Who are Star ? Our Star ?


4と5の中間
〜交わる心 交わる躰〜




 
 「ねえリョーマ君、機嫌直して」
 「やだ! 絶対ヤダ!!」
 先程の一件にて、舞にナンパする不二を見て、「そんなの見たくない!」とばかりに練習をほっぽり出して逃げ出したリョーマ。手塚からそれを聞き、不二もまた撮影を放り出してリョーマを探し―――
 ―――ようやく部室のベンチでフテ寝するリョーマを発見したところだった。
 「こんなのただのお芝居だから、ね? 練習に戻ろう?」
 「やだ! そんなん信じない!!」
 不二を見もせずリョーマがひたすらダダを捏ねつづける。
 その耳に、長いため息が届いた。
 「〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 わかっている。自分がどれだけ我侭なことを言っているのか。
 そもそも撮影に―――『ヒロインに惚れる役』というのに不二は反対していた。
 それを賛成に変えたのは・・・・・・一緒に反対出来なかったひねくれ者の自分。
 なのに・・・
 何をやるかなんてわかってた筈なのに、それなのに今更やって欲しくないだなんて・・・・・・・・・・・・
 唇を噛み締め、必死に泣くまいと堪える。
 そんなリョーマを見下ろして―――
 (可愛いよリョーマ君vv 可愛過ぎるよ・・・・・・vvv)
 不二は微笑ましくてたまらない光景に笑いそうになるのを懸命に堪え、今度は息を止めた。ちなみに先程は細い息を吐いて堪えたのだが・・・・・・。
 「ちょっと隣いいかな? リョーマ君」
 「駄目」
 そう言いつつ、ベンチに腰掛けようとする不二にのろのろと体を丸めて場所を譲った。
 「ありがとう」
 嬉しそうに礼を言う不二を、両手の隙間からちらりと見―――そして嬉しそうに微笑む不二と目が合い、慌てて逸らす。
 小さく揺れるリョーマの頭。その上を流れる細い髪を梳く不二。その気持ち良さにリョーマの目がとろとろと細まり、ガードも緩まる。
 のんびりとした時間がどれだけ経ったか、
 「ねえリョーマ君、僕が彼女を誘うのはそんなに嫌?」
 「イヤ・・・に、決まってんじゃん」
 蒸し返される会話に、再びリョーマの体が小さく縮こまる。
 「僕が信じられない、って、さっきそう言ったよね?」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「僕は本当に信じられない?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「僕が彼女をそのまま好きになるって、そう思う?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だって!」
 畳み掛ける不二の質問。今まで黙っていたリョーマがようやく起き上がった。
 「だって! アイツ一応可愛いし! 周助に絶対気ぃあるし!! それに少なくとも見た目上は素直そうだったじゃん!!」
 今までぐちゃぐちゃに溜まっていた気持ちを吐き出す。その最中でも相手をけなす事を忘れない辺りがさすがリョーマ。
