4.NonStop Rocket!
〜どこへでも連れて行きたい!〜
終わり良ければ全て良し?
その後、何をどういう流れを経たか本当に今回の問題の責任を取らされ佐伯はクビとなった。
「俺か? 俺なのか悪いのは・・・・・・?」
「クッ。残念だったなあ、佐伯。さっそくクビか」
追い出された門前にて呆然と呟く佐伯。その隣で実に楽しそうに鼻で笑う跡部。その両肩を掴み、佐伯は綺麗な笑顔で囁いた。
「お前にも立派に責任あるよなあ、跡部。さ〜って俺が取ったんならお前にも取ってもらおうか」
「ああ? 俺様のどこに責任があんだ? むしろ被害者だろうが」
「知ってて飲んだんなら立派に確信犯だ。自殺願望者を止めたとなれば俺は加害者じゃなくって救済者だと思うんだけどなあ」
「一国の王子を殴って気絶させた上ショック死か溺死に追い込もうとしたなんざ、てめぇの方がよっぽど罪重いんだよ」
「あ〜あ〜暫く見ない間に跡部王子はすっかりつまらない人になりましたなあ。そ〜んな位をカサにするような輩だとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「アーン? 何だその中途半端なところでの切れは。てめぇは俺様をどういう目で見てやがる」
両肩の手を払い、逆に胸倉を掴み、
「何にしろ、てめぇみてえな野郎目ぇ離してたら何し出すかわかんねえ。オラさっさと来い!」
跡部は佐伯を引っ張り、件の暴走馬車へと向かった。
「帰りはてめぇが運転してけ」
御者台運転手側へと押し込み、自分は隣に座る。2人が準備らしきものをしている間にも、他の者も別れの挨拶をしていた。
「じゃあ僕らも帰ろうか、琴美。ここで置いていかれると景吾君たちを引ったくり犯として訴えないといけないからね」
「そうね、狂介さん。では、長い間お世話になりました。今度は家の方へ来てくださいな」
「ええ。そうさせて頂きます」
そしてもちろん子どもの方も。
「じゃあ、私はもう少し家に残るから。虎次郎君、私がいないからって跡部君押し倒しちゃ駄目よ。両方同意の上でやらないと」
「何の話だ!!」
「もちろん、誠心誠意努力しますよ」
「努力とか言う前にまずやるんじゃねえ!!」
「じゃあね。サエ、跡部。またね」
「うん、周ちゃん。また2週間後」
謎な挨拶の後、佐伯は手綱を手に取った。
上を見て、呟く。
「そういやさ・・・・・・。
――――――馬の燻製って、美味いのかな(注:ダジャレではありません)?」
ヒヒ―――ン!!
パカラッ! パカラッ!
「よし! いいぞシルバー!!」
爆走する馬に引かれ、跡部は後ろに流されかけた体を御者台を掴んで止めた。
「普通に出発させろ普通に」
「いや、俺はただ単に素朴な疑問を口にしただけだけど?」
それこそあからさまな確信犯的笑み。ため息をついて、話題を切り替えた。
「つーかてめぇにしろ周にしろ、なんで『シルバー』なんだよ。どう見たって黒いだろーが」
「馬っていったらやっぱ『シルバー』だろ。たとえ黒くっても」
「本気でどこの世界での常識だよそりゃ・・・・・・」
「とりあえず不二家の? 由美子さんもそう呼んでたし」
「わかんねえよ青学・・・・・・」
変えた結果、ため息が二乗になる。つき終えて、
「そういや、2週間後っつーのは?」
「周ちゃん、まだ王位継いでないから今結構自由だしね。だから半月毎に青学と氷帝、両方で『実地学習』するんだそうだ」
「ちょっと待て。俺は許可してねえぞ」
「跡部家[ウチ]の使用人に関しては俺に全権があるんだろ?」
「ねえよ」
「あら? なかったか?」
「ンなモン元々ねえ。誰がやるか」
「なるほどなあ」
呟き―――佐伯が左側にいる跡部を引き寄せた。唇の触れる寸前で、囁く。
「お前1人以外は気を配るな?」
どすっ!!
「勝手に曲解してんじゃねえ!! てめぇは下っ端っからやり直しだっつってんだ!!」
気絶した佐伯を見下ろし肩まで上げた両手を戦慄かせる跡部に、さらに後ろから声がかかる。
「うん。確かに景吾君から押し倒すんだったら問題はないね」
「違げえ!! 何が悲しくて俺がこんなヤツ襲わなきゃなんねーんだよ!!」
「それはそうと景吾君、操り手を失くし馬たちがパニックを起こしているようだけど」
「ああ!?」
気がつけば確かに混乱している。元々爆走中だったためむしろ暴走した方がスピードが遅くなりわかりにくいが。
「くっそ・・・! 結局いつも最後に苦労すんのは俺かよ・・・!!」
「今のは一重に君が悪いと思うけどね」
「うっせえ!!」