Lucky day? or Unlucky day?






 「よーし、男子はグラウンドを
25周走れ。で、女子はテニス」
 『え〜〜〜〜〜!!?』
 体育教師の台詞に悲鳴を上げたのはもちろん男子。女子は1時間遊べると喜んでいる。そんな中―――
 「―――質問なんスけど」
 「お? 珍しいな越前」
 体育座りのまま手を上げたリョーマに、若き教師は驚きの声を上げた。
 「終わったら好きな事やってていいんスか?」
 「好きな事? まあ走り終わったら自由にしていいが・・・寝たいのか?」
 ・・・リョーマが授業の8割を寝ているのは、なぜか体育教師の間でも有名になっているらしい。
 「違うっスよ」
 「・・・? まあ別に構わんが――」
 5キロ走るのだからその後出来ることなどたかが知れているだろう、と了承する男性教師。
 「他に質問はないか? なら始めるぞ!」
 彼の一声で、生徒はバラバラと散っていった。







―――――――――――――――








 一般的な中学と同様、ここ青学でも体育は2クラス合同、そして男女は別々に行われる。のだが・・・・・・
 「な〜んで今日に限って先生休みなんだよ〜!」
 言われた通りグラウンドを走りながらも、堀尾が不満に口を尖らせた。つまりは教師が1人しか居ないため、監視しやすいようにマラソンとなったわけだ。
 「別にいいじゃん。終わったら自由なんだし」
 隣を走っていたリョーマが淡々と応える。普段部活であれだけ走らされている(いろんな意味で)彼ならば今更この程度苦ではないのかもしれないが。
 「別にいいじゃん、ってなあ・・・。
  ―――あ、おい越前、待てよ〜!!」
 (ウルサイ・・・・・・)
 なおもボヤく堀尾を無視してリョーマはピッチを上げた。
 「結局お前何やるつもりなんだよ〜!!!」
 あっさり置いて行かれた堀尾の、最後まで謎に包まれたままの疑問がグラウンドに響き渡った。







―――――――――――――――








 さてそんな1年1組と2組が合同で体育を行っている間、ここにも先生不在で暇なクラスがあった。
 「にゃ〜。不二〜、ひま〜〜〜」
 「・・・って僕に言われてもねえ」
 開始
20分で早くも飽きたらしく、椅子に逆向きに座った英二が不二の机に突っ伏してきた。そのままだらだらとする彼に、頬杖を突いた不二が苦笑する。
 本日英語教師が急病で早退したため、3年6組は自習となっていた。その上突然の事であり、監督も見つからなかったため見張りは誰もいない。
 こんな生徒にとって都合のいい事態なら遊ぼうと言い出す者がいてもおかしくはないのだが、悲しいかな今は受験シーズン真っ只中。幾ら青学がエスカレーター式で上がれようが一応それなりの試験はある。だからこそ一時たりとも無駄には出来ないのだが・・・
 やはり例外はある。
 「だって〜、ひまなんだもん」
 「じゃあ『アルプス一万尺』でもやろうか?」
 「うにゃ〜・・・」
 そう言い合い微妙に音の外れた歌とペチペチと気のない様子で手遊びをやりだす英二・不二両名に、殺気の篭った視線が飛び来る。
 ―――かと思いきや・・・。
 「かわい〜、2人ともv」
 「や〜ん、ずっと見てたい〜vv」
 「『猫と少年』って感じだな〜」
 なぜか周りにはほのぼのとした空気が漂っていた。それもその筈、青学アイドル部と裏で呼ばれる男子テニス部の中でも可愛さではトップクラスの2人。同じクラスになれた喜びだけで、クラス発表の掲示板の前で卒倒する者、鼻血を噴出す者は相次いだのだから。
 「―――あ!」
 「どうしたの、英二?」
 「おチビはっけーん!!」
 そう言い冬のこの寒い中ガラリと窓を全開にし、身を乗り出した英二が大きく手を振った。
 「お〜い! おチビ〜!!」
 「・・・・・・?」
 さすがにこれだけ騒がれれば気付いたらしく、学校指定のジャージに身を包みこちらへ―――校舎の方へ1人歩いていたリョーマが上を見上げた。
 窓際の席である事を感謝し、不二も英二同様窓を開け、愛しい恋人の名前を呼んだ。
 「越前君!」







