Who are Star ? Our Star ?
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〜試合の場 復讐の場〜
前回六角との練習試合の話が出たが、特に試合中目覚しい上達(むしろ開拓)が見られる青学。ならば全国前に最終調整として様々な学校と当てようと考えるのは当然の事だ。
今日もまた、その日だった。
「・・・・・・って、お前まだ帰らないのか? 佐伯」
「だって今日ルドルフと練習試合なんだろ? 面白そうじゃん。
ま、今更偵察なんて嫌がる青学でもないだろ? 見せてくれよ」
「まあ、別にいいけど・・・・・・」
昨日来て、そのまま今日も居座ってしまった佐伯に、
大石は小さくため息をついた。
呟く。
「頼むから、今日は問題起こさないでくれよ・・・・・・?」
「大丈夫。俺は起こさないから」
「うんじゃああんし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええっ!!??」
・ ・ ・ ・ ・
「よーお前ら! 久しぶりだな」
「申し出を受けてくれた事、感謝する」
「んふっ。大した事ではありませんよ。僕達もぜひ君達ともう一度対戦したいと思っていましたから。こんな僕もぜひ不二君と決着をつけたく―――」
「あ、よく来てくれたね裕太vv」
「うお・・・。あ、兄貴・・・・・・」
「来てくれて嬉しいよvv 今日はお互い頑張ろうねvv」
「あ、ああ・・・。わかった・・・。わかったから・・・・・・頬擦りは止めろって」
「え〜なんで? 僕と裕太の仲じゃない」
「みんな見て―――いや。
ホラ兄貴、越前が見てんぞ。いいのか? 怒んじゃねーのか?」
「え!? 越前君! 別に僕と裕太はそんな関係じゃないよ!?」
『当たり前だろ!?』
「僕の話を聞きなさい不二君!!」
一通り挨拶を終え、さっそく試合をする事になった。氷帝と違い、こちらは知名度アップを狙った観月がしっかり説き伏せてくれたようだ。誰も特に何も言わない。
「えっとじゃあ明石君の相手は〜・・・・・・」
「シングルスでエース? なら裕太じゃないだーね?」
「え!? 俺ですか柳沢さん!!」
「この僕を差し置いて・・・!!」
「クスッ・・・」
「今『クスッ』とか笑いましたね木更津!!」
「さあ」
「さすが淳。亮と違ってからかいが上手いなあ」
「褒めてんの? 佐伯それって・・・・・・」
前から横から後ろから、集中砲火に撃沈されそうな観月に、
味方は意外なところから現れた。
「じゃあ、裕太君っていうのは―――」
「あ、この子ですよ明石さん。僕の弟の不二裕太。兄の贔屓目抜きにしても強いですよ〜vv」
「・・・・・・すいません。出来れば別の人を・・・・・・」
・・・いや、これは最大の敵だった。
改めて味方の話を。
「え・・・? でも今日は俺越前と―――」
「あ俺今『レギュラー』じゃないからパス」
「は!? お前がレギュラー落ち!? どーした越前!?」
「落ちてない!!
