Who are Star ? Our Star ?


8のもう片割れ
〜イケメン対決第2弾! 勝者は『水も滴るいい男ら』に〜





 
 「は〜い撮影始めま〜す!!」
 「お。んじゃ俺は邪魔になるから退散するよ」
 「ああ、待ってよサエ」
 「ん?」
 「せっかくこっち来たんだから打ってかない?」
 「そりゃ出来たらそうしたいけどさ」
 「ついでにカメラに映っていかない?」
 「え?」



 これから行なわれるのはランキング戦のシーンだ。もちろん明石はこれに勝ってレギュラー(厳密にはレギュラー続行)となる。のだが、最近明石の目立った活躍が全然撮れていないというスタッフの悩み解消のため、明石が試合を行う相手はレギュラー以外となっていた。
 「けどね、3面あるコートの1面を撮影に使うとはいえ、残り2つが使われてなかったらおかしいでしょ? いろんな角度から撮ったら絶対そこもフレームに入っちゃうだろうし」
 「そりゃあ、まあ・・・・・・」
 「というわけで僕等も誰か試合をする事になったんだけどさ、明石さんがレギュラー以外とやってるっていうのに僕等がレギュラー同士で試合してたら、なんか見た目おかしいじゃない」
 「おかしいっていうか―――実力差はっきりすんだろ」
 「そこに関しては目をつぶってv あくまで僕が言ってるのは衣装の問題。レギュラージャージが多すぎると目立たないでしょ?」
 「なるほど」
 「で、明石さんに合わせてレギュラーとそれ以外で試合の真似ごとをしようってことになったんだけどさ、問題は誰がやってくれるかで」
 「ああ、ずっと映画に出続ける以上レギュラーがその時こっきり普通の部員のフリするってのはボツなワケか」
 「話早いね。というわけでどう? 『仮』青学部員」
 「俺が? バレんだろ青学生じゃないって」
 「大丈夫だよ。わかるのは一部の人だけ。ただでさえ青学とは全く何の関係もない役者が平然と居座る映画だよ? いいじゃない。ちょっとしたヤラセがあっても。それにわかった人にとっても、サエがここで試合してるのはそこまで不自然な事じゃない」
 「まあ現に今普通に誘われてるしな。
  まいっか。元々そう出来ないかなって思ってたワケだし」
 と、肩に掛けていた鞄―――テニスバッグを下に下ろす。取り出すは自前のウェアにラケットそしてシューズ。今すぐ
OKの完全装備だ。
 着替えるため部室へ向かおうとした佐伯が、
 ふいに振り向いた。
 「そういえば俺の相手って誰になんだ?」
 そんな、素朴な疑問に―――
 不二はにっこりと笑って、答えた。
 「英二」
 「はあ!? 俺!? なんで俺!? 不二やれよ!!」
 「駄目だよ。僕は越前君とだもの」
 「何だよおチビレギュラーじゃん! それでいいんだったら俺だって大石とやりてーよ!!」
 「やだなあ英二。この撮影中は越前君は『ただの部員』。大石は『レギュラー』。
  ―――はい。サエの相手は君で決定だね」
 「ぐ・・・・・・!!
  大石ー! なんでお前『レギュラー』になったんだよー!!」
 「え・・・? いやあのそれは・・・・・・」
 不条理極まりない理由で怒られる大石を他所に。
 「菊丸とか・・・。関東の借りは返さないとね」
 「ふふ。ま、頑張ってね」
 「・・・・・・何気に負けろとか思ってる?」
 「さあ、どうだろう?」





・     ・     ・     ・     ・






 始まる、『ランキング戦』。フェンスの周りにはギャラリーに紛れて青学部員らもいるわけだが、彼らの注目ポイントはもちろん明石対荒井の試合などではなく。
 「トリプルカウンター、全部使っていいっスよ。攻略してあげるから」
 「それは楽しみだな」
 「今日は抜かせないよ、菊丸」
 「にゃはは。今日も抜きまくっちゃうもんね」
 Bコート、Cコートでそれぞれ行われる挑発というか挨拶むしろ逆か。
 『どっち[フィッチ]?』
 「表[スムース]」
 「裏[ラフ]」
 カラン
 コロン
 「じゃ、よろしく」
 4人の声が、4人の笑みが、ネットをコートを挟んで交差する。研ぎ澄まされた空気が漂う中―――
 審判の合図と共に、とりあえずの勝者からボールが放たれた。