―――――――――――――――








 5キロを
20分程度で走り終え、整理運動もそこそこにリョーマは校舎へと向かった。なにせ30分も空き時間ができたのだ。人がテニスをやっているのを指をくわえて見ているのは性に合わない。
 ラケットなどを取りに行こうとしたリョーマだったが、上から降ってきた声に校舎2階を見上げた。声に聞き覚えがあるのはもちろんだが、自分の事をこんな呼び方をするのは1人しかいない。
 見上げると、予想通り窓から身を乗り出して手を振る英二と―――そしてその隣に同じく窓を開けこちらを見下ろす不二の姿があった。
 「不二先輩! ・・・と英二先輩」
 「にゃ〜! にゃんで俺はオマケっぽいんだよ〜!」
 「どうしたの? 今授業中でしょ?」
 「今体育で、中距離走終わったんで自由時間なんスよ」
 ちなみにそう言い首だけで指し示されたグラウンドでは、未だに走り終わっていないリョーマ以外の男子生徒が辛そうな顔で走っていたりする。汗こそかいているものの涼しい顔をしたリョーマと彼らが同じ運動をした(どころか先に終えたリョーマの方が運動としては辛いはずだが)とは信じがたいが、リョーマの体力に関しては部活で一緒だったため不二も英二もよく知っていた。
 気にせず続ける。
 「中距離走? ってどの位?」
 聞き慣れない単語に英二が首を傾げた。
 「5キロっスよ」
 「5キロって中距離だったっけ?」
 普通に聞けば十分長距離だと思うのだが・・・?
 「陸上の世界ではそうだよ。長距離はフルマラソンの
42.195キロ。で、女子の5キロ、男子の10キロは中距離。
  ほら、スポーツテストの
1.5キロを持久走って言う人がいるでしょ? あれは1.5キロ程度じゃとても長距離だとは言えない、っていうことでだよ」
 「あ〜、にゃるほど」
 疑問が解けて英二は大きく頷いた。5キロという距離そのものは一切気にせずに。部活でこの程度は当り前だ。今はどうか知らないが、少なくとも手塚が部長を務めていた5ヶ月前までは。
 「で? 越前君は何するの?」
 「テニス」
 気持ちいいほどに即答してくれたリョーマに不二は苦笑した。ここからテニスコートは見えるのだが、確かに女子たちだけが楽しそうにテニスをやっている環境では彼の体が疼いても仕方ないだろう。
 根っからのテニス好きの彼の思考に可愛らしさを感じると共に、少々そこまで思われているテニスに嫉妬してみたりして、不二は笑顔のまま意地の悪い事を言ってみる。
 「けどコート全部埋まってるみたいだけど?」
 女子は2クラス合計して
38人。5面あるテニスコートが全て使われているのは当然だろう。
 「別にいいっスよ。壁打ちするし」
 むしろ1人の時にコートが空いていてもどうしようもない。堀尾を誘ってもいいが、あの調子では疲れて相手になろうとはしないだろう。
 (それにつまらないし・・・)
 かなりの暴言だが、3年の引退した現在青学のエースと称されているのは伊達ではなく、同じ青学テニス部内でもリョーマと互角に渡り合えるのは2年の桃城と海堂だけだった。
 が、そんな事を考えていたリョーマに向けられた一言は、予想外の―――そして願ってもないものだった。
 「じゃあ僕が相手になろうか?」
 「いいんスか?」
 「うん。丁度僕たちも自習だったし」
 「あ〜! 俺も俺も!」
 「英二は駄目だよ。課題、まだ終わってないでしょ?」
 「う・・・・・・。
  ―――って不二もやってなかったじゃん!」
 「やだなあ、僕がやってないわけないでしょ? とっくに予習で終わらせてたよ」
 突然の自習に教師も他に思いつかなかったらしく、教科書に書いてある長文の読解が課題となっていた。確かにこれからやる範囲である以上『予習』してあってもおかしくはないのだが・・・。
 「けどこれってメチャメチャ先じゃん。不二そんな先までやってたの?」
 「ああ、ここは物語状になってたし、ちょっと読んでみて面白そうだったから」
 (・・・・・・)
 さすが学校―――どころか全国的に見ても秀才な不二だけある。誰もが嫌がる英語の、それも長文読解などという厄介極まりない物を、ただ「面白そうだから」の一言で片づけるとは。
 黙り込んだ英二からは目を逸らし、不二は見た者全てを虜にしてしまいそうなほどの優しい笑顔で首を傾げた。
 「というわけで、いい?」
 「いいっスよ」
 「ああ、ラケット取りに行くの? だったらついでに取って来ようか?」
 「・・・・・・」
 不二の一見親切な発言に、しかしながら珍しくリョーマは返事にためらった。
 確かに今外にいる自分よりも、2階にいる不二の方が4階の1年の教室に行くには近い。しかし幾ら普通以上に近しい身とはいえ先輩を使っていいのか、そんな懸念が残る。
 ―――もちろんこんな事を考えているリョーマの頭の中には、現在テニス部部長にしてリョーマのパシリと名高いどこぞの先輩の事は入っていなかった。あくまで問題なのは「不二を使うこと」についてだ。
 自己中万歳。
 「じゃあさ、ラケットは僕が取ってくるから、越前君は代わりに部室に行って僕と英二の分のシューズ取って来てくれないかな?」
 「ういーっス」
 それなら問題ないだろうと軽く返事をして部室へと歩き出すリョーマ。心なしかその歩調が早い。
 「え? て、不二・・・?」
 リョーマがいなければ外を見る意味もなし、と窓を閉める不二の隣で英二が首を傾げた。課題は教科書1ページ分の和訳。普通にやれば1時間で何とか終わる量だが、ただでさえ英語は苦手な上に今まで
20分間何もしていなかった英二に、終わる見込みは極めて薄い。
 上目遣いで両耳を垂らす―――もとい心配そうな顔をする英二の前に、不二は広げてもいなかった自分のノートを差し出した。
 「丸写しするとバレるから適当にね」
 「にゃ〜v 不二ありがと〜vvv」
 にっこり笑う不二と、笑顔で抱きつく英二。
 この日3年6組では寒いにも関わらず熱中症で保健室に担ぎこまれる人が多かったらしい。







