Who are Star ? Our Star ?
4の片割れ
〜不二様の 嬉し恥ずかし ナンパ編 1/2前半〜
さて、映画製作が進む中で、さっそく不二の出番が回ってきた。
「じゃあ君、ここからやってみてね」
「はい」
頷き―――台本に目を落としたまま首を傾げる。
悩む事、暫し・・・・・・
「ねー! 英二―!!」
結局わからなかったので尋ねる事にした。
「にゃに〜!?」
コート内にて練習していた(こっちは本物の部活)英二が顔を上げてくる。そんな彼に、問う。
「ナンパってどーやんのー!?」
どがしゃん!!
不二の言葉に、部員(顧問含む)は誰しもコケざるを得なかった。
その中で、最初に立ち直った英二が声を荒げて怒鳴りつけた。
「俺に訊いてんじゃねーよ逆ナンキングが!!」
英二の言葉に誰もが頷く。本気で高いのだ。不二の逆ナン率は。
―――その彼がなぜ今更そんな事を問う?
「逆ナン・・・?
いつからそんなアダ名が付くようになったのさ・・・・・・?」
「だったらそこらの人通り多い街中歩いてみろよ。1時間といわず5分で証明されんだろ?
ああ、男のやり方知りてーんだったら私服ででもいりゃ声かけられんじゃねえの?」
「制服でも別に声かけられるけどね」
「あ、やっぱ? 俺が男に声掛けられたって言うと姉ちゃんも兄ちゃんも『男らしい服着ろ』って言うんだけどさ、学ラン以上に男らしい服って何よ?」
「ああ、それは言えるね。こっちが男だってわかってんのに声かけてくる人って多いからね」
「ま、何にしてもうぜー事には変わりねーか」
「そうそう。ほんっと邪魔だよね〜」
あっはっはと笑顔でかわされる恐ろしい会話に、ついつい聞くともなしに聞いていたスタッフらが5歩ほど引くがそれはともかく。
「―――じゃなくてね、ナンパ『する側』の気持ちってわからないかなあ?」
「俺が知るワケねーだろ?」
「・・・・・・・・・・・・やっぱ駄目か」
綺麗に即答され、不二が肩を竦めた。今からやるシーン、『ナンパ』というほどのものでもないのだが何でも不二扮する―――もう名前決めは面倒なのかそのまま『不二』なのだが―――が舞(こちらもそのままらしい)に、「今から帰り? じゃあよかったら一緒に帰らない? この間凄く雰囲気のいい喫茶店を見つけたんだ。それで出来れば君と・・・行きたいな、って思って・・・・・・」といった感じの台詞を吐くのだが、
「んじゃいつもおチビにやるみたいに誘ったら?」
「冗談じゃない。出来るワケないでしょう?」
「そりゃそっか」
不二があくまで『ナンパ』に拘る理由―――それは、彼は『ナンパ=さしてどうでもよさげな相手に気軽に声をかける手段』だと認識しているためである。常に100%全力で本気な対リョーマと同等にやれと言われてその通り出来るわけがない。
「困ったなあ・・・・・・」
「あ、だったらさ、
―――そこでウロチョロしてるミスター軽薄、自称ナンパ師に聞いたらいーんじゃねえの?」
「え・・・・・・?」
ミスター以下略で指される人物はともかく、その前に付けられた謎の言葉に不二が辺りをきょろきょろ見回す―――
―――までもなく。
「ひっどいな〜。それって俺の事?」
ギャラリーの中から白の学ランに明るいオレンジ色の髪というなかなかに目立つ見た目の少年が現れ出た。
「あれ? 千石君。どうしたの?」
「や♪ 青学のみなさん。
いっや〜。青学で面白い事やってるって聞いたからさ、や〜っぱここは見に行かなきゃ駄目っしょ。
―――ってそう誘ったんだけどみんな来てくれなかったからちなみに俺今1人」
「それは・・・・・・来ないだろうね」
千石属する山吹中は、関東大会にて不動峰には破れたものの、その後の5&6位決定戦で勝ちあがったため青学同様現在全国大会へ向けて猛練習中・・・・・・の筈である。近頃撮影のおかげでいろいろ抜けまくった青学を見ているとついついそんな事も忘れがちだが。
「んで? 話聞いてたけど誰ナンパすんの? てゆーか不二くんがわざわざナンパするって事はリョーマ君と別れたの?
