Who are Star ? Our Star ?
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〜無駄にしよう 乙女の頑張り 愛情弁当〜
さて、続く撮影。その中では午前から午後にかけて行われるものもある。そして全国大会前の夏休みとなればもちろん練習は一日中行われるもので。
「あの、みなさん・・・
お昼を作ってきたんですけど、食べませんか?」
事の始まりは、舞が手作り弁当を持って来たことだった。
・ ・ ・ ・ ・
「へ〜マジマジ? いーの?」
「ええ、どうぞv」
今日の午前中は明石と舞(とその他役者)のみでの撮影だった。場所も学校内。なのでこの機会を思う存分利用させてもらったテニス部は、今までの遅れを取り戻すべくいつもの1.5倍は激しい練習をしていた。
そんなワケで腹が減る。食べ盛りの中学生としては目の前に食い物を出されては喰らいつかない道理がない!
と、目を輝かせた英二が綺麗に並べられたおかずからひょいっと好物の卵料理―――厚焼き卵を取った。
はくっ、と口に入れ・・・・・・
「84点」
「え・・・・・・?」
「甘み弱ええ。これじゃ塩味とのバランス取れてねえよ。
焦げ目濃く付きすぎ。なるとじゃねーんだからうずまき模様作ってどーすんだよ。
それに半熟トロトロってのはいいけど弁当で持って来るって事考えろよ。ちゃんと火ぃ通さねーで何時間も経った卵の中にどれだけ微生物増殖するか知んねーのか?」
「えっと・・・あの・・・・・・」
ボロクソに言う割に点が高いような・・・・・・
そう思ったのは舞だけではなかった。
「なるほど。しかし菊丸、その割には点が高くないかい?」
神出鬼没のこの男、乾が横から(無断)拝借しつつ尋ねた。ちなみに尋ねる前の『なるほど』は英二に賛同、という意味のようだ。舞がさらに落ち込んでいる。
「高くねーだろ。赤点じゃん」
「・・・・・・・・・・・・。聞くけど、何点満点でだ?」
「300点満点」
「ああ、英二よく言ってるものね。『満点が高ければ自分の点が低く見えない』って」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なるほど」
不二の解説にこれまた納得する。確かに普段赤点予備軍の英二の点も満点基準を上げてやればそれはそれは高くなるだろう。
名目上84点実質28点の卵焼きの入った弁当にはあっさり興味を無くし、英二は丁度近寄ってきた大石へと振り向いた。
華の咲くような笑顔で。
「大石〜vv 俺の作った弁当食べにゃい〜?」
「え・・・・・・・・・・・・?」
そんな彼の台詞に怪訝な顔をする舞。彼女の目の前で―――
「うそ・・・・・・」
彼女自作の弁当よりも遥かに出来のいいお弁当が披露された。
「お、いいのかい?」
「もちろんおっけー当り前♪ 大石のために作ってきたんだしvv」
「じゃあ―――」
と、大石が(こちらは箸で)摘んだのは厚焼き卵。それを巡って1分前品評会がなされた事をもちろん彼は知らない。
「へえ、美味い!! さすが英二!」
「にゃっはは〜vv」
その厚焼き卵はまず見た目から違った。適度についた焦げ目。軟らかそうだが型崩れはしない。
一部とろっとしているが舞のもののようにただ半熟というのではなく砂糖が適度に使われているためだろう、液体ではなくゲルに近い。しかもそのように砂糖の濃度があればたとえ完全に火は通っていなくとも微生物は繁殖しにくい。
後は味だが、これに関しては大石が評価するとおりだろう。彼ならたとえどんなにマズくても文句は言わないだろうが、それでもこの笑顔は作り物ではない。
「へえ、28点ねえ・・・・・・」
「あ、不二君どうですか?」
「あ、僕にもいいの?」
「もちろんですよ」
バカップル退場後、なんとなく興味を持った不二が薦められるがままに厚焼き卵を口にする。
口にして―――
「そんなに悪くないんじゃない?」
「ホントですか!?」
「32点位かな?」
「・・・・・・・・・・・・」
とどめを刺され、舞が弁当ごと地に伏した。
そこへ。
「―――不二先輩。俺の分もどうっスか・・・?」
「越前君vv」
頬を引くつかせ、リョーマが近寄ってきた。手には英二が、そして舞が持っていたのと同じ感じの物件。
「越前君も僕のために作ってきてくれたのvv?」
