Chocolate　Kiss
<sup>〜side　F〜



４



焼き終わったスポンジ。
泡立て終わったチョコクリーム。
洗い終わったフルーツ。
そして･･････潤んだ目で最早一切拒否をしないキミ。
準備は全て終わった。
後は仕上げだけ。
「じゃあスポンジの切った面にハケでシロップを塗ろうね」
はい、とハケを手渡す。
まだ使っていない、柔らかな毛先を、
わざと越前の指に軽く当てる。
人間の体で２番目に敏感な指先に。
「ん･･････」
与えられた刺激を受け取るように目を細める彼のこの頷きは、果たして返事かそれとも喘ぎか。
けどそれには応えず、そのまま渡した。
目だけで訴えてくる越前。
それから逸らしてシロップの入った器を手に取る。
それが、僕の返事。
はっきり口に出して言えるほどに追い詰めなきゃね。
「････････････」
数秒して･･･小さくため息を洩らして、越前は器を受け取った。
残念。





‡　　‡　　‡　　‡　　‡





「やあ･･･！　先輩･･････！！！」
完成まで後少し。
ホイップクリームとフルーツで上を飾りつける越前を、
後ろから性急に掻き抱く。
せっかく出来ていた飾りが絞り袋に当たって潰れる。
「何･･･するんスか･･･！！」
完成、させたくはない。
いや･･･完成は、して欲しい。
ただ、それが君の手によって、というのが嫌なだけで。
耳朶をかじり、耳の後ろから項にかけて舐め。
エプロンの間に手を入れ、胸の飾りを摘み、捏ね、引っかき。
横腹を撫で、脚を擦り―――そして体の中心に手を伸ばす。
「ん、あ･･･やん･･････！！」
今まで半端に煽ってはかわしていたのに一気に高められ、
「は･･･、んあ･･････！！」
それでも懸命に唾を飲み息を整え、完成させようとする越前にどうしようもない怒りが込み上げてくる。
そんなに完成させたい？
「ねえ、さっき越前さ、ハケ当てられてすごくいい顔してたよね」
「え･･････？」
余裕が、なくなる。
笑顔が、崩れる。
気持ちが、爆発しそうになる。
「こんな事、して欲しかったの？」
「――――――！！！」
シロップで濡れたハケで、めくったエプロンの下をくすぐる。
「ふあ。あ･･･あっ･･･」
更に崩れていくケーキ。
腕の中でびくびく体を震わせる越前。
腰を抱きながら、横に回りこんでエプロン越しに完全に立ち上がった胸のしこりを舐める。
「ひや･･･あん･･････！」
堪えたいのか、
もっと味わいたいのか、
越前が絞り袋を落として僕の頭に両腕を回してきた。
そんな越前を一瞬だけ抱き締めて―――
軽く突き飛ばした。
「うわ･･･！」
情けない声を上げて、
腰が抜けたようにぺたりと後ろに尻餅をつく。
足を開き膝を立て、
エプロンの紐は肩からずり落ち。
まるで出来の悪いストリップ。
赤くなる越前を、
くすりと笑って、
手にしたハケに余っていたチョコをたっぷりつける。
「『チョコケーキ作り』の一番のポイントを教えてあげるよ。
如何に相手に『食べたい』って思わさせるか。
そう。こんな風に･･････」
ズボンを下げて、再びその中のものを取り出す。
先程のまま、越前の唾液に光って膨らんだもの。
ためらいなくそこにハケでチョコを塗りつける。
それを越前に見せ付け、
「―――食べたくなったでしょ？」
こくり、と頷く越前。
大きく開かれた目。
気持ちを代弁するかのように、開かれた脚の間から先走りの液が滴る。
膝立ちになって、越前がチョコのかかったそれにしゃぶりついてきた。
恍惚とした表情で、一心不乱に口を動かす。
徐々に浮かせた腰が揺らいでいき、
ぽたぽたと垂れた唾液が、精液が、フローリングの床に白と黒の水溜りを作る。
夢中になって食べる越前の腰を掴み、高く持ち上げる。
「んん――――――！！」
それだけで、あっさり達する。
