Chocolate　Kiss
<sup>〜side　R〜



３



「次はいよいよスポンジ作りだね。まずは卵白――卵の白身を泡立てようか。
―――そこに座って」
促されるままに、イスに座る。
どうせまた『何か』やるつもりなんだろうね。
こっそりため息をつく一方で、
期待に･･･躰が疼く。
「そしたら脚開いて」
「は･･･？」
珍しくあからさまに怪しげな発言をする先輩。
ボールとハンドミキサーを渡されて、
「脚で挟んで固定するとやり易いよ。それだったら座ったままで疲れないしね」
「はあ。そーっスか･･････」
「じゃあ･･･ツノが立つまで泡立ててね」
「ツノ？」
「泡立て器を持ち上げてね、ぴんと先が持ち上がるくらいまでって意味だよ」
「ういーっす」
とりあえず言われた通りボールを膝で挟んで、
ハンドミキサーのスイッチを入れた。
とりあえず何段階かあるらしいスイッチの、一番最初にあわせて。
ボールの中に突っ込む。
脚に伝わる振動。
そして項に伝わる先輩の微かな息遣い。
「･･････何スか？」
「泡立てる時はね―――泡立て器も動かした方がいいよ」
そう言い、両手が後ろから伸びてきた。
ハンドミキサーに、そして･･････ボールに。
「っ･･････！」
ボールを引き寄せられ、太腿に、脚の間に当たる冷たさに身を震わせる。
「それに手早く泡立てられるように威力は『強』にしなきゃ」
「うあ･･･！！！」
いきなり強くなった振動が、
敏感なそこを遠慮なく揺さぶってくる。
「や･･･！　先輩･･････！！」
俺の声を無視して『泡立て』続ける先輩。
どけようにも、後ろから覆いかかる先輩の方が体格も、それに体勢的にも有利で、
「やめ･･･不二、先ぱ･･･あ･･････！！」
だんだんその力も入らなくなってくる。
せめて恥ずかしくないように唇を噛んで声を殺そうとするけど、
「ふ･･････う･･･んあっ･･･！」
それすらもつらくなってくる。
両手を先輩の腕に乗せ、
背もたれ越しに先輩の胸に持たれて、
「は･･･あ･･････」
ただ、涙でにじむ目で先輩を見上げた。
先輩にやってもらっているんだと、
その事実だけで更に体が熱くなる。
部活中ですらないほどに鼓動が早く、激しくなって、
意識が朦朧としてきたところで――――――
先輩が笑った。
くすり、と、口元だけで。
「僕は卵白のツノを立てて、って言ったんだけど？」
ハンドミキサーが高速で回転する音が止み、
「こっちを勃[た]てて、どうするのかな･･････？」
「――――――////！！」
『こっち』と言いながら先輩が指でなぞった先。
最も与えられた快感を忠実に示すそこは、
エプロン越しでもしっかりわかるほど、形を変えていた。
ギリギリまで張り詰めたそれを、
先輩はエプロンごと無造作に握って、
「『泡立て』は、手早くやらなきゃね」
無造作に扱き上げた。
「や、あ、あ･･････あ！！」
僅か数回であっさりイった俺から、先輩はそれ以上にあっさりと手を離した。
ただ、義務的に事を成し遂げただけ。
そこには何の感情も篭ってなくて。
矛盾したその行為が俺を狂わせる。
脚の間に手をつき、荒い息をついてると、先輩がボールとハンドミキサーを取り上げた。
全然汚れていない手で、それらを持ち上げて、
「越前君、少し疲れてるみたいだね。
次の作業やっておくから、その間休んでるといいよ」
「っ･･････。けど―――」
「ああ、大丈夫。ただ混ぜていくだけだしね。
―――じゃあハンドミキサーのところは僕がやっておくから、普通の泡立て器になったら交換ね」
「ういーっす･･････」