・     ・     ・     ・     ・






 「う、わぁ〜・・・・・・」
 実際に声を上げたのは河村だった。同じ事を思ったのは全員だろう。
 最初の宣言どおり、リョーマはトリプルカウンターを破ろうとし、しかし不二も変則技など出してそれを阻止する。英二はかつて佐伯を抜いた菊丸印の新ステップを今日も見せるが、佐伯もさらに上げたマークによりぴったり英二についていっている。
 「ゲームセット! 6−0! ウォンバイ明石!!」
 などというコールが響く頃も、まだこちらは半分も進んでいない。
 部員のみにあらず今やギャラリー・スタッフの注目もこちらに集まっていた。始めはテニスの事など欠片程度にしか知らなかった彼ら彼女等も毎日超中学生レベル―――というか最早一部プロ並みの実力を見せられ、随分と目が肥えていた。
 暫し鑑賞し、
 「あれ? 撮影続けないんですか?」
 「って不二先輩。何余裕かましてよそ見してんスか」
 「そうだぜ不二〜。おチビに抜かれんぞ〜♪」
 「ああ、危ない危ないv」
 「ついでにお前もな」
 「うげっ!」
 余裕しゃくしゃくで返す不二。あっさり抜かれる英二。
 「駄目じゃないか英二。あっさり抜かれちゃ」
 「お前のせいだお前の!!」
 とても今まであんなプレイをしていたとは思えないラフさに、スタッフらも本来の目的を思い出した。
 「じゃあ明石君、次は池田君と試合して。
  それと君たちはそのまま続けてくれないかな?」
 「ええ、もちろん」
 果たしてこの時の不二の笑顔にはどんな意味が込められていたのか・・・・・・。





・     ・     ・     ・     ・






 さらに続く撮影の中―――
 「お・・・?」
 「空が―――」
 「おかしいな、今日は晴れだって言ってたのに」
 「ま、天気予報なんて当たるも八卦当たらぬも八卦だろ?」
 「いや、天気予報がそれじゃ困るだろ・・・・・・」
 突如―――本当に何の前置きもなく立ち込め始めた暗雲を見上げ、スタッフらがため息をついた。今日の撮影は中止か。
 同じ空の下―――
 「不〜二〜! お前またな〜に召喚してんだよ」
 「え? 越前君と僕との試合っていったらコレじゃない」
 「やっぱ不二先輩のせいっスか? 止めてください。また中断喰らうじゃないっスか」
 「ああ、そういえばそっか」
 「気付こうよ周ちゃん・・・・・・」
 「もういいっス不二先輩のそういうトコに関しては諦めついてますから」
 「おチビも悟ったな・・・・・・」
 「じゃあそんな越前の悟りを記念して晴れさせてあげなよ?」
 ラリーを続けながらも呆れる2人にため息をつく1人。そして笑顔の1人はやはり笑顔のまま、
 「無理」
 『・・・・・・・・・・・・』
 ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・・・・・・・





