失敗例1―――忍足
「お前が犯人だな忍足!!」
「何の話やねん」
突然同室者の佐伯に指を差され、忍足はため息と共にそう返した。突然ワケのわからない事を喚かれたら普通もう少し騒ぐものだろうが、佐伯の言動は8割がワケがわからないとくれば、忍足の落ち着ききった態度も納得出来るものだろう。
実際納得したので佐伯も何も文句を言わず続けた。
「とぼけるな!! お前が俺の財布を盗んだ事はわかってるんだぞ!?」
「・・・めっちゃ文句出とんやん」
首をコケさせ、
そのまま尋ねる。
「財布? 俺が? なして?」
「つまりそれは、お前は俺と違って別に金にも困ってないしそんな財布如きで慌てふためく俺は滑稽でたまらないと―――」
「訂正!! そら大変な事やなあ!! 詳しく聞かせえ!!」
「昨日の夜の事だ。寝静まった俺の隣でお前はそっと俺のバッグを開き中から財布を―――」
「事実を!! 詳しく聞かせえ」
「違ったのか?」
「もしかせんでも・・・
・・・・・・俺が『とぼけ』とってお前が『わかってる』んはそれなんか?」
「違うのか?」
「ちゃうわ思いっきり!!」
事程左様に、佐伯はワケがわからない。わかっている筈の事をわからなく盛り上げる、と言うべきか。
そう。このように。
「何やのその目。そない俺が信じられへんか?」
「ああ」
「・・・。やったら荷物検査でもせえや!」
「キレたと見せかけその自信。どうせ隠蔽済みだろ?」
「そこまで信用ないんか俺は・・・・・・!」
「ない」
「・・・・・・」
綺麗に断言されてしまった。
もういっそそれでいいような諦めの境地にも達しかけるが、なにせ相手は『金の恨みは末代まで祟らずその代で滅ぼせ』が流儀の佐伯。ここで肯定してしまえば、精神的慰謝料だの何だの名目つけられて骨の髄までしゃぶり取られ絞り尽くされるだろう。
落ち込みかけた気分を建て直す気分で立て直し、
忍足はじっと佐伯を見つめた。
「な・・・何だよ」
たじろぐ佐伯をさらにじっと、じ〜〜〜っと見つめ、
「佐伯。俺ん目よ〜お見てみい。これが嘘つく男ん目か?」
「・・・・・・」
今度は即答されなかった。
佐伯も負けじとじ〜っと見つめ、
首を振った。
「何考えてるかさっぱり読めない。やっぱお前が犯人か」
「ちょお待ちい!! こん真摯な俺ん目ぇ見てな〜んも感じひんのか!?」
「だってお前心閉ざしてんだろ?」
「別に閉ざしとらんわ!!」
「つまり無意識で」
「しとらん言うとるやろ!? 開いても尚お前ん俺理解度はそこまで低いんか!?
俺今めっちゃ開けっ広げやで!? 懐開いてどんと来いやの状態やで!?」
「で、その懐には俺から盗った財布が」
「ないわあああああああ!!!!!!!!!!」
成功例2―――千歳(helper金太郎)