Who are Star ? Our Star ?
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〜試合に負けて勝負に勝〜つ!!〜
今度こそ、青学対六角の試合となった。・・・・・・のだが、ここで問題が1つ。
「佐伯って、この間青学の一般部員として映画出たよな?」
それは少し前の事。『校内ランキング戦』で背景代わりにレギュラーの英二と対戦した。
「問題ないだろ。その後転校したって事で」
「青学でレギュラーにもなれなかったヤツが転校してンな短期間にレギュラー入り・・・?
・・・・・・いえすいませんでした何でもありません!!」
言ってはいけない事を言いかけた桃。慌ててばたばた手を振るその先に何があるのかは〜・・・・・・いつもどおりなので割愛する。
「どうせ明石さんに負ける役だろ? ならそれくらいでいいじゃん」
「いいのかサエ?」
「別に構わないよ? ま、映画スタッフがOK出したらだけどね」
「けど、お前だって楽しみにしてただろ?」
「元々それでいいっていう条件で練習試合やってもらうワケだし。それに俺は誰と試合しようと同じ―――だろ?」
謎の言葉に眉を顰める青学一同マイナス不二。わかっている側は・・・
「・・・・・・んじゃ、まあそれでいっか」
ぽりぽり頭を描き、まずは黒羽がOKを出した。葵を見、オジイを見。どちらも反対しない以上はいいのだろう。
オーダーを決め、話を持っていったらスタッフにも了承された。
「そっか、じゃあ君が俺の相手か。よろしくな、佐伯君」
「よろしくお願いします、明石さん」
笑顔で握手しあう2人。とても良さげな雰囲気の中、試合兼撮影が行われた。
・ ・ ・ ・ ・
かつてアメリカ西海岸Jr.の監督ベイカー氏は言っていた。『時に勝つより負ける方が客は盛り上がる』と。
明石との試合における佐伯はまさにそれだった。必死にボールに喰らいつこうとして、でも追いつけなくて。汗を掻き荒い息でそれでも頑張る佐伯は、弱いチームが愛と友情と努力の末強いチームを打ち倒す典型的スポ根で育ってきたスタッフ一同の胸を激しく打った。さらに、それらは古臭いと感じるが逆に弱い者苛めは大好きだvvという世代もまた。
もう明石無視で―――いや明石すら含めきゃーきゃーわーわー盛り上がる。負けているのにその注目されっぷりはさながら某氷帝帝王のようだ。
「はぁ・・・、はぁ・・・・・・。
まだまだぁ!!」
サービス精神でこんな掛け声までつけたりして。
「うお・・・。サエ本領発揮だな・・・・・・」
「なるほどね。端から真面目にやる気がないんならいっそこの位遊んだ方がいいのか・・・」
「すっげー、タチ悪くないっスか・・・?」
「騙されてるみんなも可哀想にゃ〜・・・・・・」
周りからそんな非難が(小声で)飛ばされる中、試合が『終わった』。
・ ・ ・ ・ ・
テニスに関わらずスポーツというのは、映画と異なり途中から観ても大体ワケはわかるものである。ニュース途中で流れるスポーツダイジェストなどがその例だ。
テニス。それが長いか短いかは基準次第だろう。6ゲーム1セットで考えれば大体15〜30分。大抵1分以内で終わる相撲と比べれば長いだろう。90分かかるサッカー、延長すれば何時間にでもなる野球と比べれば短いか。そして―――
―――2時間程度の映画を基準にすれば恐ろしく長い。メインの試合ならともかく、話を進めるためだけのものでそれだけ時間をかけていれば、多分映画は24時間で済まない作品となるだろう。何せ団体戦だ。
そんなこんなで、映画で使用するのはせいぜい1ゲーム分程度だ。様々なシーンを張り合わせるため余裕を持ってやるとしても半分。それ以上だと特に明石がバテる。
「ゲームアンドマッチ! ウォンバイ青学明石! 6−4!!」
などと審判がコールする、実質まだ2−1の試合。
「やっぱり強いな。完敗だったよ」
「お前も充分強くなったよ」
本当に桃のボヤいたとおりの設定にされた佐伯。負けてもなお爽やかに挨拶する場面では、スタッフ・客問わず自然と拍手が起こった。・・・部員がしない理由は察して欲しい。きっと後でそこだけ別撮りされるだろう。
さてそのまま撮影は休憩に―――
―――なる前に、明石がこんな提案をした。
「そういえば佐伯君、君練習試合のために来たんだろう? だったらこのまま続けないか?」
「え? いいんですか?」
「まあ、俺たちが散々迷惑かけてるからね。少しでも罪滅ぼしさせてくれよ」
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「そうこなくっちゃ!」
・・・こんな提案をした明石。もちろんここには、言ったもの以上の理由があった。
彼もまた、弱い者苛めは大好きvvという少々屈折した世代である。この撮影を始めて以来会う人会う人みんなに馬鹿にされ続けてきた彼。フラストレーションは相当に溜まっていた。
そこへ、佐伯の登場。普通にテニスをやっているだけなのに妙に嗜虐心をそそる相手。自分が変態思考の持ち主だと考えた事はないが、それでもこの位は楽しんでもいいだろう。
などと思い、試合を続けた。
――――――が!!