・     ・     ・     ・     ・






 ザザ――――――!!!
 「不二の馬鹿〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 土砂降りの雨。そりゃもーバケツというよりお風呂ひっくり返したくらいの土砂降りっぷり。最早前もロクに見えない。かろうじて風が吹いていないのだけが救いか。
 英二の叫びもあっさり飲み込まれて消える中、撮影はもちろん中止となった。そして部活もまた。
 「急いで片付けろ!!」
 「機材濡らすな!!」
 「1年はボールを片付けろ! 2・3年はネットだ!」
 『はい!!』
 各号令に従い動き出す者たち。ギャラリーも避難しようとする。が、
 「あ、あの・・・、
  ―――アレ、どうするんですか・・・・・・?」
 「む・・・・・・。
  ――――――またか」
 呟く手塚のため息もまた掻き消される。掻き消す雨の、その向こう。Bコート及びCコートでは―――
 ―――今だに試合が続いていた。
 「まさか、この程度で止める、なんて言いませんよね」
 「まさか。止めるわけないじゃないか」
 「いいっスけどね」
 「越前は? まさか止めるなんて―――」
 「言うワケないじゃん」
 「面白い」
 「菊丸、お前は?」
 「俺? 止めるワケないじゃん。当り前田のクラッカー♪ って感じで」
 「古・・・・・・。
  まあいいけどな。それこそ上等って感じで」
 「へ〜。んでお前は?」
 「俺? 止めるワケないんだろ?」
 「じょーとー」
 不二を除き、スピードを売りにしている3人には相当辛い条件下。だがリョーマは夢中になれば雨どころか雪や嵐になろうと試合を続ける気質、佐伯は普段砂浜で遊んだりなどしているため不安定な足元にも相当強く、そもそも英二のアクロバティックはこの程度では左右されない。
 雨に対抗するためかよりヒートアップする試合。誰もが全てを忘れ4人に魅入った。そう―――ずっとここにいた『誰も』は。
 スカンスカンスカンスカ―――ン!!
 「痛・・・!」
 「でっ・・・!」
 「に゙ゃ・・・!?」
 「うおっ・・・!!」
 「何やってんだいアンタたちは相も変わらず!!」
 怒鳴り声と共にこの人登場。部員から適当に借りたラケットで4連チャン頭にボールをぶつけた竜崎が、ラケットを手の平に打ち付けつつコートに入って来た。
 「アンタたちもうすぐ全国大会だって事忘れてないかい!? 今ムチャして体調崩したらそれこそ取り返しがつかないんだよ!? ホラ佐伯君も!!」
 『すいませんでした』
 素直に4人が頭を下げる。今回は全員自覚していたからだろうが――――――この4人にこんなことをさせられるのは恐らく顧問クラスのみであろう。
 「わかったんならさっさとコート片して雨宿りしな。他の部員は先行ってていい。コイツらのせいで皆で風邪ひいたんじゃ笑い話にしかならない。自分の責任は自分で負いな」
 『はい!!』
 竜崎の剣幕にビビりつつ返事する一同。まあ部員(でないのもいるが)がこれだけムチャな行為をしていれば彼女が怒るのも当然だろう。
 言われるまま、一番近くにある雨宿り所―――部室に駆け込む部員とスタッフ。だが彼ら全員を匿えるほど部室は広くはない。一部の人間は女テニの部室を借りた。
 明石と舞、そして・・・片し終わって最後に駆け込んできた4人が。
 「皆さんお疲れ様です」
 (預かってきた)タオルを手に近寄る舞。ついては行けないと言ってはいたが、それでも面食い精神は健在だったらしい。前回ボロクソに扱われた英二と不二、さらに妙に対抗心を燃やしあっているリョーマからは早めに手を引き、狙うは佐伯。
 役者としてのプロ根性か、優しい笑顔でそっと差し出す。『舞』という人物をよく演じている。決して積極的には出ず、控えめながらもほんわりと温かいもので対象者を包み込む。
 「お、サンキュー」
 向こうが向こうならこちらもまた『佐伯』という人物像通りに動く佐伯。誰しもを魅了させる笑顔でタオルを受け取り、垂れる雫を拭き取る彼に、
 「凄く上手ですね、テニス」
 「そうかい? ありがとう」
 「小さい頃からやってたんですか?」
 「ああ、本当に小さい頃からね」
 と、会話を弾ませる。途中の微妙に力の篭ったニュアンスに、その意味を唯一正確に悟った不二だけがより笑みを深くし頷いた。それを見た佐伯の『笑顔』が一瞬引きつったが。
 割と普通に進んでいく会話。心配そうな顔で妹を見守る明石を他所に。
 「へ〜。結構上手くやってんじゃん」
 「意外とアノ人も興味あるんじゃないっスか?」
 などとコメントをする英二とリョーマに、
 不二がくすりと笑った。
 「どうだろうね?」
 彼がそう言うのと、
 「あの、千葉まで帰るのに時間まだあるんですよね・・・? それまでどうでしょうか? ぜひ一緒に―――」
 「ガキに興味はない(注:舞は
13歳。そういう佐伯は14歳)」
 佐伯が変わらぬ笑顔でそう言うのはほぼ同時だった。
 「え・・・・・・?」
 こちらも笑顔のまま、舞が灰になる。
 「舞!? おい、舞!!」
 なんだか大変そうな明石兄妹は放っておくとして。
 「あれ? サエって大人[マダム]が趣味だったっけ?」
 「まさか」
 「だよね。いきなり路線変えたのかと思ったよ」
 「ははっ。それはないなあ」
 またまた明るく笑い合う佐伯と不二の2人に、英二が首を傾げた。
 「あれ? んじゃお前って誰がいいんだよ?」
 ガキは駄目大人も駄目。じゃあ同年齢か? などと思う英二だったが・・・・・・
 「生憎と恋愛そのものにまだ興味関心がないからね」
 「・・・・・・・・・・・・。
  ―――だったら普通にそう言ってやれよ・・・・・・」
 がっくりと項垂れる。その向こうには彼の、内容は間違っていないが意味するものの大きく異なる発言のおかげで人生お先真っ暗な少女が。
 「まあ、サエだしね」
 彼をよく知るであろう幼馴染による簡潔極まりない解説。本人も笑うだけで特に反論しないところからするとそれが正解らしい。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  ――――――――――――――――――――――――だね」
 アタック即座に砕けた少女も犬にかまれたとでも思って諦めてもらうしかない。本人が本人である以上続くのならば、たとえ結ばれたところで犬が毒蛇になったりサメになったりする程度だろう。
 果たして撮影が終わるまでにこの兄妹は生きていくことが出来るのか!?

―――

 




 なんだか話の路線が変わったなあ・・・。雨に濡れて色っぽい一同が書きたかったいうのに、サエの毒舌を前にしてはそれすらも霞むようです。そしていよいよ不二リョも大菊も関係なくなってきたような(爆)。わー、次は・・・次こそ・・・・・・次出来れば〜・・・・・・・・・・・・
 そしてそれこそ関係なさ
100%を越えた感のある役者とかそこらへん。まあこっちは・・・・・・どうでもいっか・・・・・・・・・・・・

2004.2.1920