―――――――――――――――








 「え、越前・・・。それに不二先輩!?」
 ようやく走り終えた堀尾は、目の前を談笑しながら横切る2人に唖然とした。(仮)入部早々レギュラー入りとなったリョーマはともかく、今だレギュラーのレの字も遠い堀尾にとって、いや現在のレギュラー達にとってすら元(今もレギュラーの人もいるが)レギュラー達は雲の上のお方々だった。中学テニストップに立った彼らの実力を考えれば当然だろう。
 疲れて座り込んだ体を起こし、急いで挨拶しようとするがそれよりも先に別の声が響き渡った。
 「終わったにゃ〜!!」
 校舎から聞こえてきた声。そしてざわめく教室から身を乗り出したのは同じく元レギュラーの英二。よくよく見れば、リョーマ不二もそちらを見上げている。
 「今から行くよ〜ん!」
 『え、英二! よせ!』
 『いくらお前でも死ぬぞ!?』
 中から聞こえるそんな声を無視して、窓の桟に足をかけた英二があっさりとそこから飛び降りた。
 『きゃああああああああ!!』
 「えええええええええ!?」
 教室から上がる悲鳴。堀尾も思わず叫んでいた。英二の身軽さは知っている。知ってはいるが―ー―
 (いくら菊丸先輩でも2階から飛び降りたら無事な訳ないだろ!?)
 が、そんな周りの心配を他所に、身を躍らせた英二はバランスを崩す事無く運動場の土に無事着地。しゃがみこんで衝撃を全て逃すと近くで自分を待っていた(であろう)不二とリョーマにVサインを送った。
 「おまたへ! 不二、おチビ!」
 「遅いっスよ、英二先輩」
 「英二にしては早かったと思うよ」
 騒いだ周りとは逆にあまりにも普通の反応しか見せない2人に、何か腑に落ちない物を憶えつつも口は出さずにいておく。ついでに3人の手にしている物でこれから何をやるのかはわかった。
 「はい、英二先輩」
 「あ、おチビ、サンキュー」
 そう言いテニスシューズを受け取った英二が上履きから履き返るのを見つつ、あああの先輩達とこれから打ち合うのかちょっと羨ましいよなあ・・・などと某不動峰中2年のような思考で堀尾は楽しげな3人を見送った。
 いつかは自分もあんな人たちの中に入りたい、そんな願いを天に乗せる堀尾聡史
13歳の冬だった。
 ―――ちなみに余談だが、青学テニス部元レギュラー達のようになるためにはテニスの実力の他にもう1つ、思考とそれに伴う行動パターンも人とは一線を隔していなければならない・・・・・・などという事を堀尾が知る訳は、当然なかった。