 閉じた瞼を、そして全身を震わせ、それでも自分に泣き付くような真似はしない誇り高きこの恋人に不二が苦笑した。
 リョーマの頬を撫で、目頭に溜まり始めていた涙を拭き取る。
 「何を言っているのさ。君の方がずっと可愛いよ。それに今自分の気持ちをちゃんと僕に言ってくれてるじゃないか。
  それとも何かな? 実は君は僕に気はないのかな?」
 「そんな事あるワケ―――!!」
 目を見開き、不二に迫るリョーマ。膝立ちをし僅かにバランスを崩す彼の背に手を回し、引き寄せる。
 「わっ―――!!」
 自分に倒れかかるリョーマの体をぎゅっと抱き締め、不二がその耳元に囁きかけた。
 「僕は、芝居に騙されて自分を見失うほど可愛い性格じゃないんだ。それでも信じてくれない?」
 耳元で響く一言一句。頭の中に心の中に広がる言葉達は、不思議な力を持ってして自分を酔わせる。
 「それはわかってるけど・・・・・・」
 せめてもの意地で言った嫌味をも飲み込んでしまうほどその声の力は大きくて、
 「でも、それでも・・・、それでも怖い・・・・・・」
 丸裸にされたリョーマの心が、紛れもない『彼の真実』を紡ぎ出す。
 「まだ撮影続くんでしょ・・・? それじゃわかんないじゃん・・・。今日は何にも思わなくっても明日は? 明後日は? ずっと続いたらその内変わるかも―――」
 気の向くまま、思うがままに心をさらけ出すリョーマ。その体が押し返される。
 「ほら、やっぱり・・・・・・」
 こんな俺、嫌なんでしょ?
 そう言おうとした、その言葉は―――
 ―――不二の口の中に消え去った。
 「ん・・・んぐ・・・・・・」
 性急なキスに、それでも必死についていく。離されないように、自分からも不二の首に手を回してしがみついて。
 「―――ごめんね、リョーマ君」
 離れたキス。それでも唇が触れるほどの至近距離で、そんな事を呟く不二。
 呟くと同時―――
 「な―――!?」
 リョーマのハーフパンツが一気にずり下げられた。
 「周助!!」
 いきなりの事に真っ赤な顔でクレームを飛ばすが、それを無視され背中にあった筈の手がその下へと伸ばされていた。
 「ん・・・や・・・・・・!!」
 指の感触を敏感に感じ取り、びくりと脚が痙攣する。慣らしをするとかそれ以前の問題だ。そんな雰囲気の全くなかった状況下で行なわれたこの行為は、強姦に等しい恐怖をリョーマに与えつけた。
 逃げ出したくても抱き締められたこの体勢では圧倒的にこちらが不利。それがより恐怖を煽り立てる。
 でも―――
 「止め・・・! 周―――!!」
 「ごめん! でも、すぐに終わるから!! お願い、少しだけでいいから我慢して!!」
 常にはない不二の真剣な、そして悲壮な叫びに、リョーマの抵抗が止まった。抱き締める腕の震えが伝わり、ようやく『それ』に気付く。
 ―――不安なのは、自分だけじゃなかった。
 たとえ演技とはいえ、恋人の目の前で他のヤツを誘い、愛の告白をする。
 それがどれだけ自分を傷付けるのか、
 (周助が気付かないわけないじゃん・・・・・・・・・・・・)
 吐息をつくように小さく笑い、リョーマは離れていた腕を再び不二の首へと絡めていった。