・ ・ ・ ・ ・
「はあ? こんな球も取れないのか? お前よくそれでエセとはいえ『青学レギュラー』なんて言い張れるな。もう一回基礎からやり直して来いよ」
「はぁ・・・、はぁ・・・・・・。
で、でも俺素人だから・・・・・・」
「ハーン素人ねえ。
役者の?」
「役者ならプロだ!!」
「『プロ』が聞いて呆れるなあ。演じるならそれになりきってなんぼのモンじゃないのか? 見た目だけで演技力0でいいなら俺だって今すぐなれるぜ『役者のプロ』」
「くっ・・・!!」
「な〜るほどなあ。どうりでお前の顔も見た事なけりゃ名前聞いた事もないって思ったら、出番がないからか。映画の主役に抜擢されてまでこの程度じゃあ、普通のテレビ番組はさぞかし無様なダイコン役者なんだろーなあ」
「くっそおおお!!!」
「ちょっと挑発されてすぐ逆上。とても演技が上手には見えないなあ。やっぱさっきの推測に間違いはない、と」
「違―――!!」
「お? 周りもお前見て随分驚いてるなあ。今まで見てた感じじゃお前爽やかキャラってスタンスで売ってんじゃないのか?
さぞかしがっかりだろうなあ。こんなお前見せられて」
「それはお前じゃ・・・」
ドスッ!
「わ〜いパーフェクトゲーム達成〜♪
な〜るほどなあ。跡部がブチ切れたワケがよくわかったよ。こんなの相手にさせられたら俺だってブチ切れるな。早めに切り上げさせてもらってよかったvv」
「お前・・・
―――なんで撮影中と全然違うんだよ?」
疲れ果て(肉低的精神的に)、へたり込みながら尋ねる明石に、
佐伯はにっこり笑って指を立てた。
「演技v」
「あ〜♪ た〜のし〜なあ弱い者苛めはvv」
そう喜ぶ『弱い者苛め大好きvv世代』の後ろでは、
へたりこんだまま、明石が完全に朽ち果てていた・・・・・・・・・・・・。
・ ・ ・ ・ ・
「何か、佐伯さん・・・、めちゃくちゃ強くないっスか・・・・・・?」
「そうかな? 結構手加減してると思うけど?」
『!!??』
しれっと言い切る不二に一同が慄いた。
「で、でもアイツこないだ俺らに負けたじゃん」
「だよなあ・・・? 橘にも負けてたし・・・・・・」
首を傾げる黄金ペアを見、
「サエの悪癖発動だね。最初にわざと負けて、その復讐という名目で散々に相手をいびる。どうも明石さん含めて回りはみんな勘違いしたみたいだけど、サエはMじゃなくってSのケが強いんだよ。もちろんスポ根根性なんて欠片もないよ?
なまじ1度勝ってるから次こそ行けるんじゃないか、って相手もなかなか諦められない。ギャンブルで破産する人の典型だね」
「じゃ、じゃあまさか俺って・・・・・・」
「おめでとう英二。マーキングはしっかりされたよ。
全国ではズタボロに負けるかもね。橘もろとも」
「だったらお前だって―――!!」
「駄目だよ。サエにとって僕は『可愛い弟』だもの。僕にそんな酷い事するワケないでしょう?
大変だねえ英二。全国で六角に当たらないように祈るしかないよ」
「一緒に組もー不〜二〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「ああ、ここにも苛めっ子が一人・・・・・・」―――11へ
ようやっと来ました青学対六角戦! 拍手コメントで来ましたように、相手はサエにして・・・・・・数秒後にそういえば以前も出てきた事に気付きました。まあこうやって乗り越えたようですが。
試合中(撮影中)に馬鹿にすると話が進まないため普通にしてます。そして影で苛め(爆)。サエの二重人格もどきはオフィシャルでもわりかし有名ですが、こんな2つの顔だったらすっげーヤだな・・・・・・。
では、登場校が増える度話も長くなっていくような気もするこの話。いずれ立海も出せたらいいなあ・・・・・・。
2005.10.13