Who are Star ? Our Star ?


5の片割れ
〜英二のドッキリ押し倒し? 大菊前提対不二編〜




 
 あの後、お互いに気持ちを吐露し、『何があっても心も体も全て君のものだよ』という不二の説得に応じ仲直りした2人。
 さて今度は英二の番となった。





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 「んで、俺は・・・・・・」
 台本をパラパラめくる英二。やはり何をやるのか気になるのか、隣では大石もまたぱらぱらとめくる。
 めくり―――
 「「<ヒロインに迫って押し倒しかける>ぅ!!??」」
 さすが黄金ペアといわんばかりにぴったりと唱和した。
 「押し倒す、って、え!? ってことは俺はアイツの肩とか抱いて顔近づけて『一発ヤらせろ』とか何とか言っちゃうワケ!?」
 「そ、そんな英二が・・・・・・!!??」
 大混乱する2人。周りも色々なことを想像し赤くなったり青くなったりしていた。
 (ふ・・・。やっぱりなんだかんだ言っても中学生か・・・・・・)
 「ああ、大丈夫だよ。『押し倒す』なんていっても振りだけだし、すぐに明石君が止めに来るから―――」
 パニックに陥る一同に、妙な安心感を覚えたスタッフらが優しく説明する―――
 ―――が、
 「何焦ってるのさ英二。そんなの今更でしょ?」
 その隣から届いた、至極冷静かつ大問題の台詞により遮られた。
 問題発言をしたのはもちろんこの人、不二。
 「『愛のない
sexなんてスポーツと同じ』って言って男女関係なくヤりまくってたじゃない」
 「にゃああああああああ!!!!!!!!!」
 「
sexでそのレベルなら押し倒しなんてそれ以下でしょ?」
 「そ、そうなのか英二・・・!?」
 「ち、違・・・・・・!!」
 衝撃の事実に驚愕する大石。必死に否定しようとする英二。
 そして―――
 「たかが押し倒し程度なんて楽勝でしょ? ほら、さっさとやっちゃいなよ」
 「不二ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
 不二が全てをぶち壊しにする。
 「英二・・・・・・・・・・・・」
 完全修復不可能なまでに壊れた絆。呆然と後ずさる大石に、英二は追うのを止めて顔を俯かせた。
 「中学入ってまだそんなに経ってなかった頃の事だけどさ・・・・・・。大石のことその頃から好きで、でも男同士だしそう言ってせっかく出来た友達関係崩すの嫌だったから・・・・・・。
  けど、どうしようもなく寂しくって、イライラしてたまんなくって、躰だけでいいから誰かと一緒にいたくって・・・・・・。
  バカだよな・・・。ンな事したって全然何にも変わんないって、ホントはわかってたのに、それでも・・・・・・・・・・・・」
 「英、二・・・・・・」
 小さく紡がれる一言一言。初めて知った彼のそんな想いに、大石は目を見開いて呟いていた。
 大石が英二に告白したのは2年になってから。『黄金ペア』として、自分にも、そして相手にも誇れる存在となってから。初めてダブルスを組んだ時から―――いや、もっと前かもしれない。とにかく気が付いたときにはどうしようもないほどに英二が好きだった。だがそれでも自分達は男同士であり、そしてパートナーであり・・・・・・。
 (同じ、だったのか・・・・・・)
 今更ながらにようやくわかった。告白した時なぜ英二が驚いていたのか。いきなりそんな事を言われたから、ではない。自分と同じだったから、だから驚いたのか。
 「英二・・・・・・」
 今にも泣きそうな顔で最高の告白をしてくれる、どうしようもないほど愛しい恋人を抱きしめようと手を伸ばす大石。
 が―――
 一人感動する大石の前で、奇想天外者[アクロバティックプレイヤー]英二はいきなり立ち直って攻撃の矛先を戻した。
 「それに不二! お前だって人の事言えねーだろ!? 『じゃあ僕が大石の代わりになってあげるv』とかいって何回ヤったんだよ!? しかもやたらテクあるしぜってー初犯じゃねーだろ!!」
 ガーン!! と、正しく鐘に打たれたかの如く大石が直立不動で硬直した。
 (不二は既に知っていたのか・・・・・・)
 どうやら彼は自分が気付けなかった事を不二が気付いた事にショックを受けたようだが、今の英二の台詞が意味する事はもちろんそれだけではない。というかむしろ大石のショックは思いっきり深読みした場合である。
 普通はこう解釈する。
 「英二・・・。弁解したつもりだろうけど、今の君の台詞、余計に墓穴掘ったよ・・・・・・?」
 「ふえ・・・?」
 曖昧な笑みで苦笑する不二。珍しくその額には一筋の汗が流れていた。
 「僕はあくまで『男女関係なくヤりまくってた』―――能動態でしか言ってないんだけどね。君の台詞だと受動的な立場にも立った、って事を暴露した事になるんだけど・・・・・・」
 「え〜っと・・・・・・」
 「―――つまり、英二先輩は別に大石先輩に操は立ててなかった、それの証明になったんスけど」
 「へえ・・・。越前君『操』なんて言葉よく知ってるね」
 「親父が親父だから。エロのクセに清純なのが好きっぽい」
 「あはは。なるほど」
 いつの間にか主体の変わっていたほのぼの会話を他所に、
 「・・・・・・・・・・・・・・・あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
 ようやく自分の台詞の意味に気付いた英二が天を見上げて叫ぶ。
 そしてその頃大石は―――
 「ハハハ・・・。別にいいんだ・・・。気にするな・・・・・・。うん・・・・・・。俺は気にしないぞ・・・! 俺達は過去にじゃなくて未来に生きるんだ・・・・・・!!」
 焦点の合わない目で頭をぐらぐらさせ、人格を完全に崩壊させながら景気付けとばかりに先程の練習で運良く誰も飲まずにすんだ乾汁第―――何号なんだかもうわからない、ついでにその正体も全くわからない謎のジョッキを一気に煽っていた。
 「ぐは・・・・・・・・・・・・」
 「大石!? 大石!? しっかりして!! 俺が悪かった!! もう絶対しないから!! 俺には大石だけだから!!!」
 混乱状態と化した一同から視線を逸らし・・・
 「英二の台詞って、不倫がバレたダメ夫だよね」
 「っていうか・・・、大石先輩、『今』に生きる気ないんスかね・・・・・・」
 「まあ、こんな英二が相手の『今』じゃさぞかし生きがいはないんじゃないかな?」
 「むしろアンタがいる『今』に生きがいがないんじゃないんじゃ・・・・・・」
 「何か言ったかな? リョーマ君」
 「いーえ別に」

―――5のもう片割れ

 




 うわあ。メイツの濡れ場です(それがメインではありませんが)。とりあえず不二は不二で後でリョーマにこってり絞られるのでしょう。しっかしこっちはよく進むなあ・・・・・・。

2003.9.1324