6.部活中2 ―――対ジロー起きver
「あっとべ〜vvv」
「うおっ!?」
などと跡部に後ろから抱き付いてくるのは、氷帝部員の中でもただ1人。いつも寝っぱなしの芥川ジロー・・・・・・
「・・・・・・なんでお前起きてやがる?」
心底不思議極まりない奇怪現象。ジローといえば部活中でも8割は寝ているのが毎度のパターン。起きる時といえば強い相手と試合できるときかもしくは・・・・・・もしくは〜・・・・・・・・・・・・
とりあえず現在はそれに当てはまらないような気がする。引っぺがして尋ねようとして、
「跡部、試合しよーぜ!!」
謎はあっさり解けたため質問を取り下げる。ちなみに本日、レギュラーの練習内容は相手制限なしの練習試合。早い話が今のジローの台詞そのままだ。
他の者はもう試合を始めている。跡部は他の部員にも一通り練習内容を伝えていたため出だしが遅れたのだ。
見回し、
「いいぜ」
「うっそマッジ〜!? やーりぃっ!」
「・・・・・・」
自分で誘っておいて「嘘マジ!?」もなにもないような気もするが、そういう大袈裟ともいえるほどの喜びぶりを露にするジローは見ていて面白いものがある。
「サンキュー跡部!!」
今度は前からぎゅっと抱きついてくるジロー。ぎゅ〜〜っとしがみつき、頬をすり寄せてくる。可愛い仕草に、跡部の頬もゆるむ。
「ほらジロー。試合すんだろ?」
などと言いつつも跡部もジローを抱き寄せ頭を叩く。ぽふぽふと、そんな擬音と共に撒き散らされる甘ったる〜い雰囲気。見ていた者たちの何人かがその可愛らしさに鼻頭を押さえた。
「跡部大好き〜vv」
「言ったって何も出ねえぞ」
襟元に顔を埋め笑うジローに仕方ねえなあと微笑む跡部。微笑ましくて、微笑ましすぎて誰もが目を背けるバカップルは、
「もーええからさっさと試合やりい」
最初に忍耐の切れた忍足がラケットでどつき倒すまでいちゃつき続けたのだった。
● ● ● ● ●
さてそんなこんなで試合は終わり(もちろん跡部の勝利で)。
2人は今、なぜかコートからは離れた木陰にいる。
「なんでだ・・・・・・?」
「え〜跡部今更なんだよ〜! 約束だろ!?」
「クッソ〜・・・! なんでよりによってそういう時に限って・・・・・・!!」
わかるようなわからないような微妙に掠った台詞ばかり。補足で説明を加えておくと、試合そのものは跡部が勝った。それも圧倒的なリードを奪って。がしかし、5−0になった時調子に乗って「次の俺のゲーム、ブレイク出来たら何でも言う事聞いてやる」などと言ってしまったのが悪かった。もちろんジローの力を侮っていたわけではない。が、まるで今まで力を温存していたというかのように突如動きを上げてきたジローに本気でブレイクされてしまった。次のゲームでブレイクし返したためカウント6−1で跡部の勝利。ただし試合に勝って勝負に負けた跡部は、ジローの望む通り部活を抜け出し段落頭に戻る。
「ま〜いいじゃん。サッボリ〜♪ って感じ? ワクワクしねー?」
「てめぇのサボリはいつもの事だろーが」
「でも跡部は珍しいっしょ?」
ずばりと訊かれ、
「・・・・・・・・・・・・まあな」
目線を逸らし、跡部は答えた。別に日々真面目に生きていることが恥ずかしいわけじゃない。ただ・・・・・・
―――ジローのような、そんな生活に憧れていたのもまた事実。
「と、ゆーわけだから!」
気まずい雰囲気を一発でぶち壊し、ジローはぽてりと跡部の膝(厳密には腿)に頭を置いた。
「膝枕〜♪」
「・・・・・・はあ?」
いきなりそんな事をやり出すジローに素っ頓狂な声を上げる跡部。だがジローは特に気にせず。
「お休み〜」
「っておい!」
zzz・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ったく」
恐ろしいまでの寝入りのよさを見せるジローに、跡部はくしゃりと髪を掻き上げため息をついた。
自分の髪から手を離し、ジローの髪を撫でつける。寝グセばかりだがさらさらの髪は指に引っかかる事もなく。
「ん〜・・・・・・」
