@.助けを求めたら断られた(決定打は山吹色のお菓子だった)。
「お願いです旅のお方! 助けて下さい!!」
「嫌v」
カーン・・・・・・・・・・・・
こうして、1つの物語はピリオドを・・・
「―――ってちょちょちょちょ〜っと待ったサエくん!! 君今の反応は人としてどう!?」
勝手にエンドロールを回そうとした佐伯を、同席していた千石が強制的に止めた。
両手を胸元で合わせたまま呆気に取られる少女。全く視線を送る事すらなく佐伯はぴっと指を立て、
「『人としてどう』。
即ち人じゃない俺には関係ない、と」
「いやそー言われてみればそうだけどさ・・・」
ちなみにこう言う佐伯は悪魔である。羽根を隠し人間の世界で生きてはいるが、理由が『人間社会[こっち]の方が飯が美味い』な時点でまっとうに生息する気はないらしい。
「それにホラ、悪魔は人不幸にしてなんぼのものだから」
「絶対今てきと〜に思いついた理由っしょそれ・・・・・・」
「―――悪魔!?」
頼み込んだ少女がずざざざざっ!!と下がる。
佐伯も驚愕の表情でそちらを指差し、
「ほら!! そっちから頼み込んでおきながら悪魔ってだけでこの反応!! 種属差別だろ!?
なんでそんなの受けてまで俺が助けてやらなけりゃなんないんだよ!!」
「―――っ!!」
少女が雷バックに崩れ落ちた。どうやらショックを受けたらしい。
周りの者も気まずげに視線を逸らし・・・
「言ってる事は素晴らしいけどさあ・・・・・・
・・・・・・言う前に『よっしゃ!』とか小さくガッツポーズするのは止めようねサエくん。説得力完全に消え失せるから」
『・・・・・・・・・・・・』
・・・千石のそんな指摘に、逸らしたまま倒れ込んだ。
「どうしたのサエくん? 今日は随分消極的で」
「ん。
今この街にリョーガが来ててな」
「ああ、それでリョーガくんと離れたくないと? リョーガくん聞いたら泣いちゃうよ?」
「ああ。
おかげで俺の生活は保障されててな。さすが、持つべきものはパトロンだ」
「だからリョーガくんの前では言わないであげてね」
よどみなくさっと付け加える千石。それこそ『持つべきものは対応に慣れきった友人』だ。
「そういうお前はずいぶん積極的だな千石」
「当たり前じゃないか」
「頼み込んできたのが街一番の美少女だったから? ムサい男なら即行で断った?」
「当たり前じゃないか」
再びためらいなく返事する。こんな彼もどうかと思うが・・・
「ちっ・・・。なんでよぼよぼの長老とかが直接来ないんだよ・・・」
「ははっ。この辺りのお約束はどの街でも共通だからね。
ね〜?」
「え・・・? いやあの・・・・・・」
突如話題を振られ少女が困り果てる。事実その通りなのだからタチが悪いというか単純というか。
引く少女の腰を抱き手にキスをし、
「君のためなら火の中水の中敵の中。どんなヤツが相手だったって立ち向かうよ。
―――というワケで報酬は君でいいんだよね?」
「え・・・・・・・・・・・・?」
「なら俺はやっぱ断るよ。報酬がその娘じゃ到底金にはなんないし」
「え・・・・・・・・・・・・?」
前半と後半で微妙に変わる口調。この辺りは複雑なヲトメ心というものだ。
「じゃ、俺に話してみてねv」
「は、はあ・・・・・・」
千石と佐伯に、交互に視線を送る少女。手を握ったままにこにこ笑う乗り気の千石に対し、佐伯は完全に興味がないかオーダーしたジュースを美味しそうにちるちる飲んでいた。
努めて佐伯は無視し、少女が話を始める。
「実は、この街に盗賊が現れまして―――」
「オッケーその話乗った!!!」
「サエくん周りがビビるからよだれは垂らさない!!」
・・・始めた途端態度一変。佐伯が握り拳を作り身を乗り出してきた。その頭にあるのは、もちろんお約束の方程式。
盗賊。人から金品を奪う。即ち金持ち。しかも犯罪者だから苛め倒した挙句パクっても問題なし。
「完璧だ・・・!! こういうのを俺は待っていた・・・!!」
「そ、そうですか・・・。じゃあ・・・・・・」
泣く一歩手前で何とか頑張る少女。長老たちの元へ案内しようと席を立ちかけ・・・
「―――ああその前にストップ」
「何か?」
振り向く少女に、
問う。
「それで、依頼料は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ホンットサエくんって、この上なく悪魔らしい悪魔だよね・・・」
「サンキュー」
「どういたしまして」
―――A.核心への迫り方が犯罪。