Chocolate Kiss
side R







焼き終わったスポンジ。
泡立て終わったチョコクリーム。
洗い終わったフルーツ。
そして・・・・・・笑みを浮かべながらもその目に欲望を湛える先輩。
残るは仕上げだけで。
その間にこの『遊び』は何かが変わるのだろうか?
「じゃあスポンジの切った面にハケでシロップを塗ろうね」
はい、と差し出されたハケ。
まだ使っていない、柔らかな毛先が、
指に軽く当たる。
僅かな感触。他の部分なら気付かない程度の。
「ん・・・・・・」
そのむず痒さに、思わず漏れた声を頷いて誤魔化す。
それをどう受け取ったのか、先輩はそのままハケを差し出し手を放した。
そんな先輩を不満げに見上げる。
けど、あっさり逸らされ先輩はシロップの入った器を手に取った。
それが、答え?
それとも、はっきり口に出して言ったら、応えてくれる?
「・・・・・・・・・・・・」
数秒考えて・・・小さくため息を洩らして、俺は無言で器を受け取った。
まだ口に出しては求められない。





Χ  Χ  Χ  Χ  Χ





「やあ・・・! 先輩・・・・・・!!!」
完成まで後少し。
教わったようにホイップクリームとフルーツで上を飾りつけていると、
後ろからいきなり抱き込まれた。
せっかく割と上手く出来ていた飾りが絞り袋に当たって潰れる。
「何・・・するんスか・・・!!」
あとちょっとなのに。
もうちょっとで完成するのに、
なのにそれを嘲うかのように邪魔してくる。
耳朶を軽くかじられ、耳の後ろから項にかけて舐められ。
エプロンの間に手を入れられ、胸の突起を摘まれ、捏ねられ、引っかかれて。
横腹を撫られ、脚を擦られ―――そして体の中心に手を伸ばされる。
「ん、あ・・・やん・・・・・・!!」
今まで半端に煽っては交わしていたのに一気に高められ、
「は・・・、んあ・・・・・・!!」
それでも完成させようと唾を飲み唇を噛み、クリームをケーキに落としていく。
完成させないと・・・・・・先輩には何もいえないような、そんな恐怖に駆られて。
「ねえ、さっき越前さ、ハケ当てられてすごくいい顔してたよね」
「え・・・・・・?」
口調が、変わった。
間違いなく、怒ってる。
―――なんで?
「こんな事、して欲しかったの?」
「――――――!!!」
シロップで濡れたハケが、めくったエプロンの下をくすぐる。
「ふあ。あ・・・あっ・・・」
もう飾り付けどころじゃない。
体中が限界を訴えて痙攣する。
腰を抱いたまま先輩が横に回りこんできて、エプロン越しに完全に立ち上がった胸のものを舐める。
「ひや・・・あん・・・・・・!」
気持ちよくて、たまらなくて。
もう自分が何をやっているのか解らなくて。
俺は絞り袋を落として先輩の頭に両腕を回した。
そんな俺を先輩は一瞬だけ抱き締めてくれて―――
あっさり突き飛ばされた。
「うわ・・・!」
いきなりの事に声を上げて、
力が入らずぺたりと後ろに尻餅をつく。
足を開き膝を立て、
エプロンの紐は肩からずり落ち。
まるで出来の悪いストリップ。
それを見下ろし先輩は、
くすりと笑って、
手にしたハケに余っていたチョコをたっぷりつけた。
「『チョコケーキ作り』の一番のポイントを教えてあげるよ。
如何に相手に『食べたい』って思わさせるか。
そう。こんな風に・・・・・・」
ズボンを下げて、再びその中のものを取り出す。
先程のまま、俺の唾液で光って膨らんだもの。
ためらいなくそこにハケでチョコを塗りつける。
それを見せ付け、
「―――食べたくなったでしょ?」
俺は唾を飲みこくり、と頷いた。
食べたい。
味わい尽くしたい。
膝立ちになって、先輩のチョコのかかったそれにしゃぶりつく。
甘くて、
おいしい。
チョコも―――先輩のも。
夢中になって食べていると、先輩に腰を掴まれ高く持ち上げられた。
「んん――――――!!」
それだけで、あっさり達する。
そして・・・・・・その弾みで強く噛んだものからも、勢いよく精液が溢れ出した。