そして･･････同時に強く噛まれ、僕もまた達した。
「うあ･･･！」
いきなり流し込まれた汚物に、口を放して越前がむせ返る。
飲みたくは、ないだろうね。
四つん這いで口の端から赤黒い液体を垂らしたまま、見上げてくる。
そんな越前に、落ちていた絞り袋を拾い上げ、見せ付けて嗤った。
ついに来た、君の理性[ｺｺﾛ]を粉々に砕くこの瞬間に。
「じゃあキミも飾ってみようか。
可愛かったら食べる気になるかもね」
『食べる』
誰が？
君の、想い人が？
それとも―――僕が？
エプロンでは覆われない背中をなぞり、
双丘の間に指を差し入れる。
「ひ･･･あ･･････」
まだ堅い蕾を探り当て、そこに絞り袋を押し付けた。
「まずはクリームをつけなきゃね」
ぶちゅぶちゅと、
片手で絞り、もう片方の手で入り口を無理矢理こじ開ける。
「痛･･･！！」
「痛い？　『気持ちいい』の間違いじゃないの？」
「や･･･痛い！！　先輩、やめて･･･！！」
高い声でそう叫ぶ越前。
その懇願通り、両手を離して
「はい。やめたよ」
「え･･･？」
「何驚いてるの？　やめてって言ったのはキミでしょ？」
「〜〜〜！！！」
返事に詰まって、
体を丸めて腰を突き出してくる。
続けて、の、合図。
声を出さないように、両手で口を覆い、ぎゅっと目を閉じる。
そこまでやるなら、何故口では言ってくれない？
くつくつと、肩を震わせ嘲う。
そんな状態でも、まだ理性を壊せない彼を。
そして、
そんな状態でも、まだ何かを期待し続ける自分を。
「い･･････！！！」
こじ開けたそこへ、絞り口を突っ込む。
金属製の鋭い先端にどこか裂けたか、鮮血が越前の脚を伝う。
それを埋めるように、更に袋を絞っていく。
「ふ･･････あう･･････」
クリームが収まりきらずに溢れ出す頃、越前の上げる声も悲鳴から変わっていった。
絞り袋をテーブルに置き、代わりにフルーツの入ったボールを手元に引き寄せる。
その中から、ラズベリーを１粒取り出して軽く口をつける。
「姉さんがラズベリーパイ作ったときの余りなんだけどね、
よかったね。ラズベリーで。
これなら小さいからいっぱい入るよ」
明るく言い放って、
「う、そ･･････」
青褪め、驚く越前に、
持っていたラズベリーをクリームの溢れるそこへ押し当てた。
クリームのぬめりを借りて、ずぶずぶと飲み込まれていくラズベリー。
「あ、あ、あ･･･！」
更に２個目を入れようとすると、きゅっと窄まった入り口に潰された。
赤く飛び散った汁が、より妖しさを引き立たせる。
誘われるまま、
舌を伸ばしてそこを舐める。
「っひゃ―――！！」
その異質な感触に、越前が顔を上げて息を飲んだ。
「先、ぱ･･･。何･･････」
振り向く越前。
それを無視して更に舐める。
「舐め･･･て･･････？」
呆気に取られた越前の台詞に、僕自身も苦笑する。
普段なら絶対にこんな事はしないのに。
今はただ、越前の体に顔を埋め、無我夢中でそこを舐め続けている。
「は･･････」
喘ぎなのか、嘲いなのかわからない越前の声を聞き、
顔を離した。
逆に越前を嘲うように、まだ欲しいのか蠢くそこにラズベリーを数個掴んで一気に入れる。
「あ、うあ･･･やあ･･･！！」
ついでに指も指し込み、中でぐちゃぐちゃと掻き回すとすぐに声は喘ぎのみになった。
「先ぱ･･･そんな、掻き回したら･･････あ･･･！！」
元に戻る立場に、安心して。
適当なところで、指を抜いて立ち上がった。
「先･･･輩･･････？」
腕に頭をもたれさせ、肩で息をする越前。
相当に辛いだろうに、支えもなくなったその状況で倒れもせず見上げてくる彼を前に、
僕は冷蔵庫へ向かっていった。
冷凍庫から、それを取り出し、
「ところで今面白いものがあるんだけど」
「･･････？」
