B'.懲りずに一般市民に牙を剥く。


 危うく@に戻りかけた展開をなんとか続けさせ、
 「それより何か今不幸な事故により倒れた人、人っぽいから何か聞けるんじゃない?」
 「事故でした・・・? 立派な人災だと思いますけど・・・」
 「立派な人災! 即ち越前に損害賠償を請求―――!!」
 「しても君の懐には入らないから!!
  でもって君も!! 余計な事言ってサエくんの気ぃ紛らわしてどーすんの!?」
 「・・・・・・すみませんでした」
 それこそ理不尽な理由により怒られたが、反論しても不毛そうなので止めておいた。
 素直な少女にうんうんと頷き、
 千石はさらにうんうんと頷いた。現れ(るなり吹っ飛ばされ)た、ローブ姿の老人に向かって。
 「もちろんいろいろと話してくれるよね?」
 「嫌に決まっておるだろう!?」
 「は〜。やれやれ」
 「ワシか!? 困ったさんはワシか!?
  現れるなり吹っ飛ばされた上脅迫されて拒否ったワシに何の非がある!?」
 「拒否った非」
 「吹っ飛ばした非と脅迫した非はどうなったんじゃ!?」
 問われ、ふと千石が黙り込んだ。
 ぽんと手を叩き、
 「じゃあ公平な第3者に聞いてみよう」
 それを合図に、今まで目を閉じ黙って聞いていた佐伯が手を上げ振った。
 判定を、下す。
 「ウィナー千石。
  理由もなく拒否は良くない。相手が傷つくじゃないか」
 「吹っ飛ばされて傷ついたわ怪我したわ!!」
 「即ち吹っ飛ばした越前に非があるワケで千石にはない」
 「脅迫は!?」
 「怪我してないだろ今のところ?」
 「今のところ!? これからすんのか!?」
 「しないに決まってるだろ? そしたら『脅迫』じゃなくなんじゃん」
 「なら―――!」
 「したら名称変えないと」
 「それだけか!?」
 吠え、
 老人もまた、手を振った。
 「ならばワシも判定を下す!! 出でよ我が僕ども!!」
 グギャアアアアアアアアア・・・・・・!!!!!!
 それは雄叫びだったのかそれとも断末魔の悲鳴だったのか。
 わからないまま、老人の後ろから現れた『僕ども』とやらも登場後即座に退場していった。
 「・・・・・・・・・・・・」
 『・・・・・・・・・・・・』
 無言で上げた手から超危険な破壊光線を撒き散らす佐伯を、一同もまた無言で見守る。
 やがて本当の静寂が押し寄せ・・・
 佐伯は上げた手を指差しポーズに変え老人を指した。
 「卑怯だぞ判定にサクラを呼ぶなんて!!」
 「それを問答無用で滅殺した貴様は卑怯じゃないんか!?」
 老人もまた叫び返す。が、
 受けた佐伯はなぜか残念そうに首を振り。
 「判定に公平性を期すためだ。仕方ない」
 「仕方ない、かなあ・・・?」
 「それってアレですよね。《殺しは禁止!》とかルール作って殺した人は死をもって償うって感じの」
 「ああ。『本末転倒』とか『矛盾』とか言うヤツだよね?」
 「そんな事ないぞ? だって今大事なのは『判定をちゃんと行う事』だからな」
 「だから?」
 「そのためなら如何なる犠牲をも払う。たとえ山が平地に返ろうが人が土に還ろうが!!
  ―――あ、もちろん当事者は残すぞ? 『判定を受ける』って役割があるからな」
 「・・・アリガト」
 「だがそうか。こんな回りくどい事してないで、有利になれるように敵対者は直接潰せばいいのか」
 「それこそ『本末転倒』では・・・・・・」
 「けど多分それが一番被害小さいだろうね。だからやってねなんて言わないけどね」
 ため息をつき千石が釘を刺しておいた。ちっという舌打ちは
100%本気だろう。
 どうでもいい事を考える。
 (リョーガくんって・・・、こんなサエくんのどこが好きなんだろ・・・・・・?)
 と―――
 「それならワシも言わせてもらう!!」
 「お? 何かホントの裁判っぽくなってきたなあ。じゃあ被告どうぞ」
 「原告じゃないのか!? 訴えたのはワシじゃろ!?」
 「その前に拒否っただろ?」
 「吹っ飛ばされたのは結局無視か!?
  大体貴様のどこが第3者なんじゃ!! 明らかに共犯じゃろ!?」
 「違う」
 即答。
 「・・・・・・お前ら『仲間意識』っちゅーモンはないんか」
 「ない」
 再び即答。
 「・・・・・・・・・・・・。
  これだから近頃の若者は・・・」
 何かに悟りを開き、
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ところで今ワシら、物凄く馬鹿な事をやっていないか?」
 ついでに何かを気付いたらしい。
 「そうだねえ・・・」
 「そうだなあ・・・」
 佐伯・千石両名は揃って頷き、
 言った。





