4.‘天国への扉[ヘヴンズドア]’





 ヘヴンズドア―――天国への扉。
 それは、悪魔と人間が交わす契約の中でも最も高度で、最も深いもの。互いを完全に1つとする事で、悪魔は人間の持つ力の全てを手に入れることが出来、人間は力を差し出すのと引き換えに最上の快感を得る。
 力を、心を全て奪われた人間に待つのは死あるのみ。それでも快感は1度得ると病み付きになる。
 ヘヴンズドア―――天国への扉。
 これが・・・
 ―――悪魔が『悪』魔と呼ばれる所以。




















 ヘヴンズドア―――開けば死のみが待つもの。
 わかっていて、それでも俺はその扉を開く。
 病み付きになるように。二度と自分を手放せなくなるように。
 毎日毎日、そうやって躰に、心に刻み込む。
 俺さえいればいいんだ、と。
 そうやって、俺は彼に縋って生きている。過去のない俺に、他に縋るものはないから。
 ヘヴンズドア―――天国への扉。
 こうやって俺は、
 周ちゃんを、破滅へと導く。















 ヘヴンズドア―――開けば死のみが待つもの。
 わかっていて、だから俺はその扉を開かない。
 墜ちないように。決して彼を殺さないように。
 毎日毎日、そうやって自分に刻み込む。
 絶対、君は殺さない、って。
 そうやって、俺は彼に縋って生きている。心のない俺でも、彼は受け入れてくれるから。
 ヘヴンズドア―――天国への扉。
 こうやって俺は、
 跡部くんを、破滅から護る。





















 ヘヴンズドア―――悪魔と契約者の完全なる繋がり。
 わかっていて、だからこそ僕はその扉を開かせる。
 その腕の中で、繋がり合ったまま死ねたとしたらそれは本望だから。
 躰を抱かれ、心を抱かれ。
 全てを彼に預け、そこで朽ち果てられたら最高だ。
 ヘヴンズドア―――天国への扉。
 こうやって僕は、
 サエと共に、破滅へと墜ちていく。
















 ヘヴンズドア―――悪魔と契約者の完全なる繋がり。
 わかっている筈なのに、なのにアイツはその扉を開かない。
 その腕の中で、決して繋がり合えないまま俺は最大の屈辱を味わう。
 躰を抱かれ。されど心は抱かれず。
 何も預けられず、1人朽ち果てるこの寒さをコイツはわかっているのか?
 ヘヴンズドア―――天国への扉。
 こうやって俺は、
 今日もまた、独り破滅を願う。




















 「ふあっ! あっ! あっ!!」
 「ぐ・・・! 周・・・ちゃん・・・!!」
 「あ・・・サエ・・・・・・。
  ああ―――っ!!」










 「う・・・あ・・・・・・」
 「ん・・・。跡部、くん・・・・・・」
 「あ・・・千石・・・・・・。
  ―――っ!」

























 ヘヴンズドア―――天国への扉。
 開けるのも開けないのも、それは個々人の自由。

























―――5.閑談 −跡部と佐伯・千石と不二の場合−









ζ     ζ     ζ     ζ     ζ

 わ〜。今回短〜い。・・・ってそこは別にどうでもよくって。
 前映画であったんですよね、吸血鬼との
SEXは普段では得られないほどの快感だ、と。詳しい理由とかまでは観なかったんですけど、やっぱ互いにメリットがなければ契約(協力)はしなかろうなあ・・・という事でこうなりました。なお本文での人間2人の言い分どおり、ヘヴンズドアは例えるなら心のSEX。躰のそれとは違います。なので決して千石さんがヘタクソだとか不二が感じすぎだとかそういう事はないですよええ決して(力説)。
 さて次は、2人で利害一致しているサエ不二と違って妙にすれ違い気味のせんべ。想いが通じ合う日は来るのかそれともすれ違ったまま終わるのか!?

2004.7.4