり気に今の発言って、一番失礼だったの大石先輩だと思うんスけど・・・・・・」
「まあいいんじゃない? 彼らはあれで幸せなんだから」
イチャつくバカップルにケンカしていた事も他所に突っ込むリョーマ。頷く不二と一瞬瞳が合い―――
「ボケ、期待してますよ」
「う〜ん。じゃあ君に笑ってもらえるように精一杯頑張るよ。ギャグ」
こうして、両者公認の浮気―――ではなくお笑い劇場は幕を開けたのだった・・・・・・。―――4の片割れへ
毒舌が冴え渡ってるのは実は大石!?
そんなこんなで始まったお笑い劇場(誤)、さり気に今回大石も真っ黒になりそうだ・・・・・・!!
2003.9.12