 『だから、もちろんいろいろと話してくれるよな/ね?』







・     ・     ・     ・     ・








 そしてようやっと白状したところによると、この老人は昔からこの山に住んでいるらしい。何かずこばか騒がしいので来たそうだ。
 「元気が良い事はいい事じゃが、次からは人様に迷惑はかけるなよ?」
 「自分に『様』とかつけちゃってるよ」
 「景吾がつけると可愛いけど、普通の人がやると何かキモいな」
 「うるさい//!!
  でもってもっと仲良くしなさい」
 『はーい』
 反省0で手を上げる2人を信用度0の眼差しで見やり・・・・・・、
 開いた悟りにより、老人はそれ以上何も言わないまま去っていった。
 見送り、
 少女が呟いた。
 「つまり、今回の盗賊騒ぎには何の関係もないんですね」
 『・・・・・・・・・・・・』
 そんな結論に笑顔で頷き・・・
 『そして完』
 「だ〜か〜ら〜!! 勝手に終わらせないで下さい!!
  事件はまだ続いてるんですよ!? というか欠片程度にしか進んでないんですよ私達!?」
 「むしろ欠片程度は進んでたのにびっくりだ☆」
 「ああホントにびっくりですよ実は進んでたのに・・・・・・!!」
 「だから完」
 「中途半端に終わらせるならいっそ進めんなあああ!!!」
 ついにぶち切れて少女が叫ぶ。
 ぜ〜は〜ぜ〜は〜荒い息をつく少女。その肩に手を置き、今度はこの男が続けた。
 「わかってるわかってる。事件は会議室じゃなくって現場で起こってるんだろ?」
 「どこですか『会議室』・・・?」
 「だが!」
 そんな突っ込みは無視し、佐伯は辺りをばっ! と指し示し、
 「その現場がこの有様で果たして何を続けられるというんだ!?」
 「それもそーだよね」
 「だろ?」
 「いえすみません。現場をこの有様にしたのは私達と言いますかあなた達ですし、そもそもここは現場じゃないと思いマス」
 「ぬう」
 一度キレてむしろ冷静になったか、少女は実に冷たく返してくれた。
 微妙にむくれてから気を取り直し。
 「わかった。じゃあそもそもの現場がなくなればいいんだな?」
 「えええ!?」
 素晴らしい本末転倒理論に、一度は冷静になった少女が悲鳴を上げた。なお上げなかった千石は小さく指を立てている。
 「行っくぞ〜」
 掛け声は軽く。込めた力も軽く。せいぜい山が3割ほど消滅する程度だろう。これなら鉱脈は潰さず、アジト希望地点程度は無くせるか。
 生んだ魔力弾をぽいと放ろうとして。
 『待てえええええええええ!!!!!!!!!!』
 辺りを3人以外の声が木霊したのは、この時だった。






 ちなみに少女の努力により、この話は一応まだ続く。





―――C.変なヤツが良識人だった(見た目と中身の善悪度が反比例)。