・     ・     ・     ・     ・






 ふっ―――と。
 自分を包む空気が変わり、不二は顔を上げた。
 「リョーマ、君・・・・・・?」
 見上げたその先で、リョーマは笑っていた。こんな強姦まがいの目に遭っているというのに。どれだけ軽蔑されても仕方ないほどのことをやっているというのに。
 なのに彼は笑っていた。
 「リョーマ―――」
 「アンタが何やりたいのか知らないけどさ、
  信じるよ、アンタの事。
  それが、俺に出来る精一杯だから」
 精一杯の―――愛情の形だから。
 声にはならなくとも確かにそう云う彼。その気高い姿を眩しそうに見上げ、
 「―――ありがとう」
 心からの返事をし、不二はリョーマの体をきつくきつく抱き締めた。





・     ・     ・     ・     ・






 「ん・・・、痛・・・・・・!!」
 体勢を変え、ベンチに腰掛ける不二の脚を跨ぐリョーマ。慣らしも潤滑剤も無しに胎内へと侵入してくる不二の昂ぶりに、汗を飛び散らせて声を漏らした。
 「もうちょっとだから・・・・・・ね?」
 硬直しきったリョーマの中への進入は不二自身もまた辛いだろうに、それでも始終リョーマのために言葉を紡ぎ、顔中にキスを降らせる。
 「もっと・・・ちゃんと・・・・・・」
 キスして。
 そう言うのももどかしく、リョーマは口元へやってきた不二の頭を押さえ自ら唇を合わせた。
 「ん、う・・・・・・」
 「はあ・・・あ・・・・・・」
 痛みを堪えてキスに没頭する2人。それに応じて弛緩するリョーマの内壁が、先走って流れ出す不二の愛液が、彼らの行為を後押しする。
 そして―――
 「リョーマ君・・・、今、僕は完全に君の中にいるよ・・・・・・?」
 「う・・・ん・・・・・・」
 「躰だけじゃなくて・・・心も全部、
  全部君の中にいるんだ・・・・・・。
  そう、感じる・・・・・・?」
 「感、じる・・・・・・・・・・・・」
 「今だけ、じゃないよ・・・・・・?
  僕は、ずっと・・・ずっと、君の中にいる・・・・・・。
  たとえ他の誰かに何をしててもね・・・、
  それでも僕の全てを持っているのは君だよ、リョーマ君・・・・・・・・・・・・」
 「なら・・・・・・・・・・・・」
 「うん―――」
 「なら・・・・・・、
  なら、俺のも飲んで・・・」
 「え・・・・・・?」
 「そしたら、俺もずっと周助の中にいるから・・・・・・。
  心も、体も・・・。
  ずっと、ずっと・・・・・・」
 「リョーマ君・・・・・・・・・・・・」
 そして、
 彼らはまるで2人で1つであるかのように、同時に頂点へと達した・・・・・・。





・     ・     ・     ・     ・






 その後リョーマの望みどおり(という名目で)不二がリョーマを十二分に愛で、さらに「う〜ん。リョーマ君可愛すぎるよvv 僕とても1回じゃ我慢出来ないなv」「はあ!?」「あ、もちろんさっきのも出しちゃ駄目だよv 僕のものはちゃんと中に入れてくれるんだよね?」「嫌だぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!」などというノリの元数えるのも飽きるほど抱き合い、そしてようやく2人は外へと戻った。



 「―――舞ちゃん!」
 「あ、不二先輩・・・・・・」



 コート脇にて行われる会話―――というか撮影本番。結局練習をぼっぽって野次馬根性丸出しで覗き見るレギュラーらと共に、リョーマもまたその光景を見ていた。



 「先輩が、凄くかっこ良いなあ、ってみんなで言っててその・・・・・・」
 「『みんな』? 君は?」
 「え・・・・・・?」
 「君はどうなのかな?」



 正に真剣に(見た目のみ)迫る不二を目で追いながら―――
 リョーマはおなかに軽く手を当てた。
 そこに蓄えられたものが、とろりと下着を濡らしていくそれが、
 ―――不二はここにいるのだと、証明してくれる。





 「んにゃ? おチビ、にゃに笑ってんの?」
 「別に? 何でもないっスよ?」





・     ・     ・     ・     ・






 ちなみに余談だが、この案が失敗だった事をお互い察したのはそれからわりと間もなくのことだった。
 不二がそういう演技をする時は、必ず事前に抱き合い確認する。
 ―――それはいいのだが(なにせおかげで抱く機会が増えたしね
By不二)。
 行為直後の倦怠感により不二の演技に妙な色気が入り出したのだ。その色っぽさに鼻血を出す者続出。舞をも完全に食った不二の一人舞台に気が付くとギャラリーの目的は明石兄妹やらその他役者らではなく不二を見ることとなり、またそれを直接向けられる舞はその名の通り完全に舞い上がった。
 今度こそ嫉妬心剥き出しで不二を睨みつけるリョーマ。気怠げな視線でじっと見つめられ、不二の『やる気』がさらに上がる。
 そしてより色っぽくなる演技。
 ステキな悪循環に―――




 「周助のバカーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」




 叫んでリョーマが再び逃げ出したのは、あれから僅か4日後のことだった。ちなみに今回不二は、
 ―――『演技』中に後ろから悪送球をぶつけられ、完全に昏倒していた。

―――

 




 なぜかいきなり裏っぽく、でありながら全くそれっぽい事は書かれないまま終わってみました。お互い上から下から飲ませて相手の中へ、案は気に入ってるのですが全て書くと妙に長くなりそうだな、ということで割愛。
 そしてこのシリーズ、特にこちらのバージョンは完全にギャグの傾向を見せていたため、シリアスの筈だったこの話もギャグちっくになりました。さて次の大菊編はこういった隠し話あるのか・・・!?

2003.9.1213