疲れてとろんとしつつも、それでもとりあえず聞いてはいるのか目を細めてくる。
「ケーキだけじゃどうかと思って。
クッキー。後は切って焼くだけだから楽だよ。
どう？」
巻かれていた包装ビニールを取り外す。
直径３cm程度の堅い棒。
冷たいそれを持って越前の元へ行き、
屈みこんで先ほどから様々なものを飲み込んでいるところへ突き刺した。
「―――っふああああ！！！」
一気に上半身を起き上がらせ逃げ出そうとした越前を抱え込み、
「ふふ。おいしい？」
四つん這いにして何度も前後させる。
「あっ！　あっ！　あっ！！」
その動きに合わせて一際高く上がる声。
「ああ、そういえば肝心のチョコが抜けてるね」
ふと気付いて、身をよじってヨガる越前を横に転がす。
「ぅあ･･･！！」
その急な動きに、仰向きになった越前が必死で耐えている。
僕はやはり余っていたチョコを引き寄せ、
片手を突いて越前の横に屈み込み、もう邪魔なエプロンを剥ぎ取った。
「や――――――！！！」
ぶちり、と音を立てて引きちぎられた最後の一枚。
今更ながらも露になった躰が恥ずかしいのか、
両腕を前で組んで隠そうとする、
「だめだよ。それじゃ飾り付け出来ないじゃない」
もちろんそんな事はさせない。
両方の手首を片手でまとめ、頭の上に固定し、
体重をかけ、どうあがいても解けないようにする。と、
性懲りもなく今度は膝を曲げて隠そうとする。
「越前。それ、誘ってる？」
くっくっと肩を震わせ笑った。
お尻を上げ、膝を曲げて上を隠すその仕草は同時に、
下を僕に突き出し、見せつけていた。
それに対して遠慮はせずに、そこから突き出たクッキーを掴む。
「その柔軟性には感服するよ。けど、次からはよく考えてから行動することだね」
あられもないその格好。
ぜひ１枚写真に収めたいね。
「やだ･･･！！」
越前が首を振って膝を内側に折って下に下げてくる。
それよりも早く手を離して、
さっき引き寄せておいたボールを掲げ、
ようやく露になった越前の胸に垂らしていった。
まだ軟らかいチョコが、
ぬめりと共に越前の体を這っていく。
「やっぱりバレンタインならチョコじゃなきゃね」
と、ボールを上から下へと少しずつ移動させる。
喉から、
胸。
腹。
そして―――
「やっ･･･！！」
再び脚を上げる越前。それも今度は片方だけ。
膝を交差させて、両方隠したつもりだろうけど･･･、
『悩殺ポーズ』って言葉知ってる？
他のレギュラーの前でやってごらんよ。
間違いなく全員卒倒するから。
「･･･まあ少しは考えたみたいだね。
けど･･･
―――その体勢、いつまでもつかな･･･？」
その言葉に無邪気に首を傾げる越前。
無自覚なのかな･･･？
さすがにちょっと･･･今のは見せられたこっちがたまったものではなかった。
応えるように、ボールを床に置き、
「うあ･･･！！」
チョコの垂れた越前の首筋を舐める。
「ひ･･･ん･･････」
チョコの跡そのままに、胸へ体を下げていき、
チョコのかかった胸の飾りを口に含む。
「ふ･･･は･･･あ･･････」
固まり始めたチョコを溶かすように何度も舌で舐め、かり、と歯を立てると、
「やあ･･･！！」
越前の体がびくり、と弓なりに大きく跳ねた。
その拍子に組んだ足が少し解ける。
ボールの代わりに手に持っていたハケをその隙間へと送り込んだ。
もちろんチョコのたっぷりと絡んだ。
「うあ･･･あ！！」
ハケで嬲られ、
「あ･･･あん･･･あ･･･！！」
結合が更に緩む。
だんだん立てられていく両膝。
頃合を見計らって、
ハケを捨てその間に手を差し入れる。
「ひん･･････！！」
小柄な越前の、やはり全体的に小さなその部分全体を握りこみ、
チョコと粘液のぬめりを活かしてぐちゃぐちゃと揉む。
なんとか押し出そうと膝に力を込める越前の動きに押され、
逆に密着する中でさらに手を動かす。
無造作に捏ねくり回し、