気持ち良さそうに猫撫で声を上げてくる。もぞ、と頭が動いて・・・・・・。
「ん・・・・・・」
跡部もまた、小さく声を上げた。それこそジローと同種の猫撫で声。もう少し端的かつロコツに言えば感じた声。
今まで気付いていなかったが、適当に座った摩擦でハーフパンツの裾が擦り上がっていた。剥き出しの腿をジローの柔らかい髪が撫でる。
「ジロー・・・。おいジロー・・・」
片目をつむってゆるやかな興奮をやり過ごし、跡部はジローの肩を揺すった。起こしてどかせる―――つもりだった。
「ん〜・・・・・・」
再び上がるジローの緩慢な声。半端に刺激したらしい。呻いて、寝返りを打った。跡部に近付く方向に。
「ん・・・・・・」
再び上げる、こちらは跡部の声。ジローの頭が体の中心に触れる。さらに、この位置では落ち着かなかったのか跡部の腰を抱き体を引き上げて。
「おい、ジロー・・・・・・」
唇が触れる。本当に、ごく僅かな感触。
「あ・・・・・・」
と―――
ぺろり。
「―――っ!?」
明らかに意図を持って舐められ、跡部が目を見開いて硬直した。
拳を震わせ、唸る。
「ジロー・・・。てめぇ、寝てねえだろ・・・・・・」
「あ、バレちった?」
答えはあっさり返ってきた。ひょこ、と顔を起こしたジローが楽しそうに笑う。
「だってせっかくの跡部の膝枕だし〜、寝たら勿体ねえじゃん」
「んで、俺で遊んだってか・・・・・・?」
「跡部ってば反応しまくりでたっのC〜♪」
瞳を閉じブルブル震える拳を肩まで上げる。それを振り下ろすより早く、
「んあっ・・・・・・」
今度は直接舐められ、よりはっきりする感触にたまらず声の方が上がった。再び顔を下ろしていたジローがハーフパンツからそれを取り出し、手と舌で刺激を与えていく。
「あ、ジロー・・・。そういう事、すんな・・・・・・」
「なんで? 跡部気持ち良さそうじゃん」
「そーいう、問題じゃね―――うっ」
言葉半ばでぱくりと咥えられ、後半が途切れる。
温かい口内。粘り気ある舌の独特の触感。
裏に力を篭め、反射的に脚を引く。おかげで僅かながら腰まで上がった。チャンスとばかりに、一気に下着ごとハーフパンツを脱がされる。
「ジロー!」
「そーいう顔で怒っても、説得力ないよ跡部」
「〜〜〜〜〜〜////!!!」
より顔を赤らめ、無言で跡部がポロシャツの裾を掴んで防御に入った。逆に隙の出来た他の部分。身を起こし片手で抱き寄せまたも襟元に顔を埋めて鎖骨を舐め、逆の手で太腿をついっ、と撫で上げる。
「う・・・ん・・・・・・」
背けられた顔。瞳が気持ち良さそうに細まる。力の弱まる手をやんわりとどけ、ジローは隠されていたところに手を当て軽く握り込んだ。
「う、あ・・・・・・」
ジローを閉じ込めるように脚に力が篭り、目的を無くした手がさらに逃さないよう抱き込む。
顔を上げ、耳を舐めると洩らされていた吐息が吸気に変わった。
「はっ・・・・・・!」
目を閉じびくりと跳ね上がる顔。
「ジロー・・・・・・」
薄目を開ける跡部。潤んだ目尻に軽く唇を落とし、ジローは跡部の唇に顔を近づけていった。
「跡部・・・・・・」
近づけて・・・・・・
「―――お前らま〜たやっとるんかい」
「お〜忍足」
「何だよまたてめぇかよ」
同時に近付いて来た忍足に、ジローは顔と手をぱっと離しごく普通の様子で、跡部は最早慣れたため特に正しもせず応える。
忍足はどちらの態度も気にすることはなく、
「ジロー、岳人が呼んどったで。次相手したいそうや」
「え? 向日が? んじゃ行こーっと。月面宙返り面白れえし」
今までのは何だったのか、本当にごく普通の様子で去っていくジロー。見送り、跡部は心底疲れた様子で尋ねた。
「で?」
「何がや?」
「本気でわかんねーワケじゃあねえんだろ? 何しに来やがった?」
「まあ、何やなあ・・・・・・。
―――お前の色っぽい姿見に、やな」
にやにや笑って見下ろす。ハーフパンツを膝まで下げ、ボタンを外されたポロシャツが肩から落ちている。疲れた気だるい顔と合わせると完璧襲われた後、か。