「そう。アンタのためにね」
微妙に不思議な言い含み。言いながら、弁当を開く――――――。
『――――――!!??』
開かれた弁当に、乾が硬直し、舞が大口を開けた。
弁当は―――わりと普通のものだった。多分家で菜々子にでも作ってもらったのだろう。英二のように、お子様趣味炸裂(ちなみに厚焼き卵しか出てこなかったが、その他タコさんウインナーがありスパゲティーがありハンバーグがあり仕切りに使う紙の包みは色とりどり、挙句一口大のおにぎりには旗が立っていた。しかもお手製青学の旗が)の弁当と比べると中学生が持ってきて不自然さのないものだった。ただし一品除いて。
「訊くが越前、これは厚焼き卵のつもりだったのか・・・・・・?」
これ。
炭の合間にかろうじて黄色いものが見える物体。ご飯がちゃんとなければ海苔が乗ってるのかと勘違いしていた。
「そうっスよ」
「『越前の料理ベタは相当のレベル。しかもそれを本人は不自然に思わない』と・・・・・・」
「何書いてるんスか乾先輩」
「いつものデータ収集だ。気にしないでくれ」
「そりゃ今更気にはしませんけどね。
で、不二先輩どうぞv」
にやりと。してやったりと。俺以外からものもらった事後悔しやがれと。
如実にいろいろ語るリョーマの笑みに、乾はノートの文字を一部訂正した。とりあえずさすがにこれはリョーマも不自然に思っているらしい。でなければ嫌がらせに食わせようなどとは思うまい。
「って何不二君に食べさせようとしてるのよあなたは!!」
不二が『これ』を食べる様見たさに一切停止をかけない乾に代わり、立ち直った舞がリョーマへと抗議の声を上げた。英二にはボロクソに言われたがさらにボロクソな人を見て自信を取り戻したらしい。まあ止めるのは人として当然かもしれないが。
「何アンタ? ウザいよ。大体食べんの不二先輩なんだからアンタに関係ないじゃん」
「関係あるもないもこんなヘンなの食べたら不二君体悪くするじゃない!!」
「ヘン・・・・・・?」
自分で自覚しているのと人に指摘されるのとでは全く意味が異なる。特にライバルともいえる奴の指摘は。
ばちばちばちぃ―――っ!!! と、2人の間で火花が飛ぶ。正しく一触即発。
最初に動いたのは―――
「ありがと〜越前君vvvvvv」
ぎゅむっv
リョーマを抱き締めた不二が、彼の手に持たれていた弁当から迷わず厚焼き卵を摘んだ。
ためらわずに―――口に入れる!!
「不二君!?」
『不二!?』
舞と―――そこらへんの争いを遠巻きに眺めていた者達が悲鳴を上げた。おこげを食べるとガンになると古くから言われてはいるが、では炭を食べたならどうなるのか・・・・・・。
が、そんな心配を他所に。
「おいしいよ、越前君vv」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホントに?」
「うんv それに上達したじゃないvv ちゃんと材料は合ってるし色も維持されるようになってきたよ」
ちなみに―――かつて不二は砂糖と間違えて小麦粉を入れた厚焼き卵を食わされた経験がある。塩ならばまだ可愛いのだ。辛いだけで食べられるのだから。小麦粉は火がきちんと通っていなければ腹を下す。最もその時も炭になっていたため火の通りは問題なかっただろうが。
「この調子でやったらきっとすぐもっと上手になるよvv 頑張ってもっと僕に食べさせてねvv」
「馬鹿・・・・・・」
小声で呟くリョーマ。その頭を撫でる不二。
バカップル第2号を遠くから、とても遠くからみやり―――
「私の立場って、一体・・・・・・?」
「引き立て役だな」
ぼそりと呟かれた舞の一言は、悪意なき(らしい)乾によって徹底的に潰されたのだった。―――7の片割れへ
わ〜。なぜかこっちでリョーマと舞が争ってます。あれ? むしろ争うのはもう一つの方じゃ・・・・・・。
さて実に久しぶりの続編です。久しぶり過ぎて書き方忘れてました(爆)。不二リョ話では『天才〜』ばかりUpしているため不二がリョーマを『越前君』と呼ぶのが凄まじく違和感がありますな。何度も『リョーマ君』と打っては直していたり。でもそれ以上に不二リョ話を書くのは久しぶりです。不二リョメインのサイトのはずなのに・・・。いやあ、ここで攻め不二って不二リョだけですが、いいなあ、攻め不二・・・と改めて思ってみたりしました。
2004.2.17