舌では逆の飾りも弄る。
「ふん･･･あ･･････」
呆けていく越前から力が抜け、
徐々に脚が開いていく。
「ほら、ね」
先ほどの言葉を引き継ぎ、薄く笑う。
はっと気付いた越前が急いで脚を閉じようとする。
「残念。もう遅いよ」
一足早く両脚の間に移動し、右膝で起こそうとした越前の左脚を踏み抜いた。
「いい格好」
片脚をぎりぎりまで広げ、
その中心には天を向いたチョコの棒。
更に下から突き出た棒状クッキー。
涙と屈辱にまみれた顔で睨んできても、
より僕をそそらせるだけ。
もう片方の脚を閉じようともがくけど、
間に入った僕が邪魔でなかなか思うように行かない。
暫くジタバタして、ようやく迂回すればいいと気付いたみたいだけど。
もちろん黙って見てはいない。
大きく脚を振り上げたところで、
拘束していた越前の手を放す。
もちろん解放するためじゃない。
その行為に越前が一瞬ひるんだところで、
「ああっ―――！！」
クッキーの棒を思い切り押し込んだ。
更に放した手でチョコまみれの越前自身を握り、
体を下に下げ、それを舌で舐める。
「ふ、あ、あ･･･！」
「惜しかったね。決めたならもう悩まず実行しなきゃ」
２箇所から攻められ、振り上げた脚を床に突っ張って打ち震える越前。
反抗の意志など完全に無くして、
解放された両手で僕の頭を掴む。
「あん･･･あ、は･･･！！」
首を反り返らせて、
「やん･･･ふあ･･･！！！」
開きっぱなしの口から唾液を垂らして、
「あぅ、ん･･････」
快感だけを求めて自ら腰を振る。
そこにはもう、誰もが知るあの生意気なルーキーはどこにもいない。
ここにいるのは、この地獄にはまり理性を壊してただ欲望のまま動く人間１人。
と――――――
「や････････････」
弱々しく洩れた声に、ぴたりと全てを止める。
喘ぎ、ではない。
拒否。
この状況で、
この壊れた人間に。
今更何が出来る？
「先輩･･･やだ････････････」
「何･･･が････････････？」
それとも･･･
そんなにも、彼の想いは強いのだろうか･･･？
聞きたく、ない。
今だけでいい。僕のものでいて欲しい。
そんな想いが通じる訳もなくて、越前はゆっくり体を起こしてきた。
絶望の中で、脚をどけ顔を上げる僕を、
力の入らない腕で抱き締め、言ってきた。
「こんなの･･･やだ･･････。
俺は、不二先輩が･･･欲しい･･･。
ちゃんと･･････抱いてよ････････････」
「越･･･前････････････？」
信じられない思いで呟く。
確かめたくて、越前を見やるが、彼は顔を伏せたままで。
ずっと忘れていた『笑み』を浮かべ、
越前を優しく横たえた。
緩く僕の首に腕を回した越前が、じっと見上げてくる。
赤く染まった彼の頬を優しく撫でると、
「ん･･････」
嬉しそうに目を細める。
もう一方の手で刺さったままのクッキーの棒を引き抜き、
僕のものをそこに当てる。
「本当に、いいんだね･･･？」
「うん･･････」
今度は、ちゃんと声に出して頷いてきた。
嘘じゃないといわんばかりに自由になった両脚を僕の腰に絡めてきて、
引き寄せられる。
「ん―――！！」
「っ―――！！」
先端が入り込んだだけで、
その気持ち良さに即座に達しそうになる。
息を堪えてそれを我慢して、
浅い息を何度もつく越前に触れそうなほど顔を寄せた。
「可愛いよ、本当に」
「じゃあ食べる気になった？」
そう訊いてくる越前はいつも通りの生意気なルーキーで。
にやりと笑う彼の髪を掻き上げ、僕も笑ってみせた。
「うん。すっごく」





そして――――――僕らは初めてキスを交わした。





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2003.2.16</sup>