Who are Star ? Our Star ?


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〜不二式英二式、恋愛演技上達の法則〜




 
 ところで誰か覚えているだろうか、この映画では不二と英二が舞に片想いの役を演じると。
 演じた初日に大量の問題を発生させたかの2名。ではその後どうやって撮影を行っているのだろう?
 今回は、それについて見てみよう。





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不二の場合―――

 机に座り―――もちろん正確には椅子に座って机に向き―――せっせと勉強しているところに不二入場。
 「あれ? こんなところにいたんだ。部活出ないの?」
 情けない顔で広げた問題集を指す。不二はそれで理解し、ああと頷き窓際の席に近付いていった。
 「補習? 君が? 珍しいなあ。それとも―――
  ―――僕のせい?」
 だって、先輩が手なんか振ってくるから・・・。
 俯いてもぞもぞ呟く。
 体育の時間の、本当に恥ずかしかったんだよ!! と視線で怒るのを優しく受け止め、不二は優しく笑った。
 「ごめんごめん。でも見上げたら君がいてさ、嬉しくなっちゃったんだ。たまたま同士で目があったんだよ? すごく不思議な事じゃない?」
 さらさらの髪を撫で、
 「ねえ、これを運命って呼ぶのかな? くだらないって思うかもしれないけど、僕はそう信じちゃったよ。
  君はどう?」





 「クサ・・・・・・」
 「カーーーーット!!!」





 「越前君! 勝手に声は出さない!!」
 「だって今の何かこの人おかしいっスよ!? 頭大丈夫っスか不二先輩!?」
 舞の代わりにそこにいたリョーマが、頭を撫でる不二の手を跳ね除け立ち上がった。その顔には、真の恐怖が浮かんでいる。
 「越前君以外に愛の告白なんて出来ない!!」と駄々を捏ねる不二と、そんな彼の被害者らが出した妥協案がコレだった。とりあえず不二はリョーマを相手に演技し、後で同じシーンを撮った舞と差し替える。これなら双方丸く収まる。一番の被害者、リョーマを除いては。
 だがここにも問題はなくなりはしなかった。普段テニスばかりで恋愛ごとなど無縁のリョーマ。たとえ不二に迫られていたとしても、それはリョーマに配慮したためかそれとも不二に元々その辺りの感性がすっぽ抜けているためか、ムードとは程遠いものとなっていた。
 そんなリョーマに、吟遊詩人並の愛の言葉を、しかも途中でも突っ込みは一切不可で相手になり続けろという。まだそれらに対し少しは耐性のありそうな他のメンバーらですら、鳥肌が立ったらしく腕を擦っている。それを直接聞かされるとなれば・・・・・・・・・・・・。
 「酷いなあ越前君。僕は本気で言ったんだよ?」
 「ああそりゃまー演技だし
NG出したらぶん殴るし―――」
 「じゃなくてね」
 かなり怪しい発言をするリョーマを遮り、不二は彼を優しく拘束した。両手を窓につけ、その間に閉じ込め、
 「ううん。そんな話じゃないんだよ。これは僕の本当の気持ちさ。
  僕らがめぐり逢えた事、そしてこうやって一緒にいる事、それこそが奇跡―――」
 「そーいうのを止めろって言ってんだろ!?」
 ごすっ!!





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英二の場合―――

 図書室にて。たまに部活のない午後、たまには本でも読もうかと立ち寄った仮定“舞”。うろうろうろつき、目的の本を見つけたところで英二が入ってきた。
 「お? 舞じゃん」
 「(あ、菊丸先輩)」
 仮定につきもちろんここの声は出ない。それでも、千石直伝口の動きだけで相手の言いたい事を察しちゃおう☆―――つまりは読唇術だと思うのだが、動体視力の良い彼らにかかると実際特に喋っていなくても震えまでわかるという恐ろしい技―――により、“舞”の台詞を正確に理解し、
 「へ〜。部活ないってのにわざわざ図書館か。よく来るな〜」
 「(別にいいじゃないですか本好きなんですから・・・!)」
 「ははは。悪い悪い。そんなヘンな意味で言ったんじゃないって。ホント舞ってからかうと可愛いな」
 「(も〜・・・//)」
 口を尖らせる“舞”。英二は笑って中に入り、
 「んで? 何読むんだ?」
 「(あれ・・・ですけど・・・・・・)」
 指差したのは、割と高い所にある一冊。梯子でも持ってこなければ届かなさそうなそれに・・・
 「んじゃ俺が取ってあげるよ」
 「(あ、じゃあ梯子を―――)」
 「ンなの必要な〜いって。
  よっ!」
 軽く跳び上がる英二。軽くにしか見えなかったのに、まるで鳥のようにふわりと高く舞い上がり、目的の本を取ると音もなく着地した。
 「ホラ、な?」
 にっこり笑って本を差し出す。
 「(ありがとう・・・////)」
 “舞”もふんわり笑って礼を言い・・・・・・





 「にゃ〜〜〜vv どーいたしましてvvvvvv」
 「ってオイ英二!!」
 「カーーーーット!!!」





 仮定“舞”―――もちろん大石に抱きつき押し倒した英二。当然のように即行でカットを喰らった。
 「菊丸君! 確かに君は普段コミカルなキャラという設定にしてるが、それでも行き過ぎない!! 『にゃ〜』とか言わない!!」
 「え〜〜〜〜〜!!!??? いーじゃねーか素直な愛情表現っつー事で!!」
 「君らはどうであっても君と舞はこの時点でまだ部活の先輩と後輩だ!! いきなり抱きついたら変態になるだろう!?」
 「ああ!? 俺があんなヤツにンな事するワケねーだろ!?」
 大石を押し倒したまま、英二が演出家と大喧嘩をする。慌てるスタッフと、自分たちには関係ないのでほのぼの見学する一同と。
 一通り収まった―――多分に大石と助手の功績が大きい―――後、
 監督がぽんと手を叩いた。
 「じゃあ菊丸君、撮影終わったらそこのファミレスにでも食べに行こうか。いつも君達には世話になってるからね。少ないけど、ほんのお礼の気持ちだよ。
  ―――という事で、撮影テイク2、いいかな?」
 「オッケーオッケー超オッケー!! 俺めちゃめちゃ頑張ります!!」
 「英二・・・。俺への愛情云々は昼飯奢り以下なんだ・・・・・・」
 そんな大石の呟きはもちろん聞こえぬまま、その後の撮影は無事行われたのだった。

―――12

 




 ・・・基本は大事ですかね? そんなこんなで不二リョ&大菊に。もう基本に返りすぎて舞絡ませる事すら忘れてます。しっかし監督・・・、なんか鍛えられたな随分・・・・・・。

2005.10.13