1.the Reasons for Smile
                〜この喜びを君にもあげたくて〜






  THE☆結婚直前


 ここ最近、不二家はとてもにぎやかだった。青学王国王位継承一族たる不二家は。
 「由美子、ちゃんと準備は出来てる?」
 「出来てるわよ。物理的にも、精神的にもね」
 「何かあったら遠慮なく家に戻って来るんだぞ? いつでも待ってるからな」
 「本当に戻ったら戦争モノよ?」
 「大丈夫だ。たとえ戦争になったとしても、この国の者であり同時に娘でもあるお前に辛い思いをして欲しくはない」
 「国民[みんな]に聞かせていいのか悪いのか悩む台詞ね。
  だから大丈夫よ。確かに氷帝帝国の王子っていったらなかなか凄まじい噂が飛ぶ人だけど、適当に折り合いつけるしいざとなったら操るし」
 心配そうな両親ににっこりと笑いかけ、それこそさりげに凄まじい台詞を放つ不二家長女・由美子。その笑みのまま、黙ってこちらを伺っていた弟を見やった。
 「それに、彼は周助と同じ年なんでしょう? 大丈夫よ。子どもを手なずけるのは周助で慣れてるわ」





 (って姉さんは言ってたけど・・・・・・)
 やはり心配でたまらない。もちろんあの姉がそう簡単な事でへこたれたりする人間でないのはよく分かっている。だがしかし―――
 (氷帝の王子―――跡部景吾っていったらなんっかホントに凄い人だよねえ・・・・・・?)
 直接会った事はない。外交は王の父と母の仕事だ。青学王国では娘息子といえどまだ王位を継いでいない者はほとんど国の事には口を挟めない。せいぜい大きなパーティーの華として出してもらう程度。
 氷帝帝国は青学と丁度逆らしい。あそこでは実力があれば王だろうが息子だろうが、どころか一般人だろうが簡単に国の経営に参加出来るらしい。そして実力がなければ即座に落とされる。
 現在王を継いでいるのは偶然跡部家親子となってはいるが・・・・・・だからこそこんな厳しい環境下で王子にまでなる彼はどんな人物なのか気になる。
 (噂だけなら・・・・・・・・・・・・わがままでナルシーで俺様至上主義で逆らう奴は容赦なく潰して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 ―――考えれば考えるほどますます心配になる。
 「やっぱりここは―――
  ――――――事前調査しなきゃ!!」



 というわけで、不二家王子不二周助は、姉のためみんなのために跡部家へと潜入操作する事になった。



潜入、発覚、そして黙認