Who are Star ? Our Star ?


7のもう片割れ
〜『敵』は1校のみにあらず 扱い辛い事どこも同じ〜





 
 青学対氷帝、練習試合が始まった。





 W2―――
 忍足・向日ペアと戦うは復活した黄金ペア。対立海大付属戦で見せた新フォーメーション『大石の領域』にて黄金ペアが序盤リードを奪うも、忍足・向日ペアもネックであった向日の体力を上げ、さらにクセ者忍足が黄金ペアの穴を探る。
 勝負はタイブレークまで縺れ込んだ末忍足・向日ペアの勝利となった。



 W1―――
 前回同様乾・海堂ペア対宍戸・鳳ペアの対戦。既に相手のデータを得ていた乾が今回は最初から攻めに入った。もちろん宍戸・鳳もより実力を上げてはいる。だが鳳のスカッドサーブ攻略のため毎日手塚の高速サーブを相手に練習していた2人に今やサービスエースは通用せず、宍戸のライジングも左右に揺さぶり粘り対決となった―――となればどちらが・・・むしろ誰が勝つかは見えているだろう。
 今回の勝負では7−5で乾・海堂ペアが勝った。なお負けはしたが特に今回鳳はいい勝負をした。自分の欠点―――右手を捏ねるクセと、サーブ以外の決め手がない点―――を考慮し、クセは直し決め手はないが体格を活かしサーブだけでなく全ての打球の速度を上げ、さらに今までの練習から宍戸についてよく把握したのだろう、適切なサポートに回っていた。これなら意外といい部長になるかもしれない。跡部のように先頭に立つわけではないが、青学が『柱』ならばこちらは『土台』か。鳳指導のもとならばどの部員も好きなように動けるだろう―――跡部指導のもと全く好きなように動けていなかったという意味ではないので悪しからず。



 S3・S2―――
 この辺りも前回同様河村対樺地、不二対ジローとなった。河村は今回片手波動球は絶対厳禁。パワー全体を上げはしたが樺地の前に苦戦を強いられ3−6で敗退。S2では逆に今回も遊ばれたジローが2−6で破れた。だが今回はついに不二にトリプルカウンターを全て使わせる事に成功。ジローは大満足だったらしい。





 そんなこんなで互いに2勝2敗。勝負は最終戦。S1に持ち越された。
 華々しい勝負のラストを飾るのはもちろん大将2人――――――
 ―――ではなかった。




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 「後輩[した]に任せて高みの見物、引退したジジイかてめぇは」
 「まあそう言うな。後輩指導がしたいのは何も氷帝だけではない。それに―――
  ―――『期間無制限でいつでも好きなときに練習に付き合う』だろう? 時間はいくらでもある。例え今回を逃したとしても」
 「ねえだろ? てめぇ全国終わったら留学すんじゃねーのか?」
 微妙に拗ねたような跡部の言い振り。彼にしては珍しい。
 手塚がほんの僅かに目元の力を緩めた。
 「いや。留学の話は先送りさせてもらうことにした」
 「何・・・?」
 眉を顰める跡部へと、それこそ彼にしては実に珍しいからかうような口調で言う。
 「『期間無制限でいつでも』だろう? いつ呼び出されるかわからん以上海外などとても行けない」
 「そういう理由かよ・・・・・・」
 「それに―――
  ――――――お前に負けたままでは留学などしたところで意味はない。俺が留学するのはお前を倒してからだ」
 「クッ・・・。
  だったら一生諦めろよ」
 口端を吊り上げ、先ほど手塚の提案(名目上)を聞かされた時以上に満足げに微笑み、
 跡部はネット向かいに立つリョーマへと視線を向けた。



 改めてS1―――
 跡部対リョーマで行われたこの試合、結果は6−2で跡部の勝ちだった。
 が・・・



 「なかなか・・・面白れえヤツ見つけたじゃねーのよ、手塚・・・・・・」
 「感謝する、跡部。だが・・・
  ―――越前はまだまだ伸びる」
 「そりゃ・・・、楽しみだな」
 「ああ・・・・・・」
 汗を拭き、荒い息の合間にそれでも笑みは崩さず跡部が手塚の肩を叩いた。最初の1ゲームは様子見。それ以上は取らせるつもりは毛頭なかった。だが―――
 土壇場にてリョーマの覚醒モード発生。押さえ込みはしたが1ゲーム落とした。しかも試合を進める中で伏線として破滅への輪舞曲や美技などでリョーマの握力を落として置かなければもっと取られていたかもしれない。
 「おチビすげ〜・・・・・・」
 「越前にこれだけの力があったとは・・・・・・」
 「せやけど、それも押さえ込んだんかいな、ウチの部長は・・・・・・」
 「さすが跡部さん・・・・・・」
 不二を中心に倒れたリョーマの看病に走る一同。部員に、観客に、スタッフに。驚愕と賞賛の眼差しを浴びる中で、跡部は本当に楽しそうに現柱と未来なるであろう柱を細めた目で見やっていた。