「うあ・・・!」
喉に直接流れ込んできた液体にむせ返る。
飲みたかったのに。先輩のなら、全部。
四つん這いで口を開けたまま見上げる。と、
なんでか絞り袋を持った先輩が、笑ってた。
目を開いて、今まで見た事ない冷たさで。
「じゃあキミも飾ってみようか。
可愛かったら食べる気になるかもね」
その言葉に、どきりとする。
『食べる』
先輩が、
俺を。
先輩の手が背骨を下へとなぞっていって、
双丘の間に指が入れられた。
「ひ・・・あ・・・・・・」
まだならされていないそこをを探り当て、絞り袋を押し付けてくる。
「まずはクリームをつけなきゃね」
ぶちゅぶちゅと、
絞る音と共にそこが無理矢理こじ開けられる。
「痛・・・!!」
「痛い? 『気持ちいい』の間違いじゃないの?」
「や・・・痛い!! 先輩、やめて・・・!!」
疾る激痛に首を振って叫ぶ。
無視して進めると思ったのに、先輩は本当に両手をどけた。
「はい。やめたよ」
「え・・・?」
「何驚いてるの? やめてって言ったのはキミでしょ?」
「〜〜〜!!!」
返事に詰まって、
体を丸めて腰を突き出す。
続けて、の、合図。
声を出さないように、両手で口を覆い、ぎゅっと目を閉じる。
口ではまだ言えないから、だから体で表した。
暗くなった視界。耳に先輩のくつくつという笑い声だけが微かに響く。
今の俺は先輩から見たらよっぽどおかしいだろう。
この生意気なルーキーが、この上なく恥ずかしい格好で人に媚びている。
でも・・・ここで終わりにさせられるのはもっとイヤだから。
「い・・・・・・!!!」
こじ開けられた穴に、絞り口が突っ込まれる。
びしり、と鋭い痛みが襲う。どこか切れたかもしれない。
そして、更に中に入っていくクリーム。
「ふ・・・・・・あう・・・・・・」
収まりきらずに溢れたクリームが脚を伝う頃には、その痛みもなくなっていた。
絞り袋の圧迫感がなくなって、横目で見やると先輩はフルーツの入ったボールを持っていた。
その中から、ラズベリーを1粒取り出して口をつける。
「姉さんがラズベリーパイ作ったときの余りなんだけどね、
よかったね。ラズベリーで。
これなら小さいからいっぱい入るよ」
「う、そ・・・・・・」
これからされる事を予想して、青褪める俺に、
明るく言い放った先輩は、
持っていたラズベリーをぐちょぐちょのそこへ押し当てた。
クリームのぬめりを借りて、ずぶずぶと入り込んでくるラズベリー。
「あ、あ、あ・・・!」
更に入れられようとする快感に、口が窄まる。
潰れ、飛び散る汁が感触で伝わった。
気持ち悪さと気持ち良さ。
相反するそれに、更に違うものが加わった。
「っひゃ―――!!」
ぬめり気を帯びた柔らかいものに撫で付けられる。
「先、ぱ・・・。何・・・・・・」
振り向いたその先には、俺の後ろで膝を突いて頭を俺にくっつけている先輩がいた。
ぺろり、とまた襲うその感触。
「舐め・・・て・・・・・・?」
不二先輩は、絶対にそういう事はやらない人だと思っていた。
決して、穢れるイメージを持たない人が、
ケモノのように、俺を求める。
「は・・・・・・」
喘ぎの中で、笑みが零れた。
嬉しくって・・・・・・なのに先輩はそれを聞いて顔を離した。
くす、と笑って、まだ欲しくて蠢くそこに、ラズベリーを数個掴んで一気に入れてくる。
「あ、うあ・・・やあ・・・!!」
指まで指し入れられ、中でぐちゃぐちゃと掻き回され、洩れた笑みも消えて喘ぐ。
「先ぱ・・・そんな、掻き回したら・・・・・・あ・・・!!」
ラズベリーの残骸と、先輩の細い指が着実に俺を攻め立てる。
2度もイったのにまた立ち上がり始めた頃、いきなり指が抜かれた。
「先・・・輩・・・・・・?」
腕に頭をもたれさせ、肩で息をする。
半端な状態で放られ、辛い。どうにかして欲しいと見上げる俺を他所に、
先輩は冷蔵庫へ向かっていった。
冷凍庫から、それを取り出し、
「ところで今面白いものがあるんだけど」
