成功例2―――千歳(helper金太郎)
コート脇を移動中。
「あれ?」
「どうしたとね金ちゃん」
「何やろアレ?」
「アレ?」
尋ねた時には、既に金太郎は移動していた。軽く走り、落ちていたものを拾い上げている。
あちこち引っくり返し眺める金太郎に追いつき、
「財布・・・ばいねえ」
「誰かん落としモンやろか? やったら交番届けなな」
「よう知っとるばいねえ金ちゃんは」
「謙也に教わったんね!」
「えらいえらい」
頭を撫でてもらって喜ぶ金太郎。千歳も微笑み金太郎が振り回す財布に目を落とし、
ふとそれに気付いた。
(<Saeki>・・・・・・?)
「・・・・・・・・・・・・」
笑顔で数秒固まり、
撫でていた手をぽんと叩く。
「ばってん、ここには交番ないとね。困ったばいねえ」
「せや! 俺ら合宿中やった!!」
「やからどうとね金ちゃん? こんまんまにしとくんは」
「こんまんま?」
「そうばい。こげん所に落ちとるっちゅー事は、落としたモンも今合宿中ないしはそれに関わっとるとね。
こんまんまにしちょったらそん内気付いて取りに来るでっしゃろ。ヘタに持っていかん方がよか」
「せやな!」
さりげなく話題誘導。何も疑う事なく納得した金太郎は、財布をそこに戻してくれた。
手を合わせ、一礼する。
「早よ持ち主ん元に戻りますよーに」
「・・・・・・・・・・・・」
(まあ、ホンマに早よ戻りそうばいねえ・・・)
あの佐伯が。まさか財布を落としたままずっと気付かないなんて事はないだろう。
「ん? どないしたん千歳?」
「いいや? 何でもないばいよ金ちゃん」
見上げてくる金太郎に穏やかに微笑み、
千歳は手持ち無沙汰になった手をやはり彼の頭に乗せた。
「お祈りするなんて、ええ子ばいねえ金ちゃんは」
「えっへっへ〜vv」
そして2人もまた、財布から去る・・・・・・。
失敗例2―――リョーガ