失敗例2―――リョーガ
「そーかお前が犯人だったのかリョーガ」
「別に俺は何も盗んでねえぜ?」
「・・・お前よおワケわかんなあリョーガ」
突然指を突きつけそんな事を言って来た佐伯に平然と答えたリョーガを、忍足は心底感心した。自分は話をわかっているからいいが、周りで2人のやり取りを聞いてしまった者は「? ? ??」と首を傾げたり互いを見合ったりと忙しい。
会話の先取りをされたからか驚愕の表情を浮かべる佐伯。無視してリョーガは、後ろにいた忍足に目をやった。
笑い・・・
「ああ、そりゃコイツが―――」
「やっぱりお前だったじゃないかあ!!??」
「はあ!!!???」
・・・それから一転、こちらの方が驚愕の表情で佐伯に向き直った。
佐伯はなぜか目をうるうるとさせ、
「だってお前今俺が何も言わないうちに『盗み』だなんて断定して!! 犯人はそうやってボロ出していくモンなんだぞ!?」
「お前が積極的に犯人探しするなんつったら他に何も考えられねえからだろ!?」
「そらそやね・・・」
「そんな・・・!! お前は犯人じゃないと信じてたのに・・・!!」
「信じてんだったら現れるなり人の事名指しで犯人扱いしてんじゃねえしかも人前で!!」
「そこであっさり否定してこそ無実の証明となるんだろ!?」
「あっさり否定したら有罪確定になったじゃねえか!!」
「見ろ! だから周りだってお前に疑いの目向けてるだろ!? 火のない所に煙は立たないんだぞ!?」
「お前が火ぃつけたんだろ!? 明らかに放火だっただろ今の!!
何か!? お前そんっなに!!
俺に恨みあんのか!?」
「落ち着きいリョーガ。自分キャラ変わっとんよ?」
「それはお前の方だろ!?
日々俺に生活費を徴収されなけなしの余りもまた取り上げられて。そうして溜まった積年の恨みをついにこの、いつもと違う選抜合宿という場で晴らそうと・・・!!」
「積年・・・って、自分ら暮らし始めてまだ1ヶ月も経っとらんやろ・・・?」
「わかってんだったらちったあ改善しろよ!! 終いにゃ本気で恨み晴らすぞ!?」
「なるほどそれが動機か。立派な自白だった」
「してねえ!!」
ついには血涙でも流しそうなノリで叫ぶリョーガ。が、佐伯は一人納得しっ放しのまま指を立てた。
「自白に動機。となると次に来るものが何か、もちろんお前にはわかるよな?」
「―――っ!!」
リョーガが顔を上げる。輝く顔で、指を立て返して、
「そーだ証拠だ!! たとえ自分が犯人だと名乗り出ようが証拠がなけりゃ逮捕する事は出来ねえ!! だからわざと名乗り出て証拠不十分で釈放されるかさもなけりゃ本当に自白したいヤツは証拠持参で―――!!」
「違う」
・・・最短でぶった切られた。
萎えたリョーガに立てた指をそっと突きつけ、
佐伯は言った。
「賠償だ」
「俺はやってねええええええ!!!!!!
誰か聞いてくれよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!」
成功例?―――英二(entrapper大石)