「見に、ねえ・・・・・・」
睨め上げる跡部が口の端を上げた。
「変態野郎が」
「うわいったい一言やなー。
せやけど・・・・・・、お前のためやったらなってもええなあ」
呟き、忍足が腰を落とした。跡部の横にしゃがみ、先ほどジローが触れていたものにさらに触れる。
「てめっ・・・! 誰の許し得て俺様に触ってやがる!」
「何や。ジローは許したんに?」
「アイツはいいんだよ」
「・・・・・・どないいう基準やそら」
「とにかく。てめぇはダメだって何度も念押しといただろ」
「俺はダメ、なあ・・・・・・。せやったら反撃したらええやん。いつまでもだらだらくっちゃべって触らせとらんで。それとも実はやって欲しいんか? せやったら俺も遠慮なく―――」
「言われねえでもさっさとやるつもりだったよ!!」
忍足の言葉を遮り、跡部が首へと手を伸ばす。体勢の都合上押し倒せはしないが絞められるだけの握力はあるし、頚動脈でも押さえてしまえば即座に気絶させられる。
が、
迫り来る手を前に、忍足は一切避けようとはしなかった。代わりに―――
「あっ!!」
「宍戸の攻撃もポイントは掴んどったんやけどなあ。惜しいわ。こないに使わんと」
触られていた部分を性急に揉み解され、跡部の手が首に届く寸前で強張った。
「あっ、あっ、んあっ・・・!」
上げる声自体は対宍戸のものと変わらず。ただし浮かべる表情は違う。悔しそうにこちらを睨み付け、しかしさすがの帝王も快感には抗えないか開かれた口からは飲み込めない涎が垂れる。
肩に置かれた両手。引き剥がそうとしてだが力が入らず、結果まるでこちらを求めるかのように縋ってくる。
「ああっ・・・!!」
その手もまた、ずり落ちて・・・・・・
「んなっ!?」
忍足が口と目を大きく開く。ずり落ちた手はこちらのポロシャツを捲くりハーフパンツの中へと入っていた。
慄いて跡部を見やる。帝王はいつも通りにやりと笑い、
「宍戸のヤツにも言っといたが、油断してんじゃねえよ、忍足」
「お前・・・! 今の全部わざとかいな!?」
「言っただろ? てめぇ如きにゃ俺様はハメさせられねえって。
ンなモンも見破れねえのか? 『クセ者』の名が泣くぜ?」
「くっ・・・! まだや! まだ負けへんで!!」
「ハッ! てめぇ程度、わざわざ俺様の美技に酔わせるまでもねえな」
そして、ほんの僅か後。
「うあっ・・・!!」
「ほらな。言ったじゃねえか」
「く〜!! これだけ追い詰めたんにテクで負けたんかいな俺は・・・!!」
「甘い甘い。俺様に勝とうなんざ軽く見積もって100万年は早ええ」
「軽く見積もって、って・・・。実際のトコ何年なんや・・・・・・」
「一生無理だよバーカ」
「はっきり言うなや・・・。プライド傷つくやん・・・・・・」
がっくり項垂れる忍足を置いて、跡部が立ち上がった。
服の乱れを整える。毎度の事ながら、先ほどまで何かやっていた痕跡は全くない。
去る一瞬前に、忍足の前で上半身だけを屈ませ掠る程度のキスをする。
「俺様に飼い慣らされてえんなら、いつでも来な」
かっこ良くそう言い、今度こそ跡部は去っていった。
堂々とした、決して揺らぐ事のない背中を見送り、忍足が呟く。
「ホンマ、小悪魔ちゃんやなあ、跡部・・・・・・」
―――おかしい。初期の計画ではじゃれあう中でヤヴァさ全開だったのに。なぜジロ跡は中途半端に真面目な話が多くなるんだ・・・。おかげで何度も方向修正した結果、妙に歪んで見えますこの話。は〜。こんっどこそ! まあジロー三度はさすがにムリでしょうが、違う話で今度こそじゃれ合う2人というかじゃれ合う間に知らない内に犯されている跡部を・・・・・・!!
そして忍跡・・・・・・だったもの。最初っからよく出てます。忍跡が好きだから―――ではありません。リベンジのために出させては失敗しているだけ(爆)です。う〜みゅ。最初はひたすら忍足さんにしてやられてる風味な跡部が嫌だったのでそっちのリベンジだったのですが、よくよく考えずともひたすら忍足さん出ては一人で空回ってますね。わ〜いリベンジ大成功〜?
2004.5.10