「・・・・・・?」
いきなり振られた関係のない話題に、どうでも言いと思いつつも目を細めてくる。
「ケーキだけじゃどうかと思って。
クッキー。後は切って焼くだけだから楽だよ。
どう?」
そう言って、見せ付けられた『それ』。
直径3
cm程度の堅い棒。
冷気を撒き散らすそれを持って戻ってきた先輩に、
先ほどから弄られ続けていた所へ突き刺された。
「―――っふああああ!!!」
今までとは比べものにならない圧迫感に、一気に上半身を起き上がらせたところを抱え込まれ、
「ふふ。おいしい?」
無理矢理床に手足を押し付けられ、突っ込まれたものを何度も前後させられる。
「あっ! あっ! あっ!!」
痛くて、苦しくて、でも気持ちよくて。
「ああ、そういえば肝心のチョコが抜けてるね」
身をよじって叫んでいたら、先輩に横に転がされた。
「ぅあ・・・!!」
動いた衝撃で更に動くラズベリーとクッキー。
仰向けでそれに堪えていると、
片手をついて横から覗き込んできた先輩に、エプロンを剥ぎ取られた。
「や――――――!!!」
ぶちり、と音を立てて引きちぎられた最後の一枚。
今更ながらも露になった躰が恥ずかしくて、
両腕を前で組んで隠そうとしたら、
「だめだよ。それじゃ飾り付け出来ないじゃない」
あっさり阻まれた。
片手でまとめられ、頭の上に固定される。
体重もかけられ、どうあがいても解けそうにない。
今度は膝を曲げて隠そうとすると、
「越前。それ、誘ってる?」
くっくっと肩を震わせ先輩が笑う。
何? と、
聞くまでもなく、
下に手を伸ばしてきた先輩に、クッキーを掴まれた。
「その柔軟性には感服するよ。けど、次からはよく考えてから行動することだね」
お尻を上げ、膝を曲げて上を隠し・・・・・・
―――下を見せつけていた。
「やだ・・・!!」
とっさに膝を内側に折って下に下げる。
それよりも早く手を離した先輩は、
その手で横からボールを掲げ、
隠すものの何もない俺の胸にそれを傾け、垂らした。
まだ軟らかいチョコが、
つーっと俺の体を伝う。
「やっぱりバレンタインならチョコじゃなきゃね」
と、ボールを上から下へと少しずつ移動させる。
喉から、
胸。
腹。
そして―――
「やっ・・・!!」
その下に行かないように下げていた脚を片方だけ上げる。
膝を交差させて、両方守る。
これで大丈夫だと思って先輩を見る。
狙い通り、先輩は目を見開いて絶句していた。
・・・・・・なんでか顔を赤くして。
「・・・まあ少しは考えたみたいだね。
けど・・・
―――その体勢、いつまでもつかな・・・?」
謎の言葉に状況も忘れて首を傾げた。
別に辛い体勢なワケじゃない。
ずっと、はさすがに無理だろうけど、暫くなら楽勝でもつ・・・・・・
筈だった。
「うあ・・・!!」
チョコの垂れた首筋を舐められる。
「ひ・・・ん・・・・・・」
チョコの跡そのままに、先輩の体が胸へ下がっていって、
チョコのかかった胸の突起を口に含まれる。
「ふ・・・は・・・あ・・・・・・」
先輩は固まり始めたチョコを溶かすように何度も舌で舐め、かり、と歯を立ててきた。
「やあ・・・!!」
痺れが体中を駆け巡って、びくり、と弓なりに大きく跳ねる。
その拍子に組んだ足が少し解ける。
その隙間に、いつの間にか先輩が持っていたハケが割り込んできた。
それにはチョコがたっぷり絡んでて。
「うあ・・・あ!!」
ハケで嬲られ、
「あ・・・あん・・・あ・・・!!」
結合が更に緩む。
自然と両膝を立てて、なんとかその快感を逃そうとする。
それがどれだけ続いたのか、
いきなりハケを捨て先輩が股の間に手を差し入れてきた。
「ひん・・・・・・!!」
肉付きはあまりないが決して小さいわけではないその手に握りこまれ、
その冷たさに、
膝に力を入れてなんとか押し出そうとしても、
逆に自分に押し付けられて、余計にその形を、冷たさを味合わされる。
無造作に捏ねくり回され、
舌では逆の突起も弄られて。
「ふん・・・あ・・・・・・」
