8.魔道士1 −観月−


 「そういやこないだ話切れちまったけどよ、結局魔王ってどんなヤツなんだ?」
 「だから『さあ?』って」
 「それでどーやって倒すんだよ!?」
 「だからそのために様子見の捨て駒がいるんだろ!?」
 ・・・・・・ちなみにこの会話は当の『捨て駒』抜きで行っている。
 「つーか王なんだよな?」
 「ああ」
 「・・・そこは即答かよ」
 肩をコケさせる跡部に代わり、ケビンが口を開いた。
 「対抗すんだったらこっちも魔道使えるヤツ必要じゃねーのか?」
 そんなワケで、次の方針は『魔道士探し』となった。





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 「見つかったよ〜」
 千石が情報を持ってきたのが2日後。一行は、さっそく見つかった彼に会いに行く事にした。
 向かいながら、説明を受ける。
 「え〜っと、
  ≪観月はじめくん。魔道士。力はそこまで強くないが奸計をめぐらす事には抜きん出ている。相手を調べ上げ弱点をつく事が得意で―――≫」
 「止めようぜソイツ」
 「は? 何で?」
 「気が合わなさげだ」
 説明を途中でぶった切られ、挙句理由がそれ。佐伯以外の全員が肩を落とした。
 が、支配者もといリーダーが首を(縦に)振らねば。下っ端だけでは勝手に動けない。勝手に動けば後何が来るやら・・・・・・。
 「(待てよ・・・)」
 「(コイツが気が合わない・・・・・・?)」
 「(観月くんは参謀タイプ・・・・・・)」
 「(リーダーに参謀が勝ったら・・・・・・・・・・・・?)」
 素早い目配せで、全員の意見は固まった。
 「けど魔道士は必須だろ?」
 「いやいればいいってモンでもないから」
 「だが魔王に戦い挑みに行くんだろ? スカでも魔道士はいねえとなあ」
 「それにここで逃すと次見つかるやら」
 「むう・・・・・・」
 「そこで提案なんだけど、サエくんが交渉に行ったらどうかな? 実際話してみたら合うか合わないかわかるっしょ」
 「・・・・・・・・・・・・。わかったよ」





 こうして魔道士に会いにいった佐伯。後姿を見送り、全員でガッツポーズを取った。
 「よし。佐伯の天下が終わる」
 「奸計が得意ならこのチームに入らない手はないっしょ」
 「しかもそーいうヤツならもちろん実権握るよな」
 「相手魔道士だよね」
 「いくらトリックスターだろーが魔道士相手にゃ歯は立たねえだろ」
 くくくくく・・・と笑う一同ではあったが。





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 1時間後。
 ずどーーーーん・・・・・・・・・・・・。
 『は・・・・・・・・・・・・?』
 突然の爆発に、全員の目が点になった。
 爆発のあった方向を見る。魔道士が住んでいるという―――故に佐伯が向かっていった方。そちらでは・・・・・・
 「あり・・・? 景色、変わってる・・・・・・?」
 「変わった、っつーか・・・・・・」
 「山1つ、なくなってないか・・・・・・・・・・・・?」
 偶然・・・だろうか? たまたまこのタイミングで、何か別の爆発事件とか自然災害とか起こったのだろうか?
 そうなのだろうか。出来ればそうだと信じたいが・・・・・・。
 「―――ただいま〜」
 さらに1時間後、佐伯が帰ってきた。「あ〜疲れた〜」といった感じで肩をコキコキ鳴らす彼からは、とても山1つ吹っ飛ばしてきたような印象は受けない。ちょっと埃にまみれているが、これも歩いてきたからだと言われれば納得出来る感じ。
 『・・・・・・・・・・・・』
 じっと佐伯を見る。佐伯を。彼、ただ1人を。
 「ん? どうした?」
 全員の視線にさらされ、さすがに居心地の悪さを感じたか佐伯が首を傾げた。
 誰が『それ』を訊くか再び全員で目配せをし、
 話を持ってきた責任で千石が問う事になった。
 「・・・・・・・・・・・・おかえりサエくん。でもって観月くんは?」
 「ああアイツか? やっぱ合わなかった」
 「そう・・・・・・」
 合わなかったから。だからどうしたとは訊けない。
 「じゃあ千石、次いたらまたよろしくな」
 「う、うんそーだね・・・・・・。はは・・・・・・・・・・・・」



―――9.幸村