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 そしていよいよ撮影。試合前の不二の言葉通り、今の練習試合のS1を削り、改めて明石対跡部として取り直すことになった。まあ狙ったのではないとはいえ丁度2勝2敗のオイシイ場面。せっかくの機会を逃すわけもなかろう。ついでに『レギュラー』ではなく『ただの部員』であるところのリョーマが練習試合とはいえ他校との試合、それも大将戦をやったなどとなるとおかしい事この上ない。
 が、スタッフは1つ―――分ければ2つ―――見誤っていた事態があった。





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 跡部対リョーマの試合で興奮絶好調となった応援陣。特に氷帝側は氷帝コールを跡部コールに変え、「跡部様〜vv」などという黄色い悲鳴と共に大盛り上がりしている。そしてもちろんそれに応える跡部もテンション
MAX。周りの空気を全て支配下に置き、見事なまでに自分に酔いしれていた。
 「あいっかわらずド派手なパフォーマンスだね〜。1回やりゃいいじゃん」
 「でも、なんか新[ニュー]バージョンみたいだよ。一見の価値はあるんじゃないかな?」
 「ニュー? どこが?」
 寝こけるリョーマを脚の間に挟んで座り込み、彼の頭を撫でながら笑う不二に、英二が指を指して尋ねた。全っ然! 今までとの違いがわからない。
 「新しいよ。ホラ、ジャージ肩にかけてるだけでしょ?」
 「ああ、そういやいつもは着てるっけ。でもいんじゃん? 脱ぐ手間省けて」
 それがどーかしたん? とリアクションだけで問う英二。
 「つまりね―――
  ―――ヘタに腕上げるとジャージ落ちるよ?」
 「落ちる・・・・・・?」
 言われ、よくよく見る。確かに肩にかけただけのあの状態では肩より腕を上げた時点でジャージが滑り落ちるだろう。
 考え―――
 プッ―――!!
 思い切り英二が吹き出した。
 「わ、笑える・・・!! ウケる・・・・・・!! ハラ痛・・・・・・っ!!!」
 「でしょ?」
 地面を転がりビクビク震える英二に、不二もまた堪えきれずプッと吹き出した。
 この大声援の中でどうやってそれを聞き分けたか、酔いしれる合間に跡部がギッ!! とその鋭い視線で睨みつけてきたが、もちろんそんな攻撃がこの2人に通用するワケもない。
 「しかもそれで負けるんだよ・・・?」
 「うわ・・・。バカだ。バカだこいつ・・・・・・!!!」
 「『ば〜かば〜か♪』とか指差して笑っちゃうよね・・・・・・!!」
 跡部のテンションが違う意味で上がっていく・・・・・・。





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 跡部のサーブで試合は開始。開始して・・・・・・
 一気にテンションダウンした跡部がぶち切れるのに5ラリーは必要としなかった。
 「弱ええ!!」
 バン!!
 怒りのままに放たれた1球は、明石のラケットを弾きそれでも飽き足らずに地面を深くえぐった。
 怯える明石を睨め下ろし―――
180cm台である彼の方が身長は高いのだが、ラケットを弾かれた勢いで尻餅をついていたため見下ろされる形となった―――、跡部が燃える瞳で全身を震わせた。
 「ざけんな! 俺様がコイツに負けろだと!?」
 「きっついな〜こらさすがに・・・」
 「そりゃ立海大付属行きゃ初日で追い出されるか・・・・・・」
 氷帝メンツも苦笑したりため息をついたり。先程の忍足の台詞でいくと『譲れない線』―――跡部にとっては青学との『遊び』以上に確かに譲れないだろう。もちろん自分達も。こんなの相手に氷帝帝王が『負けた』となるとさすがに部員として哀しいものがある。
 が、
 「てっづかっとしっあいっ♪ てっづかっとしっあいっ♪」
 「ぐ・・・・・・!!!」
 「跡部奴隷化呪文かいな・・・・・・」
 不二の跡部奴隷化呪文―――ではなく『声援』に、跡部がかろうじて残されていた冷静な部分にて苛立ちを抑えた。それに対する忍足の突っ込みは無視して、荒く息をついて必死に頭を冷やす。
 (落ち着け・・・。コイツと試合してやるだけで手塚との無期限契約。ここで逃しゃ留学されちまう。しねえたー言ってたがアテにゃなんねえ。俺まで留学したら手塚追っかけたみてーじゃねえか・・・・・・)
 ちょっぴり錯乱気味にて思考がバグっております。
 (―――よし!)
 「次行くぞおらぁ!」
 決めたならば行動は早い。明石も撮影スタッフもついでに審判も全て無視し、跡部は2球目を放った。