ラッキ〜♪ んじゃ俺さっそくリョーマくんにアタック―――」
と早くもコート脇にて練習中のリョーマ―――ただし視線はともかく集中はモロにこちらへと向いていた―――へと駆け寄る千石、
・・・・・・の体がいきなり硬直した。
いつの間に移動したか(というか今のタイミングでは瞬間移動でもしない限り不可能な筈なのだが)、後ろから不二に首をがっしり掴まれて。
千石の首を片手でぎりぎり締め付けながら、不二が笑顔で(だと思う。後ろを向けない千石には確認のし様がなかったが)言った。
「あはは。千石、やっぱり君のその頭は外見同様ニワトリなのかな?
この間さんざん体にも心にも教え込んでおいてあげたのに、キミはもう忘れちゃったみたいだね?
―――どう? もう一回喰らってみる?」
何が怖いって、場所を知っていながら不二は決して頚動脈や気道を押さえつけようとしないところである。おかげで気絶は一切出来ず、ゆっくりと囁かれる間ひたすらず〜〜〜っと痛い思いをし続けなければならない事である。しかもヘンなツボは押さえているらしい(文字通り)。『死んだ方がマシ』とは正にこの事だ。
「やっだな〜。軽〜い冗談だってv 俺が不二君のモノ取るわけないでしょvv」
触らぬ不二様にたたり―――まあ98%くらいにはまけてくれるかもしれない。
痛みで痙攣する体で、千石もまた笑顔でぱたぱたと手を振った。
「んで? 誰ナンパすんの?」
さっさと話題転換する千石に、不二も軽く笑って手を外した。特に何もしない―――が、振り向いた千石がずざざざざっ!! と10m以上引いたところから、さすがにすぐリョーマに手を出す根性はないようだ。
とびっきりの笑顔を消し、不二がいつもどおりの笑顔で向こうを指差した。その場に佇む『ナンパ相手』舞を。
「へ〜。テレビで見るけど可愛い子じゃんv」
そちらを見て口笛を吹く千石。次の瞬間には先程の不二同様何mも離れた彼女のすぐそばへと来ていた。
「始めましてv 俺山吹中の千石清純って言います。今ヒマ? ならさ、俺とデートしない? こっの間すっごく雰囲気のいい喫茶店見つけたんだよね。それで出来たら君と行きたいな〜・・・・・・な〜んて思うんだけどさ、どう?」
―――念のため言うが千石は一切台本を読んでいない。
「え? あ、あのその・・・・・・」
演技でされた経験は多々あれど、実際にナンパされた経験はほとんどないのだろう(温室育ちっぽいとの偏見)。普通に誘われ、素で戸惑う舞。
それを見て―――
「お〜。さ〜っすがナンパ男。行動早え〜な」
「なるほど。ああやればいいのか」
「・・・・・・。今更ながらに言っとくけどさ、
アレは止めとけ」
「え? 何で?」
首を傾げる不二に、英二は男らしい泥臭げな仕草で軽く苦笑した。
「お前のイメージに全然合わねえ。しかもあんなんやろうもんならおチビが拗ねる」
「そう?」
そう訊き返す不二は気付かなかった。千石がナンパした途端何を想像したかリョーマが半眼で大口を開け思いっきり空振りした事を。
「―――まあ、とりあえずお手本は見せてもらえたし、ああいった感じで行けばいいんだよね」
「お〜! 不二頑張れよ〜!!」―――4のもう片割れへ
なぜか千石さん乱入。そして気が付くとメイツ(とリョーマ)以外の青学メンツが全くでていない事が判明。自覚はしてても反省0でこの先も進みそうです。あ、大石は出るか。
2003.9.12
ちなみに余談。千石がかつて不二に何をされたのか・・・・・・・・・・・・それはとても怖くて口に出来そうにありません。しかし千石のリョーマへのアタックっぷりなら抹殺候補の上位にランクイン間違いなしでしょうね。