力が抜け、
脚が開いていく。
「ほら、ね」
短く呟き笑う先輩に、
急いで脚を閉じようとする。が、
「残念。もう遅いよ」
既に両脚の間に移動していた先輩の膝に、起こそうとした左脚を踏み抜かれた。
「いい格好」
片脚をぎりぎりまで広げ、
その中心には天を向いたチョコの棒。
更に下から突き出た棒状クッキー。
恥ずかしくて睨んでも、
先輩には効果なくて。
もう片方の脚を閉じようともがくけど、
間に入った僕が邪魔でなかなか思うように行かない。
暫くジタバタして、ようやく先輩の体を迂回すればいいんだと気付いた。
多分、先輩もそれには気付いてる。
なのに余裕はそのままで。
大きく脚を振り上げたところで、拘束されていた手が放される。
何でそんな事をするのか。
わけがわからず一瞬ひるんだところで、
「ああっ―――!!」
クッキーの棒を思い切り押し込まれた。
更に放した手でチョコまみれの俺自身が握り込まれ、
体を下にずり下げた先輩に、舌で舐められる。
「ふ、あ、あ・・・!」
「惜しかったね。決めたならもう悩まず実行しなきゃ」
2箇所から攻められ、振り上げた脚を床に突っ張って打ち震える。
もう、何も出来ずに
解放された両手で先輩の頭を掴む。
「あん・・・あ、は・・・!!」
もう・・・どうでもいい。
「やん・・・ふあ・・・!!!」
このまま、先輩のしたい通りに、させるのもいいと思う。
「あぅ、ん・・・・・・」
そうすれば、少なくとも今、躰だけは繋がれる。
ケーキを完成させて、告白して、結ばれる保証はどこにもない。
なら今―――嫌がる理由はどこにある?
と――――――
「や・・・・・・・・・・・・」
『それ』を見つけ、弱々しく声が洩れた。
テーブルの上の、完成間近のケーキ。
作って、渡して、「好きだ」って言おうとして。
なのに今、
俺はただ、
先輩に躰を預けているだけ?
「先輩・・・やだ・・・・・・・・・・・・」
「何・・・が・・・・・・・・・・・・?」
声を聞き取って、先輩の動きが止まる。
驚きを隠さずに俺を見る先輩。
そんなに拒否するのが信じられない?
アンタの中で、俺はただの操り人形なの?
ゆっくり体を起こす。
それに従って、顔を上げてくる先輩を力の入らない腕で抱き締め、
言う。
「こんなの・・・やだ・・・・・・。
俺は、不二先輩が・・・欲しい・・・。
ちゃんと・・・・・・抱いてよ・・・・・・・・・・・・」
「越・・・前・・・・・・・・・・・・?」
感情の篭らない声で呟く先輩。
俺は・・・今言った言葉の恥ずかしさに顔を伏せたままだったけど。
それでもわかる。先輩を取り囲む空気が変わった。
今までとは打って変わって優しく横たえられる。
逆らわずに、緩く先輩の首に腕を回して、じっと見上げる。
それに気付いた先輩は、優しく俺の頬を撫でてくれて、
「ん・・・・・・」
嬉しくて目を細めた。
もう一方の手で刺さったままのクッキーの棒を引き抜かれ、
ずっと欲しかったものがそこに当てられる。
「本当に、いいんだね・・・?」
「うん・・・・・・」
今度は、ちゃんと声に出して頷く。
早く欲しくて、自由になった両脚を先輩の腰に絡め、
そのまま先輩を引き寄せる。
「ん―――!!」
「っ―――!!」
先端が入り込んだだけで、
その気持ち良さに即座に達しそうになる。
歯をくいしばってそれを我慢すると、
浅い息を何度もついて、先輩が触れそうなほど顔を寄せてきた。
「可愛いよ、本当に」
「じゃあ食べる気になった?」
いつも通り生意気に訊く。
にやりと笑う俺の髪を掻き上げ、先輩も俺の好きな笑みで答えてくれた。
「うん。すっごく」





そして――――――俺たちは初めてキスをした。





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Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ  Χ

2003.2.16