C"'.変なヤツは変だった。


 「助けてリョーマく〜〜〜〜ん!!!!」
 「いや私達の方が助けて欲しいんですけどあなたから・・・・・・」
 叫んで飛び去る(邪魔な木々も根こそぎなくなったので飛べるようだ)不二を見送り、
 少女は、今回も守られついでに下に潰した千石に問い掛けた。
 「千石さん、割と確信を持ちつつ再び質問ですけど・・・」
 「《悪魔
100名に聞きました。この人(じゃないけど)は凄いと思う》ランキング2トップのもう1人は不二くんだね。純粋すぎて悪魔より怖いって大絶賛だよ。
  リョーマくんも契約したはいいけど手に負えなさ過ぎて、跡部くんに押し付けて逃げたし」
 「なんで、そんなんと契約しちゃったんですか・・・?」
 「いや一応神官見習いだし。それっぽく天使と契約したら神官になれる・・・・・・ハズだったし」
 「出来なかった、んですか・・・」
 「だってアレだしねえ。出来ないどころかおかげで神殿追い出されたよ」
 「はあ・・・」
 「ただしもっと不幸なのはリョーガくんだね」
 「ああ、なんかタカられてる人」
 「一応リョーマくんのお兄さん兼サエくんの前の契約者なんだけどね。
  『周ちゃんが人間と契約!? 心配だ!!』とか言うサエくんに無理やり契約させられて。こっちも神官見習いだったんだけど、悪魔との契約なんてもちろん許されないから地位まで剥奪されちゃって。しかも不二くんの契約者が跡部くんになった時点でお払い箱だって捨てられちゃった。
  それ以来、今でも諦められずに接触してはタカられて殴られてしてるね」
 「うわあ・・・・・・」
 説明を受け、少女は何とも微妙な感想を述べた。周りの人を片っ端から不幸にするという存在意義において、確かに佐伯はこれ以上ないほど『悪魔』だった。
 そんな彼のいた方を見やる。爆発の中心点。
 佐伯が褒めた通り、不二は本当に破壊に指向性を持たせていたようだ。おかげで横にいた自分たちは吹っ飛ばされた程度で済み・・・
 ・・・おかげで直に喰らった辺りはどうしようもないほど破壊され尽くしていた。これではさすがの佐伯も生きては・・・
 「ちなみにさっきのランキング、『2トップ』なんて言いつつ実はサエくんがずっとトップ独走でさ。票数も3対1くらいサエくんの圧勝なんだよね」
 「そうなんですか?」
 「そう。で、その理由が・・・」
 言っている間に砂埃が収まってきた。抉れた土の中心に、黒い物体が蹲っている。
 「佐伯さん!!」
 呼びかけた通り、それは佐伯だった。羽根で身を守り、何とか生き延びていたようだ。だが、その身に受けた傷はとてもとても甚大で・・・・・・
 「気持ち悪いだって。周ちゃんが俺の事、気持ち悪い・・・。
  だって悪魔[おれら]の生活圏、こんなトコだもん・・・。虫か雑草か食べて生活してんだもん・・・。雑草だけだったらたんぱく源足りないんだもん・・・。獣とかだと1回で食べきれない分勿体無いし、魚は川ないと泳いでないし・・・。
  けど気持ち悪い・・・。周ちゃんのためなら止めるべきか・・・。でも獣むしゃぶってる方がビジョンとしては遥かに気持ち悪いと思うんだけどな・・・・・・」
 のののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののの・・・・・・・・・・・・
 蹲り、ひたすら抉れた土にのの字を書く佐伯。精神的ダメージは間違いなく甚大だ。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「と、あれだけの攻撃を喰らいながら完全スルーで、あくまで『気持ち悪い』だけを気に出来るサエくんはほんっと〜に凄い! ってみんな思ってるよ。てゆーかそもそもあんな風に不二くん育成したのもサエくんだしね。
  まさしくザ・キングオブ凄い人」
 「悪魔ではありませんが、私も佐伯さんに1票ですね・・・」
 言っている間に・・・は収まらずさらに
10分ほど経って、佐伯が復活した。
 溜まった涙をごしごし擦り、据わった目でかろうじてこちらも吹っ飛ばされただけの盗賊(数は半分ほど減ったか?)を指し、
 「だからこの恨みはお前らで晴らす!!」
 『何でだ!?』
 「何でもいい!!」
 「うわ・・・。完全八つ当たり」
 「ああもーサエくん素敵だよ・・・」
 『お前ら止めろよ!!』
 『いや無理』
 ハモる向こうに合わせこちらもハモって首を振る。絶対に無理だった。本気の佐伯を止めるなど。こればかりは『やってみる事にとりあえず意義がある』などとも言えまい。
 そう、無理だった。ゴゴゴゴゴ・・・と膨れ上がる殺気と魔力で山を振るわす存在を止めるなど。
 盗賊ばかりでなく、千石と少女にも無差別に恐怖を撒き散らす佐伯。成長の度合いは不二以下らしい。
 そんな、とっても怖い佐伯が宣言する。
 「お前ら一人残さず滅殺するからちゃちゃっとやられろよ!? そして2度とこんな馬鹿な真似はしないよう、物理的金銭的に根こそぎ壊すからアジトの場所を白状しろ!!」
 「わかりました言います白状しますアジトの場所!! だからせめて滅殺は勘弁―――!!」
 「ん? 簡便にやって欲しいのか?」
 「違います!! 勘弁して下さい!!」
 「わかってる冗談だ。
  で? アジトの場所は?」
 「あれ? 意外と簡単に許すんだね?」
 「ああ。滅殺する様もまた気持ち悪いかと思ってな」
 「・・・。
  すいません。意見変えます。
  不二さんの方が凄いと思います。ここまで佐伯さん操れるなんて」
 「実は俺もそう思うんだよね・・・」
 頷き合う2人はいいとして、盗賊一同は揃って指を差した。アジトの場所・・・・・・だったところを。
 不二に吹っ飛ばされ、現在は土と土と土だけになっていた。価値のありそうなものは、残骸も残っていない。
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
 
30秒ほど、無言の時が続く。
 「あっち・・・・・・でした」
 「そうか」
 「あっち・・・に、ありました。ちゃんと。吹っ飛ばされるまでは」
 「そうか」
 「あと・・・他には、
  ――――――ありません」
 「そうか」
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
 言う事はなくなった。佐伯を除いて。
 笑顔で頷く。
 「俺は今とても冷静だ。冷静な頭でもう一度だけ問う。
  お宝は、ないんだな?
 『はひ・・・・・・』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』





 「滅殺決定」
 『冷静さと気持ち悪さはあああああああ!!!!!?????』







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 こうして、山の消滅は1割から8割ほどまで引き上げられた。





―――D.主役がラストまで出てこない。