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 3人がテニスコートに着くと、なぜか今まで埋まっていたはずの、男子テニス部が利用する分3面が開いていた。女子はフェンスで隔てられた2コートに納まっている。
 狭そうな場所にぎゅうぎゅうに(少なくともテニスをする上では問答無用で狭い)詰まっている女子を横目で見ながら、禁断の(笑)3面コートへとためらいなく入るリョーマ。
 「なんであんな事してるんスかね?」
 「う〜ん、何となくこっちって『男子』ってイメージが強いからじゃないかな? まあ男子テニス部のせいだけど」
 「そーっスか?」
 「いいじゃんいいじゃん。おかげでコートも空いたし!」
 そう言って早速ボールを打とうと―――はせずに体を動かす英二。さすがに元テニス部、準備運動もせずいきなりテニスをするような真似はしない。
 「そうだね」
 英二に合わせてやはり準備運動を始める不二。特にここ最近は今までのように毎日テニスをしている訳ではない以上、念入りに行う必要がある。
 が、既に十分体を温めていたリョーマは暇だった。
 (少し慣らしておこうかな・・・)
 とラケットを握り、ふと気付く。
 (―――ボールがない)
 ラケットやシューズは各自専用の物があるが、さすがに消耗品であるボールは学校のものを使用している。
 周りを見回しても、今まで使っていたはずなのにボールが1つも落ちていない。もう少しよくよく見てみればボールどころか塵1つ落ちていないのがわかるが、特に興味がないのでリョーマの視線はすぐにコートから離れた。
 1周ぐるりと見回し、
 (あるじゃん)
 口の端に微かに笑みを浮かべ、女子のいる2面コートのほうに近寄った。ついでと言って不二の持ってきてくれた愛用の帽子の下から瞳を覗かせ、フェンス越しに言う。
 「ねえ、ボール1個貸して」
 その横柄な態度は物を頼むにしてはあまりにも何かを間違っているような気はするが、全くそれを気にしない1組の小坂田朋香が喜んで出てきた。
 「きゃ〜v リョーマ様試合するの? 頑張ってvv」
 と言いながらリョーマの手にボールを1個2個3個と乗せていく。リョーマ様のためならボールなんていくらでも(備品だけど)、と言いたいのだろうが生憎リョーマにはその想いは通じなかった。
 「サンキュ」
 と最初に渡されたボールだけを受け取って後は朋香に返すと、踵を返した。その後ろで「リョーマ様頑張ってーvv」と今だ朋香が応援していたりする事も、その声に触発されて他の女子が「不二先輩、頑張ってください!」だの「菊丸先輩、ファイト!」だのあげくに誰が勝つかで揉めに揉めてたりする事も―――もちろん彼は気付いていなかった。







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 「―――おい、不二、菊丸! お前たち授業はどうした?」
 3人がそれぞれ準備運動をしている最中、やはり隣のフェンスにいた体育教師が声を掛けてきた。今年度入って来たばかりのこの教師に2人がお世話になったことはないのだが、それでもしっかり名前と顔を知られている辺りさすが有名人といったところか。
 手を止め、いつも通りの笑顔で不二が答える。
 「ああ、担当教員の突然の早退により3年6組は自習になりました。課題は終わらせていますので」
 「あ、そ、そうか・・・・・・。
  まあ不二がそういうのなら問題は無いだろう・・・」
 不二お得意の柔和な態度に、思わず納得する教師。もちろん課題が終わったからといって授業中である以上勝手に遊んではいけない。ましてや他の授業の邪魔など問題外だ。
 「というわけで、先生の了解も得られたことだし・・・・・・」
 やはり笑顔のまま2人を見やる不二。その一片の曇りも無い笑顔を見た英二とリョーマの考える事は同じだった。
  ((策士だ・・・・・・))
 不二の今の言葉により、もし2人が授業を抜け出して遊んだ事が問題となったとしても、その責任の一旦はそれを認めたこの教師にあることになる。となれば当然より責められるのは教師の方だろう。
 たった数言であっさり味方―――別名捨て駒―――を付けた不二に、2人は心底感心し、そして・・・
 不二は敵には回してはいけない相手だ、という認識をより強く頭に植え付けた。