Χ　　Χ　　Χ　　Χ　　Χ





「―――で、最後に粉を混ぜるんだけど、ここからは混ぜるのも特に慎重にね。立てた泡はつぶさないように、泡立て器で生地を救い上げては隙間から落として、その繰り返しで大体粉がなくなるまで」
「？　？　？」
「つまりこうやるんだよ。
―――じゃあ今度はこっちに立ってねv」
「はあ･･･」
数分休んで何とか動けるようになってきたところで、今度はイスの前に立たされる。
「少し前に屈んで」
「はあ･･････」
「そしたらエプロンの裾持ち上げて」
「はあ！！？」
本気で露骨過ぎる先輩の言葉に、思い切り後ろを振り向いて叫んだ。
さっきかけられた水と、べたべたについた俺の精液でエプロンはほとんど意味がなくなっていたけど、それでも一応唯一躰を隠してくれているものだ。
だが、それに答える先輩は何でもない事だと言いたげに首を傾げてきた。
「けどそうしないと汚れちゃうし」
その言葉と共に、後ろからのしかかった先輩が体重をかけて来た、
自然と体が傾き、イスに置いたボールに近づいていく。
前に垂れたエプロンの裾が生地につきそうになり、仕方なく俺は、裾をゆっくりと持ち上げていった。
初めてする、自分からのアクション。
「いい子だね･･･」
恥ずかしくて真っ赤になる俺の耳朶にキスをし、先輩は更に体重をかけてきた。
ずぶり、と。
そんな感じのイメージで、
生地の中にぐちゃぐちゃに濡れた俺のものが入っていく。
「ん･･･気持ち･･･ワル･･････」
ドロドロの生地が絡みつく、その妙な感触に本気で嫌がる俺に、
「だめだよ、ちゃんと見てなきゃ。じゃなきゃどうやるかわからないでしょ？」
そう言われれば見ないわけにはいかなくて。
無理矢理開いた目の先で、
「まず掬い上げてね―――」
「ひあ･･････！！」
先輩がそれを再び立てるみたいに、泡立て器を回しながら逆撫でていって、
「―――そして落とすんだ」
「んや･･････」
完全に泡立て器が離れ、支えがなくなって再び生地の中に落ちていくところに、上から生地をかけてきた。
「これを何度か繰り返して、粉をある程度なくす」
そう言って本当に何度も繰り返す。
「あん･･･や･･････は･･････」
せっかく冷めかけて熱がまたぶりかえし、荒い息で言葉を吐き出す。
「先･･･ぱい･･････。やぁ･･････」
そぶり[ｿﾄ]では嫌がって。
気持ち[ﾅｶ]では悦んで。
続けてほしい。
もっと。
もっと。
なのに、先輩は俺の『望み』をそのまま選んだ。
「混ぜるのはこのくらいでいいかな？」
泡立て器から生地を落とし、外に出す。
「え･･････？」
「後はこの生地を型に流して焼くだけ。意外と簡単でしょ？」
「そう･･･っスね･･････」
『続けて』なんて、口に出して言えるわけもなくて。
ただ物欲しそうに先輩を見上げていると、
「で、型に流すときは生地を無駄にしないようにこのゴムベラを使ってね･･･」
先輩はそう言ってゴムベラを取り、
「ボールからちゃんと生地を取り除くんだ」
生地のついた俺自身にゴムベラを当ててきた。
ただ、ついた生地を落としてるだけ。
ただの―――『作業その１』
「うん･･････ふ･･･あ･･････」
それでも俺にとっては快感で。
「淫乱」
そんな囁き声は先輩のかそれとも俺のか。
今更否定の仕様もないけど。





Χ　　Χ　　Χ　　Χ　　Χ





「さて、とりあえずこれで一段落、だね」
床にへたり込む俺に、先輩は明るく笑ってそう言った。
一段落。
ついたのはスポンジの方だけ。
中途半端に煽られた俺は一段落どころじゃなくて。
何とかして欲しくて見上げる俺を、先輩は不思議そうに見下ろしてきた。
「どうしたの？　なんか『物足りない』って顔だね」
全てを見透かすその言葉に、自然と顔が赤くなるのがわかる。
何か言おうと口を開くより早く―――
「今生地を焼いて膨らませているんだけどね。
―――『こっち』も、膨らませてみる？」
目の前で先輩はズボンのファスナーを下げ、その中から自分のものを取り出した。
今まで俺だけが散々遊ばれていた部分。
それなのにそこはもう緩く立ち上がっていて、
それを見て、無性に嬉しくなる。
―――先輩は、俺に感じていた。
テーブルに軽く腰をかけ、
招くように両手を広げてくる。
「『生地』が膨らまなきゃ、
『ケーキ』は作れないよ？」
トドメの一言。
意味は考えなくても解る。
その言葉をイイワケに、
俺は先輩の下へと四つん這いで寄っていった。
「あ･･････」
両手で支え、
「ん･･････」
軽く舐めて、
「ふあ･･････」
大きく開けた口に入れる。
とりあえずそうしてみると、
「ん･･･っ･･････」
上から先輩の押し殺した声が降って来た。
気持ち良さそうなその声に、
「はふ･･････」
もっと気持ち良くなってもらいたくて更に動いた。
どうやったらいいのかなんて知ってるわけはないけど、今までの事を思い出して気持ちよかったことを真似する。
甘噛みして、舌でなぞって、口を窄めて前後させて。
さすがにそろそろ苦しくなって、一度口を離そうとしてけど、
「んん･･･！！？」
いきなり髪の毛を引っ張られ、より奥へと押し込まれた。
「ん･･･ぐ･･････！！」
喉に詰まっるそれ。
息苦しくて暴れる。と、更に髪の毛を強く引っ張られた。
「ぐぐ･･･う･･････！！！」
喉が詰まって、苦しくて、涙がぼろぼろと流れてきた、
歯を噛み締めそうになって、何とか堪える。
先輩のを、傷つける訳にはいかなくて。
代わりに爪が食い込むほど手を握り締めたところで、
チーーーン･･････
オーブンが音を立てて停止した。
「―――はい、終わり」
それを合図に先輩の手が離れた。
苦しさにげほげほと咳込んでいると、
先輩はまだ解放されていないそれを再びズボンにしまった。
「焼けたみたいだね。焼け具合、見てみよっか」
「あ･･････」
ズボンの裾を掴んで引き止める。
「何？」
「あの･･･先輩･･････
･･････何でもないっス」
平然とした先輩の様子に何も言えず、俯き、掴んでいた手を放す。
辛く、ないの？
それともそれは俺だけ？
俺はオーブンへ向かう先輩をただ見送るしかなかった。





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2003.2.14〜16</sup>