4.NonStop Rocket!
〜どこへでも連れて行きたい!〜
そこはかとなく間違った使用人生活3 夕方
その日、跡部・不二・佐伯の3人は乗馬を楽しんで? いた。
「よし! いいぞその調子だ。さすがこの俺様が見込んだだけあるぜ」
漆黒の馬を華麗に乗りこなし爆走する跡部に、2人で拍手を送る。
「すごーい! これがあの姉さんを引きずりまわした馬(誤)か〜!」
「さすがこの跡部が見込んだだけあるな・・・・・・」
「てめぇらも俺様の美技に酔いな!」
「う〜ん・・・・・・。なんかこの場合の『酔う』って・・・・・・」
「暴れられて悪酔いって感じだよな。本気でしそうだし」
「うん。ついていくのに首と目疲れて僕ちょっと気持ち悪い・・・・・・」
「って周ちゃん! 本気で大丈夫!?」
青い顔でふらつく不二を佐伯が抱き止め介抱する。まあそれは大事には至らなかったのだが・・・・・・。
「―――ねえ、僕もその馬乗ってみたい!」
そんなわけであっさり復活した不二が手を上げ提案してきた。
「アーン? てめぇが?
無理に決まってんだろ」
「む〜。そんな事ないって」
「ほお・・・。だったらやってみろよ」
「おい跡部!」
佐伯の心配を他所に馬へと近付く不二。ひらりと下りた跡部から手綱を受け取り、
楽々飛び乗った後―――ぽん、と馬に軽く触れた。
触れて、囁く。
「今日の夕食・・・・・・。
――――――メイン、馬刺しにならないといいね」
ヒヒ―――ン!!
パカラッ! パカラッ!
「いいよシルバー!!」
『・・・・・・・・・・・・』
凄まじい勢いで遠ざかっていった馬1頭と人1人を、頭の上に手を掲げて見送り。
「狂介さんが普通に駆って来れた理由がよくわかる一瞬だったな」
「ああ。全くだ」
「ついでにあの馬の本名は・・・?」
「さあな・・・。だが・・・・・・
―――『シルバー』じゃあねえだろ。いくらなんでも」
ψ ψ ψ ψ ψ
「兄貴ー! 跡部さーん! 佐伯さーん! そろそろ日が暮れますよーーー!!
―――ってなんで俺がンな事しなきゃなんねー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なかなか戻って来ない3人を呼びに来た裕太。呼び声をボヤきに変え、さらにそれを―――
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうすりゃいいんだ? コレ」
結局ボヤきに変えた。
「裕太〜?」
「ああ、姉さん」
「どうしたの? ぼーっとしちゃって。3人見つかった?」
「ああ、まあ・・・・・・ここに」
「ここ?」
指差され、由美子も見下ろす。確かにそこに3人はいた。低い位置にいたため目に付かなかっただけで。
「なあ・・・、コレどーすりゃいいと思う?」
「どうって・・・・・・、私に聞かれても・・・・・・」
「そりゃそうだけどさ・・・・・・」
庭に適当に(というと庭師が怒るか)生えている木。3人はその1本の根元にいた。
幹に凭れ寝こける佐伯。左には彼の膝を枕に地面にくるまる不二が、さらに右には横向きで彼の肩に背中と頭を預け上を向いた跡部が、こちらも同様に寝こけていた。
佐伯の手は両方にかかっている。左手は不二の頭を撫で、右手は跡部がずり落ちないよう抱き込んで。2人もまた、そんな佐伯に自分の手を重ねている。
自分たちだけの時の中で、3人とも、とても幸せそうに笑っていた。
暫く微笑ましげに2人で見守る。目覚める気配はない。
「まあ・・・・・・いつまでもこのままじゃ風邪引くわね」
「じゃあ―――」
顔を上げる裕太の肩に、由美子が手を置いた。
「頑張ってねv」
「俺かよ!?」