Who are Star ? Our Star ?
4のもう片割れ
〜不二様の 嬉し恥ずかし ナンパ編 1/2後半〜
そしていよいよ撮影が始まった。
・ ・ ・ ・ ・
「―――舞ちゃん!」
「あ、不二先輩・・・・・・」
「ああ、嬉しいな。僕の事知っててくれたんだ」
「先輩は女テニの間でも有名ですから・・・・・・」
「どんな理由で有名かは―――あんまり聞かないほうがいいかな?」
「え!? そんな妙な理由ではないですよ!!
あの、ただ・・・・・・
先輩が・・・凄くかっこ良いなあ、ってみんなで言っててその・・・・・・」
「『みんな』? 君は?」
「え・・・・・・?」
「君はどうなのかな?」
「え・・・と、その・・・・・・//」
「―――っていうのはまあ冗談だけどね、
今から帰り? じゃあよかったら一緒に帰らない? この間凄く雰囲気のいい喫茶店を見つけたんだ。それで出来れば君と・・・行きたいな、って思って・・・・・・」
「先・・・輩・・・・・・」
「『不二』。
出来れば『先輩』って付けないで欲しいな。僕は直接君の先輩じゃないよ?」
「で、でも3年ですし、テニス部の―――」
「ふふ。じゃあ普段はそのままでいいから、出来たら二人の時は付けないで欲しいな」
「えっと、じゃあ―――
不二、君・・・・・・」
「うん。舞ちゃん。
で、どう?」
「いい、よ・・・・・・。
―――あ! すみませんいきなりこんな口調で!!」
「いいよいいよ。僕もその方が嬉しいな」
「不二君・・・・・・・・・・・・////」
優しく微笑む不二に、顔を赤らめる舞。
そんな―――
―――聞く者読む者書く本人が思わず身震いしたくなるほどのさっむい芝居を続ける2人を見て・・・・・・。
・ ・ ・ ・ ・
「不二ってさ・・・・・・
つくづくフザケてんのに真面目に見せんの上手いよね」
しみじみと放たれた英二の一言に、練習をぼっぽって野次馬根性丸出しで覗き見るレギュラーらは全員大きく首肯した。
「目、開いただけ、っスよね・・・・・・」
「台詞も普段のイントネーションと比較して棒読み一歩手前だな。断言するが台本は1度しか目を通していない」
「雰囲気的にも『か〜。タリ〜。さっさと終わらせて部活やりて〜』って感じめちゃめちゃ出てるよね」
「英二、今の訳し方はさすがに不二に悪いんじゃ・・・・・・」
好き放題に感想を飛ばす桃・乾・英二、ついでに大石。
ははは、と乾いた笑いを浮かべつつ、河村が首を傾げた。
「でも、不二は一体さっきの千石の様子から何学んだんだろう・・・・・・?」
「『ナンパ』なら適当にやって大丈夫だ―――そんなところじゃないっスか・・・・・・?」
「にゃっはっは。言える言える。
にゃ〜おチビ〜。不二ってばホント笑える―――」
眉を潜める海堂に英二も大笑いし―――
振り向いたその先に話し相手はいなかった。
「あり? おチビ?」
「―――越前なら先程出て行ったぞ。あの様子からすると恐らく不二の『演技』に居たたまれなくなったのだろう」
『何で止めないんだよ/スか!?』
フェンスの入り口を指しそう答える手塚に、全員が綺麗に突っ込んだ。
が―――
「外部から説得してどうにかなる問題でもあるまい。それとも越前にあれをずっと見ていろと強制するのか?
それよりも―――
―――今は部活中だぞ。誰が見物していていいと言った・・・・・・?」
『ゔ・・・・・・』
手塚の声のトーンとテンポが1ランクずつ下がる。それが指し示すのはただ一つ。
「全員グラウンド20周!!」
『そんな〜・・・・・・』
こうしてコート内にはため息をつく手塚のみが残され・・・・・・
・ ・ ・ ・ ・
「―――あれ? みんなは?
またグラウンド?」
リハーサル後、本番を前にしてのちょっとした休憩時間にコートへと戻ってきた不二。一人肩を落とす手塚に軽く微笑んだ。
「ああ。練習をせずお前たちの見物ばかりしていたからな」
「へえ。
・・・・・・越前も? それは珍しいな」
今ここにリョーマの姿もない。まだ練習中である以上いない理由は走らさせられているか、それとも―――
「いや。越前はお前の姿を見ていたくないと判断したのだろう。一人先に出て行ってしまった」
「何で止めないのさ!?」
誰しもするらしい突っ込みを不二もまたする。が、やはり手塚は冷静なもので・・・
「外部から説得してどうにかなる問題でもあるまい。それともお前は越前に今のをずっと見ていろと強制するのか?」
「くそっ・・・・・・!!」
手塚の正論に、不二はまず普段なら絶対にしない悪態をついて―――
その間も惜しいとばかりに即座に踵を返した。
心当たりがあるのかないのか、全力疾走する不二を見送り、
(ふざけているのを真面目に見せるのが上手い、か・・・・・・)
手塚は先程皆が言っていたことを改めて反芻させた。
確かに不二はふざけているのを真面目に見せるのが上手い。そして同時に真面目にやっているのをふざけて見せるのもまた。
不二は『嘘』と『本当』の区別を曖昧にさせる―――そう評するのが一番正しいのかもしれない。
「不二の『本気』、か・・・・・・」
舌打ちする不二の顔に浮かんでいたのは・・・・・・焦り、苛立ち、そして怯え。
初めてだろう。不二がこれだけの気持ちを人前にさらけ出すのは。
だからこそ―――
「その気持ちを直接越前にぶつけろ。それが何よりもの『説得』だ」
今はもう姿の見えなくなった友人の影を目で追い、そして自分と同じ方向を寂しげに見つめる舞を一瞬だけ見やり、
手塚は、そうはなむけの言葉を送った。―――5へ
―――『5へ』と案内しておきながら実は『4と5の中間』という話があります。主に今回載せられなかったりョーマ重視で文字通りこの後、2人が仲直りする話です。結局不二はどうやってリョーマを説得したのでしょう?
はっきりUpさせていないのは何かをやっているからです。いえ、気持ち重視にした結果肝心の部分片っ端っからすっ飛ばし、全っ然裏に持って行く意味がなくなったのでこちらにそのまま上げられることになった話ですが。それでも一応苦手な方はご注意ください。なお5はすっかり仲直りして今度は大菊編です。
ちなみに中間話を読んでみたいという方は、あとがき最初の『』内、案内箇所からいけるようになっています。そちらがシリアスだったため今回ラストはシリアスに。しかしこのシリーズ特にこっち側の煽りを受け、結局全体的にギャグに傾いてます。
2003.9.13
しかし・・・・・・手塚がなぜか妙に鋭い!? にぶちん的イメージがあったのに(爆)!