なんか撮影に邪魔だからって普通の部員になった。だから試合出らんない」
「はあ? じゃあ俺は〜・・・・・・」
「あ、それなら大丈夫。裕太の相手は僕がするからねvv」
「え・・・? でも兄貴は観月さんが―――」
「え? ルドルフに裕太以外に僕の相手が務まる人いるの?」
「・・・兄貴、それはさりげに観月さん以外にも失礼・・・・・・」
「なああんですってえええ!!!???」
「あ、観月。丁度良かった。
―――明石さん、彼があなたの相手の観月です。
良かったじゃないか観月。君自らテレビに出られてルドルフの知名度が上がるよ?」
「ぐ・・・。
ま、まあそれならひと肌脱ぎましょうか。
しかしながら覚えておいてくださいね。今日は見逃しますが次こそ君を跪かせてあげますよ不二く―――」
「じゃあ頑張ろうね裕太vv」
「だから腕組むんじゃねえって!!」
「不二先輩!!」
「聞きなさい人の話を!!」
・ ・ ・ ・ ・
試合が始まった。他の人のを『波乱万丈の展開だった』の一言で片付け、いよいよ青学明石vsルドルフ観月に。
「ああちなみに観月、そういえば言い忘れたけど」
「何です不二君?」
フェンスの外で、裕太とリョーマと両手に花の不二がのんびり言葉を紡いだ。
「この映画、あくまで主役が明石さんたちだから」
「わかってますよそのくらい」
「だから負けてね君」
「・・・・・・はい?」
「だから、曲がりなりにも主役なのに負け過ぎるのは困るんだよ。『昨日』既に跡部に負けてるからね。今日は勝ってくれないと。
という事で負けてね観月」
完全に淡々と『予定』を告げる不二。わざととはいえ負ける屈辱とルドルフの宣伝を天秤にかけ・・・
「・・・・・・まあ、いいでしょう」
クスッ・・・・・・
頷いた観月に、脇から発せられる複数の笑いは聞こえなかった。
・ ・ ・ ・ ・
今度こそ試合が始まった。同時に不二の罠も始まった。
観月が点を落とす。
「何キミ? そんなのも取れないの? そっか試合始まったばかりだものね。まだデータ溜まってないものね。
所詮データ収集家はデータ取ってからじゃないと駄目なのか〜。初めての相手じゃ手も足も出ないんだ〜。情けないなあ」
「わざと落としたんですよそれすらわからないんですか!?」
「カーーーット!! 頼むからそういう事は大声で言わないでくれ!!」
「申し訳ありませんでした・・・」
観月が点を取る。
「何取っちゃってんの? 話の主旨わかってるキミ? キミ風に言えば、これは『シナリオ』なんだよキミが負けるっていうね。
―――自分で普段作っておきながら、自らそれを破るっていうのは〜・・・・・・・・・・・・あんまり威張れた事じゃないんじゃないかな?」
「わかってますよ負けますよ負ければいいんでしょクソッ!!」
「カーーーット!! 何度も言ってるけどだからそういう事は大声で言わないでくれ! まるでヤラセをやっているようじゃないか!!」
「『まるで』どころか『まるきり』では・・・・・・」
「わかった。君の学校を撮影に使うのは止めよう」
「申し訳ありませんでした!!」
ラリーが続く。
「ほら舞ちゃん。君面食いならあんなのもどうかな? まあ性格は極めて悪く陰険・狡猾・陋劣・悪辣その他諸々で友人知人の類は少ないだろうし恋人になっても人に自慢は出来ないだろうけど、おかげで今だにフリーだし」
「え、いやあの・・・・・・」
「煩いですよ不二周助!! 性格面で貴方に言われたくはありません!!」
ドスッ!!
「あ、点落とした。コートの外で応援してる子に余所見して」
「いらない解説をつけないで下さい!! 違います! 僕は君に―――!!」
「見惚れて余所見したの?
止めてよ。僕には越前君がいるし君は全然タイプじゃないんだから・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・。
奇遇ですね。僕もタイプではないですよええ全然全く」
・ ・ ・ ・ ・
試合が終わった。『波乱万丈の展開だった』。
「ホラ、俺は何もしなかっただろ?」
「ああそうだな・・・。お前は何にもしなかったよ佐伯・・・・・・」
えへんと胸をそらす佐伯から目を離す。
目を閉じ現実逃避する大石の耳には、今だ互いを罵倒し合う観月と不二の声が遠く遠く響いていた・・・・・・。―――10へ
1年半程度ぶりのS&Sです。前回の展開を追うと普通は六角戦なのでしょうが、何のCPで話を進めているのか不明になってきたので違う話を入れてみたり・・・・・・って余計に不明になってきましたね。ユタ不二ではないですよ?
青学対ルドルフ練習試合。原作ではあった展開ですね。コミックスにて観月を無視する不二が大好きなので書いてみましたvv 一応試合は明石が勝ったらしいです。
2005.10.13