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 「―――で、どうしようか?」
 全員の準備が一通り終わった頃、笑顔で2人に尋ねる不二に、返す2人もまた疑問形だった。
 「何が?」
 「そーそー」
 「だから、半端に3人になったけどどうやって組もうか?」
 言外に、どころか思い切り言内に「キミが邪魔してくれたおかげで2人っきりになり損ねたんだけど・・・?」と言われていることを確信し、英二はこの誘いに(自ら進んで)乗った事を心底後悔した。
 (やっぱ止めよっかにゃ・・・?)
 それはそれで完全に不二にからかわれた事になるが、今ここに残って怒りを買うよりはよほどマシだ。
 が、英二がそれを実行に移す前に―――
 「シングルスで1人が審判。それかセルフジャッジで1人対2人でいいんじゃないっスか?」
 「じゃ、そうしよっか」
 今まで漂っていたオーラを霧散させあっさり頷く不二。彼は彼で既にリョーマの僕となっているような気もするが、それは言わない方が身のためであろう。まあ言ったところで「僕は『リョーマ君馬鹿』だからv」と惚気られるのがオチだろうが。
 「けどおチビ珍しいね。ダブルスもうやりたくないって言ってたじゃん」
 「あれは桃先輩とっスよ。2人ならダブルス慣れてるんでしょ?」
 一見正当な理由だがそういうリョーマの頬が微かに赤い。
 (はああああああん・・・・・・)
 にや〜っと笑う英二に顔をより赤く染めたリョーマの肘が炸裂する―――かと思いきや。
 「ならシングルスで一通り試合して、負けた2人が組むっていうのでどう?」
 2人の騒ぎに気付いているのか否か、いや間違いなく気付いているのであろうが気にせず不二がそう提案した。
 (むう〜・・・・・・)
 つまりリョーマと不二がダブルスを組むためには自分がこの2人に勝たなければならない。が、認めたくはないがこの3人の中では最も負ける可能性の高いのは―――などと乾のように回りくどくいわなくとも弱いのは自分である。こう提案した以上もしかしたら不二ならわざと負けるかもしれないが、リョーマにそれは望めない。卑怯な事全般を許せないリョーマの性格にプラスして久し振りの対戦だ。本気で来るだろう。
 (けど、それでもし俺と不二がダブルス組んじゃったら? うわ〜。おチビ怒りそ〜・・・)
 何とかじゃんけんとかその辺りに変えてもらえないかと言おうとした英二の前で、
 「いいっスよ、それで」
 「じゃあ決定だね。
  ―――英二も文句ないよね?」
 「・・・・・・。ハイ・・・」
 「じゃあ対戦順番は―――面倒だし総当り戦になるからじゃんけんででも決めよっか」
 「うす」
 (ダメじゃん・・・!)
 心の中でそう叫びつつも不二に逆らえる訳もなし、英二は泣く泣くその案に賛成した。
 3者3様それぞれの思いを抱え、今、元青学レギュラー(ただし一部)によるテニス大会が開かれようとしていた!



―――続く!






さあ、あなたの見たい対戦は!?

1.リョーマvs英二        2.英二vs不二        3.不二vsリョーマ










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 てなわけでテニス大会(ちっちゃい大会だ・・・)です。メインは当然の如くこの後。なのになぜ前座たるここがこんなに長いのか、それはもう突っ込まないで下さい。いやあ、書きたい事を適当にツラツラと書いていたらこうなってしまいました。相変わらず短くまとめるのは苦手です。しかもかなり矛盾した事態が多いですし。
 それと、ここから先はサブタイトル通り本っ気でいろんな意味で間違いだらけですので、純粋にテニスを愛する方は見ない事をお薦めします。いえ私は確かにテニス経験ほぼゼロですが、それ以前の問題としてスポーツマンシップに反しまくってます。そりゃもう観月以上に(力説)! なので何があろうと笑って許せる方のみどうぞ。
 あ、この背景、もしかしたらわかるかもしれませんがイメージとしてはテニスコートで(かなりおかしいですが)。
 では、これだけ書きつつも次もまた読んでいただけたらありがたいです。

2002.8.18