・     ・     ・     ・     ・






 「屈辱だ・・・。俺の人生最大の屈辱だ・・・・・・・・・・・・」
 試合を終え、一人遠くを見やり悲観にくれる跡部。なお結果は6−0・・・・・・というか
24ポイント先取つまるところ相手に1ポイント足りとも取らせないまま跡部の完全勝利だった。
 1球放つごとにぶち切れかけては不二の声援に怒りを押し殺し無理矢理先へ進める。ステキな悪循環。しかも最初は5ラリーは我慢していたものの、後半はもうサービスエースとリターンエースしか取らなかった。試合全体は
20分強かかったが、跡部が落ち着く時間を抜いたらそれこそ切原が関東大会で持つ最短記録14分1秒などあっさり塗り替えていただろう。
 跡部様ぁvv などという周りからの歓声を全て無視し一人がっくりと肩を落とす跡部。その哀愁漂う後姿を見やりつつ・・・・・・
 「ねえ、この映画誰が主役?」
 「それは言っちゃ駄目だよ越前君。僕等は最初にみんな止めたんだから。たとえ今日見物に来た方全員が跡部だって言おうと、そんなワケだから僕等の責任じゃあないよ」
 「そりゃそうでしょ。あの弱っちいヒトのせいなんだから」
 復活したリョーマと不二による会話。確か氷帝応援団とその他ギャラリーの人数は半々だった筈だ。なのになぜか今は跡部コールしか響かない。
 「・・・・・・つーワケだから!」
 「あ、復活した」
 「早いね」
 「今日は俺様の家で1日中付き合せるからな、手塚!!」
 「む・・・。1日中、だと・・・? それは随分積極的な誘い―――」
 「てめぇは一体何を想定した!? テニスに決まってんだろーが天然ボケが!!」
 跡部の完全八つ当たりにさらされ一度は緩んだ手塚の眉間が再び引き締まる。
 引き締まり―――
 「不二、尋ねるが先ほどお前が取り付けた約束は俺は一切了承していないんだが・・・」
 「やだなあ手塚。今更何言ってるのさ。誰の何のために跡部がこれだけの屈辱的行為を自ら行ったと思ってるの?」
 「むう・・・・・・」
 「それこそ光栄に思いなよ? 跡部がこんなに屈辱まみれの事をやってくれたんだから」
 苦笑する不二。自分で煽りたてはしたものの、跡部のこの忍耐は奇蹟に近い。それこそ生まれてからほとんどずっと彼といたが、ここまで彼が何か我慢したのを見たのは問答無用で初めてだった。
 (ちょっと・・・・・・ヤキモチ焼いてみたりしたくなっちゃう位にね・・・・・・)
 僅かに生まれる胸のもやもやを―――
 ―――あっさりイタズラ心に転化させる。
 「じゃあ僕等は見物にでも行こうかv」
 「ああ? 何でだよ」
 「もちろん今度こそ跡部が負ける様を見て『ば〜かば〜か♪』と―――」
 「てめぇはぜってー来んじゃねえ!!」
 「へえ、面白そうじゃねーの」
 「俺らもぜひ行かせてもらわななあ」
 「いえ〜い跡部ん家跡部ん家〜!!」
 「て・め・ぇ・ら〜・・・・・・!!!」
 今までの鬱憤を晴らすが如く暴れる跡部。きゃ〜きゃ〜逃げ回る一同。
 とりあえずこの時点で彼らの頭からは―――
 ―――撮影、という2文字は完全に消え去っていた。

―――8の片割れ

 




 塚跡!? いつからこのシリーズは塚跡になった!?
 そんなワケで塚跡(クドい)。なぜか不二リョ・大菊メインのはずが見事にのさばってます。前半だけ見るとまるで跡不二のようでしたが。そして手塚。不二リョ相手には鋭かった彼も異自分らの事になるとやはりにぶちんのようです。
 ところで結局この回の撮影どうなったのかしら・・・・・・?

2004.2.19

P.S.? さりげな〜くアニプリに反発してます。跡部にそのまま勝たせてみました。だ〜ってあの眼力空回りに策士策に溺れる的自爆行為はどうよ? せめてリョーマの方にもちったぁ何かダメージ欲しかった・・・・・・。